表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
234/810

第231話 あぁ、温泉でのんびり浸かって、美味しい物が食べたいです

「そう言えば、教会の件で皆から上がっている話が有ります」


 現場責任者から意見が出てくる。どうも、将来の町の中心に置こうと思っていたが、今だとかなり南にずれる。信仰心の厚い住民としてはちょっと納得し辛いらしい。


「まだ、基礎工事の途中です。今なら十分工期で取り戻せます。どうせなら」


 要は領主館の外壁の入り口近くにどんと置けば、教会に行くついでに領主館を眺めて領主の求心力が上がるんじゃないかと言う提案だ。ふむ。言われてみれば。元々教会自体が災害時の駆け込み場所にもなるのが多い。

 懐の設計図を見直したが、領主館の星形外壁の周りは公園と堀だ。空間は空いている。


「この辺りが候補地になりますが、民の動線は如何(いかが)ですか?」


「はい。これならば憩いの場所として想定されている公園とも合います。そちらの方が望ましいと考えます」


 おぉ。流石現場責任者。きちんと意味まで理解して町を作っているな。


「今からでも、工事指示の修正は出来ますか?」


「少々お待ち下さい」


 そう言うと、人を呼び何かの指示を出す。その間、食事を楽しんでいたが、暫くすると10人程の団体が現れる。


「各方面の責任者です。こちらが修正図面です」


 現在の教会の場所に×が引かれ、先程話をしていた場所での構築に変わっている。仕事早いな。


「関係者間で齟齬が発生したりはしませんか?」


「貴族様の案件では、工期の最中の変更は良くある事です。この面子(めんつ)が把握すれば大丈夫です。それに今回は我々側からのお願いでも有ります。是非ご検討をお願い致します」


 ふむ。工事に問題が無いなら良いか。結婚式や裁判を領主館の近くでやってくれれば楽は楽だ。


「分かりました。承認します」


 そう言って、改正案の図面の署名欄に署名をする。


「ありがとうございます」


 皆が頭を深々と下げてまた現場に散っていく。神様も慕われているなと嬉しく思った。ただ、北の端なので、南側の住人は参拝するのが大変だ。将来は幾つか別に教会を建てて、そこに行ってもらうようにしよう。 


 軽く食休みを済ませて、そのまま温泉宿まで向かう。現場責任者が先触れで、歓楽街側の現場責任者に話を通してくれたようだ。向かえば入り口で落ち合えるらしい。

 馬車に乗り込み、予定地まで向かう。腹ごなしに歩いても良かったが、ちょっと遠い。最終的に蒸気機関まで開発出来れば、終着点なのだが。


 そんな事を考えていると、外壁予定のラインを乗り越える。正直、温泉街はちょっとした城塞都市並みに堅牢に設計した。中の空間はゆとりを持っているので拡張は容易だし、顧客に安心してもらう為、防衛には腐心した。

 こちらの中央通りを抜けて温泉宿に到着する。基礎工事は完了し、徐々に上に上に工事が進んでいる。


 入り口と思われる開口部を抜けると、人が待っていた。歓楽街の現場責任者らしい。挨拶を交わす。

 正面に入ると広々としたロビーと受付用のカウンターが見える。奥側はラウンジにして、蛇腹の扉で解放が可能になっている。中庭を眺めながらお茶を楽しむのも可能だ。庭の設計は渡しているが、まだそこまで手は出していないようだ。まぁ、庭は後回しでもどうとでもなるか。

 もう少しガラスの精度が上がれば、総ガラスの引き戸に変えるが、今はまだ無理だろう。『リザティア』でガラスの製法を伝授して、量産する方が早そうだ。


「現状は一階の工事が終わろうとしています。宴会場と入浴設備、遊戯室、それに厨房と従業員の居室等ですね。この規模の建物の一階をそのようにお使いになるのは中々無いので柱の配置には苦心しました」


 現場責任者が苦笑いで伝えてくる。まずはメインの大宴会場だ。開口部から中を覗くと、大規模な舞踏会が開催出来る程の空間が出来ている。建物内は一部が入り口や従業員の用意や待機スペースになっており、外側に大きくせり出して天井を上げている。


「いや、通常であれば建物の中に埋めますが、態々(わざわざ)天井高の為に、外側に出すとは。設計図を見た時は唖然としました。お陰様で重量の問題が無いので、柱を最低限に出来ました」


 実は、外側は馬車の駐車スペースの端になっている。何も無い場所に駐車スペースを作るのもあれなので、区切りと考えたが、思ったより効果的だ。天井が高いので解放感も有る。厨房からの動線もきちんと通っているので問題無い。

 小規模な宴会場、会食室、応接室や会議室になる部屋を覗いていくが、目新しいものは無い。内装もまだなので、本当に空間が有るだけだ。

 少し隠れて、従業員の居室も有る。300人以上が収容される宿泊設備だ。泊まり込みの人間も結構な数になる。相当数は用意した。最悪ここを客室として出す事も出来る。

 厨房は驚く程広々としていた。大きな宴会の際には兎に角空間が食いつぶされる。現代のホテルの厨房があの規模で収まっているのは各種のシステムが整備されているからだ。(かまど)の数なんて数えるのも面倒臭い。

 隅には井戸もきちんと掘られている。手押しポンプを置くつもりか、導管が横に置かれている。水を汲みに行く必要も無いのか。


「ここも7m程掘れば水が湧きました。水質も十分です。理想的な立地です」


 そのまま逆側の建物に向かう。こちらは倉庫等が並ぶ。ここまで大規模な建物だと色々収納も重要だ。食材もそうだし、寝具や保守部材も有る。そこは大きめに取った。


「こちらが遊戯?室ですか?」


 遊戯自体がそこまで浸透していないので、態々そのような物を用意する理由が分からないのだろう。開口部から覗くと、舞踏会場と同じく広々とした空間が広がっている。コの字の両翼に大規模スペースを設けた。当初は簡易な壁を作ってこじんまりとやって、規模に合わせて拡大するつもりだ。天井も高く解放感が有る。これならば伸び伸びと遊んでもらえるだろう。


「えと、ここで、トランプとかするの?」


 リズが唖然とした顔で聞いてくる。


「そうだよ。広い場所でゆったりと楽しむのも悪くないかなって」


 いまいち浮かんでいないようだ。私もベガスのカジノを見ていないと浮かばない。


 カジノの横にはバーや休憩室が設けられている。大成功も大失敗もこちらに誘導される仕組みだ。遊んだ後にゆっくりとバーで楽しみを語らうのも乙な物だ。


「では、最後に浴場ですね」


 そう言って奥まで進む。大きな観音開きが2つ有る。まぁ、男女だろう。


「左右対称になるように設計されておりましたので、中はほぼ同じです。どうぞ」


 そう言うと、観音扉を開けてくれる。下足場所で靴を脱ぎ、一段上がる。折れ曲がり、脱衣所が有る。また奥には一段高い広い寛ぎ用のスペースも設置されている。その手前に開口部が見える。


「ここからが浴場です。どうぞ」


 扉を開けると、日本の旅館の温泉そのままの石造りの空間が広がっていた。流石にシャワーは無いが、高めの場所に水道を作り、そこから桶で汲んで使う形だ。

 湯船も広々としている。開口が有ったので入ってみると乾式サウナだ。石造りの空間に炭を置くスペースが出来ている。空気穴もきちんと開いている。

 外にも小さな井戸が有り、小さな湯船が横に設営されている。水風呂だ。

 石造りの一部に開口が有るので外に出るとここにも広々とした岩風呂の露天風呂が広がる。現在目張りが無いので兎に角広い。


「最終的には男女を囲いますし、周囲を木壁で覆います。この景色は今だけですね」


 屋根は引き出しにしているので、雨天でも浸かる事は出来る。台風並みの時は無理だが、そんな時は露天風呂に入るなと言いたい。


 いや。十分だ。流石に300人が一度に入れるかと聞かれればちょっと難しいが、男女で200人程度なら分ければ余裕だ。これ、清掃が死ぬ程きついだろうな。人増やそう。


「これが全て、風呂で御座るか?」


 リナが呆然と呟く。


「広いお風呂も気持ち良いよ。のんびりできるしね」


「はぁぁ。ここまで風呂に力を入れる貴族は貴方だけよ。実物を見るまでは想像もつかなかったわ……」


 呆れたように溜息を吐きながらティアナが言う。


「人の虚を突くから、エンターテインメントなんだよ。楽しくて心地よく無ければ、再度来たいなんて思わないからね」


 そう答えて、周囲を確認する。正直、土地は幾らでも有る。別館で風呂だけの設備を作っても良い。将来は無限に広がっている。まずは予行演習と言う事で、この規模から始めよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ