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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第226話 綺麗事で済まない世界でも、少しでも救いの有る状況にしたいです

 皆は恒例の遊びに夢中になっている。リバーシも増えて、もう、人員の取り合いだ。トランプは4人はいないと面白くない。チェスにリバーシ、バックギャモンと所狭しと遊んでいる。

 まぁ、ここ最近根を詰めて、熊を狩っていたので、こう言う時間は必要だろう。リズも、毛布おばけのままバックギャモンで遊んでいる。


 ティアナはカビアに説明を聞きながら、資料の把握をしている。カビアも政務官僚6年選手だ。事も無げに質問に答えていっている。


 私は、タロを抱えて、各資料の把握だ。傾向が分かってきたが、ロスティーとノーウェに関する案件は現実的だし、今年度予算の範疇で一旦の結果を出す所まで押さえている。そこから規模を拡大するのに新規予算を加えるかどうかだ。分かりやすい。


 問題は、王家と言うか、その他の(おおやけ)に関する事業計画が杜撰(ずさん)すぎる。単年度での見通しは無く、際限無く注ぎ込んで微々たる結果を出すような話ばかりだ。夢と言うか、妄想と言うか、現実味が無い。これ、真面目に通ると思って出してきているのか?

 王都の人員余りの解消の為、新男爵領の領地を無期限無利子無担保で提供し、家もこちらで建てて、人員の流入を促進せよ。とか居丈高に書いているけど、んなもん、誰が判子つくか。うちの領地はゴミ捨て場では無い。しかも、事業計画を略式紋章で出してくるのって何なの?馬鹿なの?


「カビア、この略式紋章、開明派の人?」


「どれですか?あぁ、これ王家関係の派閥です。何かありましたか?」


「いや。阿呆な事を居丈高に書いているんだけど、無視して良い?と言うか、この時点で絶縁状書きたいんだけど」


 この世界、貴族同士での社交は有る。その中で絶縁と言うプロセスが有るが、結構重たい。絶縁状は派閥のトップ経由で相手の派閥トップに渡される。この時点で両派閥には知れ渡るし、そこから他の派閥も知る事となる。


「あぁ、この方は……。王家への贈答攻勢で商家から男爵になった方ですね。今は子爵です。王家御用達の店舗を何軒か所有しています。ただ、実績が伴わないので、開明派としては無視されていますね。波風を立てるくらいなら、無視で大丈夫です」


 小物には小物が群がるか……。うわぁ、この世界でもその構図は当て嵌まるのか。嫌な世界だ。

 と言う訳で、決裁欄に拒否と記載しておく。


 取り敢えず、この山の崩し方が分かってきた。開明派の分はめくら判でも比較的問題無い。それ以外を重点的にチェックすれば良い。割合は8:2程度だ。さくさく読んでいく。


 商会の誘致も問題無く進んでいる。フェンが大分頑張っている。と言うか、確かに言ったけど、王都随一の娼館をそのまま引っこ抜いて来るとは思わなかった。しかも他の店の有名嬢もごっそり引き抜いてる。何をどう説明したんだ?

 店の方も超健全優良だ。神術士在中で毎晩の終わりには検査、回復の流れがしっかり出来ているし、ヤクザな客は軍か高位冒険者から引き抜いた用心棒が処理するらしい。給与の支払いも明瞭だ。あぁ、ここなら取引したい。

 他の商会もその道のトップ揃いだ。おいおい、王都の商売ががたがたになるぞ、これ……。フェン手加減してあげて。もう王都のライフは0よ……。


 土建関係も堅い所を揃えている。少々高くても実績と信頼の有る商会を選んでいる。薄黒い商会は徹底排除しているな。ブラックリストの内容見たけど、設計偽装なんて真っ青になるような黒い案件がごろごろしている。礼拝中に天井が落下とか、事故じゃ無くて事件じゃん。


 そんな感じなので8割は後に回す事にした。問題が無いので純粋に利益の計算を出来る。問題は2割だ。これが手強い。詐欺の手口に9割の嘘に1割の真実を混ぜると言うのが有るが、まさにあれだ。美辞麗句が並んでいるが、どれも詐欺まがいだ。

 4,5冊めくって、同じような印象だったので、もうこのまま全部読まずに拒否でも良いかなと思い始めた。


 その中で学校関係が含まれていた。魔術学校と軍学校だ。あぁ、派閥が別だしな。内容は非常にシンプルで、ある程度の敷地が貰えれば、建物と講師、授業等は運営するよとの事だ。

 うーん、どっかに影響力を入れておかないと面倒な事になりそうな気もする。


「カビア、学業関係の上層部ってどう言う構成?」


「それは、個々でですか?全体でですか?」


「全体から、個々にどうやってつながっているのかかな?」


「はい。基本的には、国ごとに中央委員会が設立されています。そこの委員規約に則って、各学校の運営はなされます。その責任者が校長となります」


 委員規約を確認しないと、判別付かないな。


「委員規約って、閲覧可能かな?」


「はい。大丈夫です。ただ、今回持っては来ていないです」


「分かった。ありがとう。帰ってからお願いする」


「子爵様の屋敷にも有りましたので、そちらを確認頂けるよう手配致します」


 んー。規約にもよるけど、委員会と校長の間に、理事を挟んでこっちの影響力が及ぶようにしたい。教育は(いしずえ)だ。

 日本の会社でもそうだが、教育は超重要だ。これを怠ると、後でとんでもない痛い目を見る。会社でも何も考えない馬鹿は、新人でもメモの取り方くらい、茶の入れ方くらい知っていると思い込むが、そこからコーポレートカラーが出る。滅茶苦茶重要だ。


 胃の痛いほぼ不毛な2割の処理が終わる。残りの8割はゆっくり読もうとタロの様子を見ようかなと思うと緩やかにスピードが落ちる。


「そろそろ休憩です」


 レイの声が幌内に響く。


 タロがスピードが落ちて、慣性に引っ張られるのが楽しいのかぴょんぴょん跳ねている。本当に酔わない良い子だ。子狼は母に咥えてぶら下げられる事が多いから、余計に耐性が高いのかな?


 そんな事を考えていると、前と同じくちょっとした空き地に回り込み、そこで停車する。

 仲間達は、靴を履き、飛び出して背伸びをする。私はタロをリズに預けて、馬の給水に走る。レイは乾いた布で馬の全身を拭いている。


「気温が低いので、走っている間は良いのですが。汗が冷えると具合が悪くなります。休憩の際は拭いて、ブラッシングです」


 本当に御者って休む暇無いな。前の時もそうだったけど、冬場は余計にやる事有り過ぎる。そう思いながら、樽を馬の前に置いて、温いと感じる水を生む。流石に冷水は内臓に悪い。

 無邪気な様子で樽に顔を突っ込み、水を飲むのを見ていると本当に和む。補充をしながら、一頭一頭を撫でて行く。どうも、私を覚えてくれたらしく、擦り寄ってくる子もいる。あぁ、何このサービスの良さ。可愛い……。

 そんな感じで、水を飲み終え、ブラッシングが始まるのを見守り、仲間の方に向かう。


 皆、簡単にストレッチもどきや、体を動かしている。リズはタロのリードを掴んで柔軟中だ。


「リズ、タロ貰うよ」


「もう、向こうは大丈夫なの?」


「レイに任せられるよ」


 そう言ってリードを受け取りタロも運動をさせる。どうも嗅いだ事の無い物ばかりで、好奇心のパラダイスのようだ。地面に鼻が埋まるんじゃないかと言う程、ブルドーザーの様に嗅ぎながら進む。


『まま、しらない!!』


 好奇心が満たされるのが楽しいのか快の気持ちが伝わってくる。気の済むように、散歩もどきを続ける。初めての遠出だが、タロにとっては散歩の延長なのかな?そう思うと少し笑えてきた。

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