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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第181話 脚の大きな犬は大きくなると言いますが、狼もそうなのでしょうか?

 犬がお風呂を怖がるのは、嫌な経験をしたからだ。耳が良い為、シャワーの音は恐怖の対象だし、人間サイズの大量の水は原始的恐怖を抱かせる。

 個体差で生来の好き嫌いも有るが、後天的な要因の方が圧倒的に多い。要は嫌わないように、気をつけてやる。心地良い物だと認識させる事が重要だ。


 まだ、目が開いていない子狼だ。買って来た小さなタライに入れてみて縁までの高さを計る。首を乗せられる高さ分の円形の石板を生みタライの中に敷く。

 人間の体温より少し高めのお湯を生み、タライに張る。アンバランスに大きい脚先にお湯をかけてみる。


『まま?』


 起きたか。嫌がらないようなので、しっぽ、背中、お腹とお湯を順にかけて、水に慣らしていく。ひゃんひゃんと嬉しそうに鳴く。うん、水嫌いな子じゃ無いな。

 少し多めにお湯を手でかけたが、目元がふにゃっとなって脱力するので、大丈夫と判断する。そっとお湯に浸けて、首を縁に乗せてあげる。


『ぬくいー』


 ひゃんと鳴き、そのまま四肢をだらんと広げる。緊張が解けたのか、お湯の色が黄色く染まる。おふ、お漏らしか。まぁ、リラックスしたらしょうがない。

 タロを掬い上げて、タライを洗い、お湯を張り替える。体が冷えないように片手で包んでの作業でちょっと手間取った。再度、お湯に浸ける。


 リラックスしたままなので、そっと毛と肌をお湯で揉むように洗っていく。石鹸は使えない。子狼の肌にはアルカリが強すぎる。元々犬科の動物には石鹸は刺激が強い。

 ざっと汚れが落ちればそれで良い。正直、普通の犬は半年程度成長するまで、入浴はさせない。ただ、体が冷え切っているので一度温めないと、逆に風邪を引くか、弱る。

 それに、この時期の子狼の骨は細く脆い。すぐに折れる。細心の注意で洗っていく。


『ままー、もっとー』


 親に舐められているのと同じ感覚なのか、にんまり顔でじっとしている。顔を洗われるのは嫌う子が多いのだが、首辺りまで来ても反応が無い。そのまま軽く濡らして行く。

 大丈夫そうなので、耳と鼻に水が入らないよう注意しながら、顔と頭も洗う。しかし、大人しい子だな。


『ま……ま……、ね……』


 あ、寝た。危機感が無いのか、大物なのか。少し浸けておく。様子を見て、毛を掻き分け肌の温度を確認する。お湯並みの温度になっているのを確認したら、乾いた端切れでそっと水分を拭っていく。

 風魔術のブロウだと、一気に体温を持って行かれる。地道に水分を吸ってあげる方が望ましい。弛緩して、だらんとした体を隅々まで拭い、水分が残っていないか確かめる。


 そのまま部屋に戻り、箱にそっと入れてあげる。毛皮を被せて、様子を見る。毛皮の隙間に指を入れて温度を確認し、高いままなので安心した。

 先程は、触ってもかなり温度が低かった。子供の頃は体温が高い程度だった筈なのに、おかしいと思って正解だったらしい。


「可愛いね。なんでこんなに可愛いのかな?」


 リズがキラッキラな目で、ぷーぷーと寝息を立てて寝ているタロを飽きずに眺めている


「リズも女の子だからかな?子供を見て可愛いって、育てたいって思う本能じゃ無いかな?」


「んー。そうなのかな。あ、ヒロの子供は育てたいよ?」


「それはもう少し先かな……。せめて男爵領が落ち着く1年少し程度は欲しいよ」


 ちょっと落胆した顔をされた。


「折角結婚出来るのに、結構先だね」


「まだ男爵になったけど、領主経験が有る訳じゃ無いからね。一回1年分の業務を回してみないと、先が分からないよ」


 苦笑しながら答える。彼女も、本気では無いだろう。子狼を見て当てられているだけだ。


「でも、子供を作る事はしてみたいかな?」


 悪戯っぽい目をしながら、両手を首に回してくる。


「もう少しだよ。我慢、我慢」


 まぁ、こちらの我儘だが、ここまで来れば守ってもらう。そう思いながら、迎え撃ち、先に口付けた。


 そのまま触れ合いながら、ベッドに潜り込む。12月28日の夜は温かで、安心しながら過ぎて行った。


 夜中、ひゃんひゃんと言う鳴き声で、目を覚ます。


『まま、まま』


 あぁ、授乳か。小さい頃はしょうがないかと残った羊乳を温めて与える。懸命にちゅぱちゅぱ吸い続ける。

 一度湯煎した物は処分して、別で(かめ)に保存している物を使っている。この気温では腐らないが、氷で冷やしている。

 満足したのか、口を放し、ずりずりと箱の中を這いずっては壁に鼻先をぶつけている。その内飽きたのか、また寝入った。

 そっと毛皮をかけ直して、ベッドに戻った。


 夜中過ぎ、ひゃんひゃんと言う鳴き声で、目を覚ます。


『まま、まま』


 あぁ、授乳か。子犬って1日何回授乳だっけ、8回くらいだったか?あぁ、後1,2回は起こされる計算か。リズはすぴーと夢の中だ。あは、絶対に私が世話する、か。

 まぁ、子供が出来た時には苦労してもらおう。それまでは私が面倒を見るよ。

 そう思いながら、漏らした跡と便の処理をする。洗濯は申し訳無いが、ティーシアに頼もう。


 12月29日の朝も快晴。リズに訊ねると、どうもこの時期は晴れか、どばっと雨が降るかのどちらかが多いらしい。

 朝食の席で、ティーシアにタロの面倒をお願いする。細かい説明をしようとしたが「リズも育てたから平気」と言い切られては何とも言えない。

 きちんと立派に育った結果が、証拠として横に座っている。


 ギルド前で皆が揃っている。と言うか、ロッサを除き、微妙に鼻息が荒いのは如何にかならないのかな……。ロッサはどうも、昨日の儲けが現実といまいち信用出来ていないようだ。


 何時も通り、馬車に乗り込み、森の入り口に向かう。奥までの経路も同じだ。昼前に森奥の浅い所までは到着した。

 ここからのプランに関しては、ダイアウルフを今日一日狙う。その上で、狩れなかった場合は明日、熊を探して狩ると言う事だ。

 まぁ、熊狩りにもかなり慣れては来ている。ダイアウルフの動向をきちんと把握して狩るので有れば、慢心では無く問題は無いと考える。


 昨日のオークと遭遇したポイントまで地図を頼りに、藪を切り分けながら進む。どちらにせよ奥に進まなければならないので、見知った経路で進む。

 ポイントに到着した段階で、昼食を取る。ここからの動きに関してはロッサ頼りとなる。

 元々ソロで森に入る事が多かったので、狼に出会わない為細心の注意を払っていた。テリトリーのマーキングの臭いが何となく分かるらしい。

 ダイアウルフも狼の近縁種なので、生態は似ているだろうと言う事で、マーキングを探し、付近を調査と言う形になった。


 大きめの螺旋を描きながら、初期ポイントから移動を続ける。2時間程経っただろうか。ロッサの顔が変わった。地面に顔を近づけ、しきりに周囲を確認し始めた。

 1本の木の前で動きを止める。


「狼と似ていますが、違う生き物のマーキングの痕跡です」


 ビンゴ。完全にポイントからは真北、森の深部方面だ。このまま北部を重点的に楕円の螺旋を描き、尚探索を進める。

 また、2時間半程経ったか。太陽は夕焼けにはまだ早いが、かなり下がった頃にロッサから反応が有った。勿論ポイントからは北だ。

 地面すれすれまで顔を落とし、周囲を確認し始める。


「先程と酷似した匂いです。きつくなっているので先程より新しい痕跡です。ただ、同一個体かは不明です」


 同一個体って、そこまで詳細に分かったら怖い。周囲の注意をしながら、北方面に進むしか無いかな……。

 かなり、森の奥までは来ている。一番嫌なのは、風が背後から、前方に抜けている事だろう。先制されるのは勘弁して欲しい。


 重点的に北を探索していく。後1時間程もすれば夕暮れが始まる。その場合は後退だ。外れなら外れでも経験にはなる。そう思いながら、周囲の警戒を続けた。

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