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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第217話 大きな問題も側面から手を出せば解決する事は有ります

 執事に連れられ、応接室に通される。この辺の機微は学びたい。どこが粗相のラインなのか、明確では無いので常に観察してしまう。


 暫くと言う程の間も無く、扉がノックされる。


「お忙しい中、お時間頂き、ありがとうございます。ノーウェ様。本日のご機嫌は如何ですか?」


「元気、元気。いやいや、何時でもって言ったけど、今回は早かったね。と言うか、獲物の件?今、鑑定してもらっているよ」


「そうですか、ではそれを待ちましょう」


 そう言いながら、二人揃って席に着く。お茶を楽しみながら、今後の政務や男爵領に関して、談笑を始める。


 暫くすると、執事がノックの後、静かに部屋に入ってきてノーウェに耳打ちする。

 聞いた瞬間、ノーウェが俯きながら、顔を片手で覆う。


「あー、君。とんでもない物持ってきた?」


「そう思いましたので、早速伺いました」


 執事達が大きなワゴンにダイアウルフの皮を乗せて、運んでくる。


「想定外の大物に、子供か。どう考えても事件だね。はぁぁ。どうしよう、これ」


 流石にノーウェでも手に余るか。


「そのサイズは、世界で一点物です。国王陛下の性格であれば、まず欲しがるでしょう」


「そうだろうね。あの方は、本当にそう言うの好きだから」


「対価は、冒険者ギルドの実権で如何でしょう。それも利権は一部渡し、そのままロスティー様に委譲する流れで話は出来ませんか?」


 ノーウェの目の色が変わる。


「君も、言うねぇ。実権をこっちに渡せって訳か。粛清した実績は王家が、実権は父上がか……。良い絵を描いたね。はぁ、商人っぽいって思っていたけど、きちんと青い血は流れるもんだね」


 感心したようにノーウェが言う。


「子供に関しては、研究所が垂涎でしょう。オークションを通さずに、前のサンプルは2,800万でしたか?」


「そうだね。成長途上の流れが分かる。個体差もこれだけのサンプルが有れば調査も可能だろう。喉から手が出る程には欲しがるだろうね」


「今回の大物の核も明らかに他の物と比べると、大きいです。この辺りを含めると、価値は計り知れません」


「だよねぇ。故に事件だ。研究所に貸しを作るのは大きいんだ。色々新しい技術を優先して流してくれるようになるからね。でもそれぞれの価格ってどの程度を見ているの?」


 ノーウェが若干座った目で聞いてくる。


「子供が単体で4千、石は2千強と言うところでしょうか?」


「んー。悪くない。良い読みだ。もう少し出すとは思うがその線は最低ラインとして見て良いと考えるよ。目も良いねぇ」


 ノーウェが腕を組みながら唸る。


「流石にそこまでの手持ちは持ってきていないかな。うーん、どうしようかな」


「大物をトータルで1千万、小物4匹で2千万、子供は4千万で如何でしょう?」


「パーティー側にも成果を見せないといけないもんね。大物を1千はちょっと安くし過ぎと思うけど。後、子供の4千万を8匹はすぐに引き取れないよ。少し時間がかかっても良いかい?」


「いえ、8匹で4千です。小物と同額で良いです。差分は、今後の領地経営の利権で下されば結構です」


 そう言った瞬間、ノーウェが狂気が滲んだ笑いを浮かべる。


「はは。君、やっぱり凄いね。はぁぁ、また借りだよね。今回のはちょっと大きすぎるよ。下手したら国が傾いていたのを救った英雄だよ?返す方法も見つからないね。かー、子供が優秀って言うのはありがたいけど、中々難しいね」


「そこまで難しく考えなくても結構です。ロスティー様、ノーウェ様が引き立てられれば、私も自動的に引き立てられる。そういう意味では一蓮托生ですので」


 社会なんてそうだ。上司をフォローしてたら、上司が出世する時に、一緒に出世する。ゴマすりじゃ無い。実績を出し続ければ必ず見てくれる。


「親子と言ったのは全く後悔していないけど、良い子を持ったよ。分かった。今回の分7千即金で引き取る。後で執事から受け取って。この恩は必ず返す。君は救国の英雄だ」


 そう言いながら、握手を交わす。


「戻ったら少しはゆっくり出来ると思ったけど、これは無理だね。根回しも多い。はぁぁ、随分頑張ったつもりだけど、まだまだ働かないとだね。利権の分は調整するよ。今回の件は莫大だ。父上と相談しないと調整出来ない規模だね」


 苦笑を浮かべながら、ノーウェがそう言う。


「ご心労お察しします。お手数ですが、今後の事よろしくお願いします」


 執事に声をかけていたノーウェが振り向き、笑顔で言う。


「いや。本当ならかなり無茶をしてでも引っこ抜いていた案件だ。それを穏便に済ませそうなんだからありがたい。国が傾くって言ったのは比喩じゃ無いんだ。本当に傾きそうだから焦っていた。流石にあの方じゃ、世界規模の組織運営は不可能だ。絶対に無茶をする。それが片付くんだよ。心労?そんな物吹っ飛ぶさ」


 そう言うと、執事がテーブルに豪華な大きめの巾着を置く。じゃらりと結構な重い音が響く。


「こんな形でしか今は報いれないのを申し訳無くは思う。それでも本当に助かる。今後も助けてもらえればありがたいよ」


 目礼で礼を言われる。目上の目礼なんて、怖い。普通はしない。そこまで切羽詰まっていたか……。まぁ、あれだけの組織の舵取りを小物に任せるなんて自殺行為だ。そういう意味では分からなくもない。


「お顔を御上げ下さい。貴方の子になると決めた時から、私は親と思い、慕い、出来る限りの事をすると決めております。なので、どうか毅然と前にお進み下さい。その後を追うと致します」


「はぁぁ。委細承知したよ。ここからが正念場だ。父上が王都にいるのは逆にチャンスか。一気に幕を引くよ」


 そう言うと、ノーウェが立ち上がり、使用人達に向かって叫ぶ。


「軍の帰還及び再編を急がせろ。ここからは時間との勝負だ。勝機は来た。一気に畳みかける。大きく動くぞ。皆、準備をせよ」


 ノーウェの叫びに合わせ、使用人達が目礼し、礼儀を失わない程度に駆け始める。


「君に報いるのは少し先になる。ただ、父上の分も含めて、礼は言っておく。ありがとう。助かったよ」


「いえ。どうかご自愛下さい。私も領地に赴き、この目で確かめるつもりです。少しの間は連絡は取れませんが、その間はノーウェ様を信じるよう致します」


「うん、そこは任せて。君達の仲間の家族も含めて、警護は組むよ。安心して行っておいで」


 朗らかに笑いながら、ノーウェが話す。後は雑談の続きだ。でも、先程と違って暗い話では無い。かなり明るい話題になった。


 屋敷を出て、ほっと息を吐く。なんとかこれで大きな問題は片付きそうだ。偶然とはいえ、本当に助かった。と言うか、ノーウェの政治感覚はやっぱり凄い。流石為政者だ。

 そう思いながら、家路を進む。肩の荷は下りたので、少しは気楽に帰れそうだ。

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