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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第177話 タロと聞くとマンでは無く、犬の方が先に出るのはおっさんでしょうか?

 『馴致』って何だ?


 <告。スキル『馴致』の能力は一定以下の思考能力の対象にその存在の上位存在と認めさせる能力です。また認めさせた対象の思考の一部を確認可能です。>


 ありがとう。『識者』先生。あー、あれか?群れのリーダーと認めさせる感じか?ゲームのテイミング能力って何を以って従えているのか謎だったけど、そう言う意味か。

 ただ、リーダーが絶対的な権限を持っている対象しか危なくて使えないんじゃないかな、これ。

 イヌ科はリーダー権限が強い。ダイアウルフも組織はアルファ、オメガ型の筈だ。そうじゃなきゃ、あんな集団統制出来ない。


 で、問題はオークだ。雑魚?そんな訳が無い。『槍術』1.17だった。冒険者でも9等級のトップから8等級の下だ。フィアは超えているが、それでも個人の頑張りや訓練の成果だ。

 あいつが集団一の勇士とかなら問題は無い。しかしあのレベルが一般、若しくは兵の基準なら、厄介だぞ……。想定200の集団だ。一般なら100程度、兵でも50近い9等級上位の冒険者集団が相手と同じだ。


 指揮個体戦でも分かったが、数は暴力だ。簡単に質を凌駕する。そりゃ、某中将も緑の巨体より紫の10体欲しがるわ。私も指揮官なら同じ事を言う。

 最後の方の称賛も量産の暁には、だ。量産が、数が前提なのには変わりが無い。あの中将、徹頭徹尾軍人だ。


 と言う訳で、今ある集落は脅威だ。そこらの8等級を集めても足りない。その上、ダイアウルフがお友達になっている可能性も有る。

 死者を出さないで殲滅を考えるなら騎士団400くらいで四方を囲むしかない……。ノーウェに相談だな……。


 何より問題は製鉄技術だ。研ぎが甘いと言う事は整備の重要性が分からない愚か者か、整備出来る人材がいないかのどちらかだ。

 素人なので詳しくは分からないが、長く研がれていないのは何となく分かる。


 だが、問題はそこには無い。オークの集団に鉄製品を提供する勢力が有るか、独自に製鉄技術を発達させているか、だ。

 鉄は製鉄するのに比較的高温が必要だ。その環境を整えられるだけの知識と財力、環境を人間に敵対する勢力が持っている。脅威だ。ここから石炭等の派生の技術発展も容易なのだから。


 今まで、場当たりで対応してきたツケが回って来ている。実力者を派遣して潰しています。キリッ?死ね。現状確認くらいして、情報共有しろ。

 ウッドアーマーなんてレベルじゃ無い。こいつら、人間と本気で殺し合いが出来る装備を入手出来る環境に有る。高位の冒険者の実力は知らないが、状況は刻一刻と変わっている。

 嘗めていたら、死体の山だ。はぁ、また何か踏み抜いた気分だ……。くそが。


 はぁぁ。何時ものお仕事と思っていたが、とんでもない物見つけてしまった。今からなら、ギリギリ村に戻れる。戻ってノーウェに連絡、相談だな。報連相は社会人の基本だ。


「今回の件、大きな問題を抱えている。それが分かった。だから今日は村に戻ろう」


 皆に、今までの考察を伝える。その上で帰還の方針を出したが、反対者はいない。皆、問題意識を持ってくれた。


 急ぎ、熊のポイントまで戻る。ダイアウルフの処理は、リズとロッサにお願いする。熊が冷えるまでと言う事で、食事の準備をする。

 食事を食べ終え、少し早いが熊を引き上げて、処理を始める。皮剥ぎの時にリズに呼ばれた。


「ここ、見て。ここも」


 熊の皮の一部を指さす。毛を分けると、無数の古傷が出来ている。がぁぁぁ。あんなに苦労したのに、これ、買い叩かれる。絶対にオークがちまちま刺して、逃げられた個体だ。

 冒険者の場合、罠猟なら止めは一発だし、遭遇戦なら何とか逃げる。ダイアウルフも高価と言っても簡単に売れない。今回、丸損かも知れない。初めてだ。


 心の中で意気消沈しながら、笑顔で川に沿って下って行く。今回は私のミスかぁ。運が悪いと言えばそれまでだが、それで納得させていたら、リーダーなんていらない。

 言い訳は考えるし、利益を考えよう……。ダイアウルフをノーウェに買い取ってもらって分配かな。そうでもしなきゃ申し訳無い。頭下げよう。


 そんな暗い気持ちで道を歩いていると、ロットが何かに気付いたのか、皆を止める。


「何が有った?」


「分かりません。小さな気配を感じますが……。動きません。こちらです」


 誘導に従い、藪を分けて行くと微かなひゃんひゃんと言う鳴き声が聞こえる。その瞬間、しまったと思った。振り向くと、リズの顔がにこやかになり始めている。

 声の方に向かうと、狼の子供だろう。足に怪我をして、動けなくなっている。親に捨てられたか……。衰弱はしていないのでごく最近だろう。うわぁ、こんな時に……。


「ヒロ?約束は?」


「でもね、リズ。生き物を飼うと言う事は……」


「ヒロ?」


「はい」


 傷を神術で治すと意識のリンクみたいな感じが生まれた。『祈祷』で神様と話すのと似たチャンネルだ。これもソースの使い回しか?


『まま、まま』


 これも通訳されているのだろう。

 目も碌に見えていないだろう個体だ。両手でそっと抱きしめると、縋りついてくる。頭を撫でると素直に従う。あぁ、アルファ牝扱いされている。これが『馴致』か。


『大丈夫だよ、守るよ』


 そう伝えると、体の緊張が解ける。


 リズが目をキラキラさせながら、そっと背中を撫でる。少し嫌がるように震え、こちらに縋りついてくる。


「羊の出産シーズンって今頃だっけ?」


「うん。うちも何匹か生んだよ。今年は結構数がいて超ラッキー」


 フィアが答える。羊の妊娠は結構調整が容易だ。この時期に生ませるのは、冬の間乳を利用し、乳が出なくなれば潰して食料にする為だ。


「幾らか、乳を分けてもらっても良いかな?」


「お父さんに言っておくー」


 はぁ、ここまで来たら捨てられないか。


「名前何にするの?」


 リズがキラキラした目で聞いてくる。


「タロかな?」


 雄だし。


「あ、ヒロの国の英雄の名前を取るの?格好良い!!」


 リズとフィアが大喜びだ。

 まぁ、私としては、南極地域観測隊で1年も生き残った子達に敬意を表して、元気に育つよう(あやか)りたいと思っただけだ。


 新しい仲間を抱いて、川沿いを下って行く。こちらも一回通した道だ。かなり早い速度で先に進める。これなら夕方前に帰還は可能だな。


 結局、馬車で村に戻ったのは夕方の始めだった。


 熊の鑑定とダイアウルフの達成の処理を皆に任せる。


 ヴァタニスとハーティスを呼び出すと、かなり憔悴した顔で出てきた。話を聞くと、あまりに杜撰(ずさん)過ぎてどうしようもなく、方針決めからの話らしい。

 お金の流れも、もう、自転車操業状態になっていて、何の金がどこから出現したのか紐づけするのも一苦労と言う有様だ。間違い無く、組織じゃ無い。

 護衛の処理とオークションの件は待ってくれと2人からもお願いされた。国か他国の冒険者ギルドから無利子、無期限、無担保で融資してもらうしか当座の対応が出来ないらしい。

 あぁ、豚の時も思ったが、組織の腐敗はそれだけじゃ無く、後まで祟る。これも他山の石だな。そこから現状の説明をザクッと受ける。途中で白けてきたので辞去した。

 あまりに、今の段階で確定している内容が少なすぎる。


 鑑定受付に行くと、かなりしょんぼりの皆がいた。

 蟹の爪は達成数は出るが依頼は無いので、達成料は無い。熊は皮は劣悪品扱いだ。ダイアウルフも通常の達成料、達成数だけ貰う。オークも達成数と達成料だけだ。

 結局、6等級の達成数が3、8等級が2となった。全部ロッサ行きだな。


 達成料と販売額の合計は38万ワールちょっとだ。皆をエントランスで待たせる。ちょっと価格交渉してくると伝えて、席を立つ。

 タロはリズに預けた。ママだよって伝えたら納得してくれた。私はパパになったらしい。フィアが羊の乳を用意してくれるらしいので、世話は任せた。


 ダイアウルフの皮を担いで、ノーウェの元に向かう。さて、ここからは社会人タイムだ。

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