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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第216話 ハリハリ鍋を鴨で食べるのも好きです

 1月16日は曇りで若干雨か雪が降りそうな程度には雲が厚い感じだ。中番だったので寝過ごすかと思ったが、タロとの生活で慣れたのか、いつもの時間に目が覚めた。

 まだ、周囲は起きていない。もう一軒に移動して、昨日の夕ご飯の残りを確認する。お願いしたからか、出汁はほとんど残っている。寒さの所為か、脂が固まって表面に層を作っている。

 脂を丁寧に掬い、水を足して、火が点いている(かまど)に移動させる。鴨葱も好きだが、他にも鍋で美味しい具材は有る。昨日、チャットが苦いけど食べられると採取してきてくれた野草。


 細い瑞々しい茎にギザギザの葉。『認識』先生に聞くと名前は違うが、ハリハリ鍋の名脇役、水菜さんだ。冬場の野菜不足を補ってくれる。苦みと言うより、独特の辛みなのだろう。あれは表現の仕方が難しい。

 しかし、この世界にも食べられるクジラはいるのかな?いても狩れないか、あんな巨体。そんなどうでも良い事を考えながら、水菜を綺麗に洗い、一口大に切っていく。寒い時期が旬なので、柔らかい部分も多い。


 後番のフィアがひょこりと顔を出してくる。


「あれ?昨日の残りだよね?また、それを食べるの?」


「野菜を変えて、食べようかなって」


 水菜を振ると、露骨に嫌そうな顔をする。


「それ、冬によく食べるけど、僕は苦いから嫌いかな」


 あぁ、その辺りは共通認識なんだ。


「まぁ、体に良いから食べよう」


 そう答えて、皆を起こして来てもらうよう伝える。

 残りの鴨を切っていき、鍋の準備をする。スープは薄くなったが、鴨肉から出汁が出るので問題無いだろう。


 用意をしていると、皆が起きだして、キッチンのテーブルに集まってくる。話題はダイアウルフの件だ。ただ、現金収入は期待しないで欲しい旨は伝えているので、そこまで熱狂的では無い。

 沸騰し始めた鍋に鴨肉を投入し、色が変わった辺りで水菜を入れる。蓋を閉めて、再度沸騰するのを待つ。柔らかい葉は生でも食べられる。沸騰した時点で問題無いだろう。この辺りだ。


 鍋をまたテーブルに置いて、小鉢によそっていく。


「じゃあ、目的とおまけは無事達成出来ました。でも村に帰るまでは油断や無理をしないように。では、食べましょう」


 そう言って、スープを口に含む。うん。昨日の出汁だが、水菜の香りも合わさり複雑な味わいだ。ちょっとハリハリ鍋を想像すると雑味が多いけど、これはこれで有りかな。

 水菜と鴨を一緒に食べると、強い脂の甘みが水菜の爽やかな辛さと合わさり、何とも言えず、美味しい。夢中でぱくつく。


「あれ?あまり苦く無い。と言うか美味しい。あれ?」


 フィアが疑問の顔で首を傾げる。


「私も、塩茹でで食べる事は有りましたが、苦みを強く感じました。これなら、幾らでも食べられます」


 ロットが主張する。元々、細マッチョなのに、肉より野菜好きだ。水菜を主に狙っている。


「故郷では出される度に嫌な思いをしましたけど、これなら食べられます」


 チャットもにこにこだ。

 他の皆も、水菜に抵抗が有ったのか、始めは消極的だったが、食べるとイメージが変わったのか、勢いが変わる。結局戦争状態になった。

 朝っぱらから、すいとんまで用意しての事態となった。これから動くのに、動けなくなるまで食べるってどうよ?


「このままだと太るわ……。リーダー危険よ、これは」


 ティアナが恨みがましい目で見つめてくる。いや、自制をお願いしたい。


 そんな感じで皆が食休みをしている間に、洗い物を済ませる。曇り空に吹く風はかなり冷たく鋭い。今日の帰りは少し辛そうかな?温かい服装での行動を皆にお願いしよう。

 そう思いながら、洗い終わったものを端切れで拭いていく。小鉢はご進呈かな。テーブルの上に置いておく。


 荷車に鍋などを積み、剥ぎ取った毛皮と、子供を乗せていく。ロープで縛った辺りでリズが出てきた。


「あれ?もう用意終わったの?」


「うん。そんなに量が有る物でも無いからね」


 そう答えると、すっとこちらに寄って来る。


「辛かったよね。でも頑張ったから、自分を褒めてあげて。お願い」


 小さくそう言うと、準備の為に家屋に戻っていく。あぁ、お見通しか。はは、流石は奥様だ。


 ある程度腹がこなれた辺りで、出発する。門には閂をしておく。利用感はレポートにまとめた。これはノーウェに渡して官僚団が冒険者ギルドと調整かな。

 そう思いながら、川までの道筋を行き、そのまま下っていく。ロットが先頭で警戒しながらの移動だ。もし何かが近付いてきた場合は迂回する方針でお願いしている。


 そのまま大きなトラブルも無く、森の出口に到着する。レイは朝は終え、馬達の面倒を見ている最中だった。


「おかえりなさいませ。そのご様子であれば、予想外の収獲もございましたか。素晴らしいです。ささ、寒うございます。馬車にお入り下さい」


 そう言いながら、積載している荷物を荷車から下し、馬車に積み直していく。本当にありがたい人材だ。

 皆で乗り込み、出発を待つ。荷車の積載が終わったのか、御者台に座り、レイが出発を告げる。


 そのままギルド前まで到着し、一旦解散となる。本日はこの後、休みとする。ノーウェとのやり取りが出来ても、出来なくても明日朝から集まって、今後の動きを調整しようと言う話になった。

 レイには毛皮と、藁と氷に包んだ子供を先にノーウェの官僚に渡すようお願いしている。


 皆と別れ、私はギルドに帰還の報告をする。家に戻るが昼食は終わった時間帯なので、ティーシアはもう食べた後だった。リズはそれを聞いて、食堂に向かったらしい。


 部屋に戻り、装備類を置く。タロが駆け寄ってくるので抱き上げて、わしゃわしゃにしてあげる。ひゃんひゃんと言っていた声も少し太い声で、きゃんきゃんに近い音に変わっている。

 昼ご飯はもう食べたのか、特に物が食べたい素振りは見せない。骨を投げてあげると、目を輝かせて取りに行く。その後、こちらの前にそっと置く。もう一度らしい。また投げる。

 そんな事を数度続け、ノーウェの屋敷に先触れで訪れる。食事はしたいので、小一時間後程度で予定が開けられるか執事に確認し、時間の調整をお願いする。了承を貰ったので、そのまま食堂に向かう。


 昼ご飯を終えて、少し食休みをした後に、ノーウェの屋敷に向かう。さてここからは大人の交渉の時間だ。どれだけの利益を提示出来るか。正念場だな。

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