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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第193話 流石に何でもかんでも狩る訳では無いです、後の事も考えます

 1月4日はあいにくの雨だった。それも土砂降りの雨だ。これは工兵部隊も足止めだろうな。予備日の1日がいきなり潰れるのか痛いだろうな。

 タロの世話、朝食を済ませて、ギルド前に集合する。皆もエントランスに避難していた。

 話をしてみたが、やはり今日森に入るのは危険と判断した。また、子爵の工兵部隊の話をすると、森のより奥に攻めるのは当面控える事になった。


 後、前々から気になっていたパーティー間の呼び捨てに関して相談してみた。基本的に婚約者や配偶者、家族間、親しい友人間での呼び合いで他は敬称を付ける。

 ただ、咄嗟の時に非常に面倒なのだ。どうも聞いていても「ミスター、ミス」に近い扱いだ。

 敬意を表するのは良いが、他人行儀に過ぎる。これ、ここまで仲間としてまとまったら、必要無い気がする。


「ちょっと恥ずかしい気はしますが、ええですよ」


 チャットは肯定派だ。 


「良いわよ。もう家族みたいなものだし。特に気にしないわ」


 ティアナもそう言う。


 ロッサは皆が保護者と言う感覚なので、特に気にしない。

 ロットとフィアはお互いがもう婚約しているので、気にもしない。

 ドルも少し考え込んで、頷いた。

 リズも、結婚すると決まったので、余裕が有る。頷いた。


 敬称問題はこれで解決だ。


 取り敢えず、生活資金に関しては余裕が有る。ロッサでもまだまだ平気だ。明日も天候を見ながら、今日は解散となった。


 そのまま家に戻る。リズはタロの面倒という名の観察兼愛玩に勤しむ。あまり構うと甘えん坊になると思う。まぁ、親の愛が足りないから丁度良いか。

 それを横目に、延焼を気にせず、火魔術の訓練を窓の外で行う。土砂降りもこう言う利点が有るから助かる。


 過剰帰還の度に、タロに構う。口を開けさせると、昨日の1本に合わせて他にも数本突き破った牙が見える。触るともう、恍惚とした顔で尻尾を振り続ける。


「凄く喜んでいるね」


「気持ち良いんだと思う」


 はふはふ鳴きながら、もっともっとと顔を差し出してくる。触り続けるが、1本の時と違って中々満足しない。もう顔全体が気持ち良い顔になっている。


『きもちいい、もっと、まま、もっと』


 痒い所を掻かれる感じか……。本当に近いのかもしれない。こりこりと指先で弄ってあげる。やがて満足したのか、転がる。箱に戻すと大人しく毛皮に潜り込んで行く。


 リズは、ティーシアの手伝いに向かった。朝の説教が効いたらしい。


 私は魔術の訓練とタロのお相手を交互にしていく。お蔭でじりじりと火魔術も上がっている。

 土は利用用途が広がっている。火ももう少し上がれば継続時間が伸びるかもしれない。それを願いながら、訓練を続ける。


 やがてお昼の声を聞いたので、アスト達と一緒にお昼を食べる。


 食べ終わると、引き続き訓練に戻る。前衛と違って後衛はこう言う時便利だなとは思う。何時でも何処でもあまり気にせず訓練出来る。

 時を忘れ、スキルの伸びと過剰帰還までの感覚を体に叩き込みながら続ける。


 タロは、ふんふんと小箱の中を行ったり来たりしている。そろそろ広い世界に出してやるかと部屋の床に置いてみると、新鮮だったのか尻尾をふりふり色々な場所を嗅ぎながら探索を始めた。

 ドアの周辺は危ないので、そっちに向かった場合は方向転換させる。1度尿を漏らしたので、尿は箱の中と躾けた。躾けたと言っても鼻を軽くつんと押して『馴致』で伝えたら、納得したようだ。躾が楽だな、これ。


 適度に乳をやりながら、訓練をしていると、夕ご飯、お風呂だ。


 タロの入浴もリズに任せている。肌のトラブルも未だに無いので、お風呂狼として、このまま続けられる間は続けよう。


 すやすや眠っているタロを小箱に収め、そのまま毛皮を被せる。


 私も樽に浸かりながら、今日を思い返す。雨はどうしようも無いな……。雨の森は本当に危険だ。夜もそうだが、想定外が一気に増える。

 ロッサが喜んでくれたのは嬉しい。泣かれるとまでは思わなかったけど。呼び捨て問題は助かった。指示の時一々敬称つけるのが苦痛で仕方無かった。


 そんな事を考えながら、茹る前に樽から出る。後片付けを済ませて、部屋に戻る。


 娘さんは今日も、タロ観察に夢中だ。


「何か変わった事は有る?」


「立ち上がって、数秒だけど立ったままと言うのが増えたよ」


「結構筋力増えてきたね。元々足の大きい子だから、安定は良い筈だし」


 そう言っている間にもタロが立ち上がり、ぷるぷるし、こてんと転がる。本人は楽しくてしょうがないらしい。


「私達の子供もこんな感じなのかな?」


「人間の子供はもっとゆっくりだよ。でも、そうだね、同じようなものだよ」


「詳しいよね?」


「妹がいたからね。育つまでは見ていたよ」


 そう言うと納得したのか、タロの方に集中し始める。


 ふと悪戯心で後ろから抱え上げて、ベッドに放り出す。


「うあ、ヒロ、どうしたの?」


 びっくりした顔のリズに口付けて、耳元で囁く。


「あまり大きな声を出さずに出来る?」


 そう言うと一気に紅潮した顔で、俯く。


「うー。頑張る」


「リズ、声が大きいからね」


「あんなの、勝手に声が出る!!あれはヒロが悪い!!」


 そう言いながら、ベッドに二人で潜り込む。


 夜半を超えた辺りで雨は止んだ。明日はぬかるみの中を森の探索か……。ロッサが痕跡を見つけるのも難儀しそうだな。


 そう思いながら、心地良い疲れの中、1月4日は過ぎて行った。


 1月5日は晴れ。昨日とは打って変わって抜けるような青空だ。

 朝食を食べ終えて、早々にアストは猟に出る。


 用意をしながら昨日の会話を何とは無くしていく。


「フィアが溺れるって言ってたけど分かった。呼吸出来なくなるよ」


「あれでも、大分手加減しているよ?」


「え!?手加減しているの?いや、手加減してもらってて良いよ?」


「まだまだ先は長いね」


 そんな事を言いながら用意を済ませて、ギルドに向かう。

 皆と合流し、荷物の点検を行う。ギルドにはこそこそ隠れて、受付嬢に森への侵入の旨を伝える。


 馬車に乗り込み、北の森に向かう。地面を見ると昨日の土砂降りでも消えきれなかった荷車の轍が続いている。


 森の入り口に着き、そのまま森の奥まで進む。足元が悪い為、進行速度は少し遅めだが、何時もの中継ポイントまでは昼前には到着した。

 そこから川に出て、ロッサに痕跡を確認してもらう。


「雨でしたから、過去のはかなり薄れています。新しいのは何点かあります。その中でもなるべく大きめを狙います」


 そう言うと、ポニーテールを揺らしながら、先導を始める。きちんと着けてくれているのが嬉しい。

 何時も通り、点在する痕跡を丁寧に追いながら、ロッサが進む。しばらくするとロットが反応する。


「『警戒』の範疇に入りました。釣ってきます」


 丁度陣地に良さそうな場所だったので、そのまま藪を切り開いていく。

 陣地構築が完了し、少し時間が経った後、ロットがゆっくり戻って来る気配を感じた。


 陣地に藪を掻き分け入って来る。


「サイズですが、2.5m以下の小物です。どうしましょうか?」


 うーん、まだ若い。あまり若い個体は狩りたくない。お金にならないと言うより、生態系への影響が大きい。育ち切ったのを狙いたい。


 協議の結果、見送りとなった。丁度良いので、お昼ご飯の用意をする。

 ロッサは自分の誘導の所為と悔やんでいたが、全く見当違いなので、慰めておいた。


 薪は昨日の雨で大分水分を含んでいるが、火魔術で強引に火を点けて、煙は風魔術で流す。


「便利で助かるけど、もう、反則よね、それ」


 ティアナが若干呆れ顔だ。チャットもうんうん頷く。


「まぁ、後衛だからね。出来る事は何でもするさ」


 そう言いながら、お湯を沸騰させて野草と燻製肉を炊いていく。味を調え、最後は小麦粉でとろみをつけて完成だ。


 出来上がった物を皆で食べる。やはり寒い自然の中で食べる汁物は最高だ。とろみが熱を体の奥まで運んでくれる。

 皆も幸せそうな顔で食べている。


 後片付けも済ませて、再度川に戻る。少し探索範囲を広げ、ロッサに体重の有る熊を探して貰う。


「これは、先程無かった跡です。かなり大きいと思います」


 そう言いながら、先導を始める。


 最近失敗や不運が続いているので、今度こそはと願いながら、ロッサの後を追う。

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