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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第175話 初めては大切なのできちんと準備をします

 腰を抜かしたヘレーシアに手を貸し、立ち上がらせる。


「失礼致しました。見た目で御歳を判断しておりました」


 凄い恐縮されている。何を誤解しているのか?あぁ、『祈祷』での降臨の件か。そりゃ、彼女の話を聞いている限り任意の場所で召喚出来る2.00まではかなり時間がかかる。

 きっと出来るのは、高齢か超ベテランとかなのだろう。そう言う意味では規格外だな。恐れられる理由は分かった。


「いえ。故郷で少し神様絡みの仕事をしておりまして。その影響か、何時の間にか出来るようになっておりました」


 にこやかに誤解を解く。彼女側は唖然としていたが、当たり障りの無い会話を続けていたら、何とか普通の対応を取ってくれるようになった。

 将来的に何か頼むかもと名刺も渡しておく。何か珍しかったのか頻りに感心していた。


「さて。後片づけが大変だね。この馬鹿の後始末でしょ?あぁ、折角領地が沸いて忙しいと言うのに、こんな対応をしないといけないなんてね。最悪だね?」


 首を傾げながら、ノーウェが苦笑する。


「私の都合でご足労頂いた上に、お手を煩わせてしまい、申し訳御座いません。どうかご寛恕を」


「固い、固いよ。君、悪くないし。と言うか、殊勲だよ?折角、裁定役を用意したのに、結局一人で全部片づけちゃうし。借りが少しは返せると思ったのに、また借りだよ……」


 ノーウェの苦笑が深くなり、肩を竦める。


「いえ。そのお気持ちだけで嬉しく思います。今回に関しては偶々の重なりですので。お気になさらず。今後のご対応大変かと考えますが、どうかお体にお気を付け下さい」


「はぁぁ。君と話していると、全部差し出しても借りだけが増えて行きそうで怖いよ。ただ、回り始めるまでの決裁役は必要だから、少しの間は村で拘束かな?」


「では、そのような心をお慰めする物を持参するよう致します」 


 そう言うと、ノーウェの瞳が輝く。


「もしかして?」


 両肩を掴まれ、顔が近付いてくる。近い、ちーかーいー。


「ご想像にお任せします」


 そう答えると、解放された。

 ノーウェがルンルン顔で各員に指示を飛ばし始める。ヘレーシアは本日は村で宿泊し、明日戻るとの事だ。忙しい彼女らしいなと苦笑してしまった。

 ヴァタニスはハーティスと共にギルド長室に籠り、書状関係の整理を始めている。業務周りはハーティスで管理していたが、やり取りが不明な為、まずはそこかららしい。

 折角村を出る時は頑張って落ち着かせていたのに、元の木阿弥か。組織での仕事の無常を感じる。


 私は解放されたので、アスト宅に戻る。皆は先に家や宿に戻らせた。人質の心配はしたが、国と言う組織に刃向かえる根性が座った人間がいるとは思えない。

 そもそもそこまで壊れた人間で有れば、その前に何らかの行動に出ている。そう言う意味では安全は担保出来ている。それ以上を望むなら、国内の人間を抹殺するしかない。非現実的だ。


「どうなったの?」


 リズが少しだけ心配そうな顔で聞いてくる。


「大丈夫。全て片付いたよ。子爵様は居残り確定だけど」


 ちょっと苦笑しながら伝える。

 皆、安心した様に溜息を吐く。アストとティーシアにはフィアの家族への、リズには青空亭のメンバーへの状況説明をお願いした。


 私はノーウェ対策をしないといけない。木工屋に行くとバックギャモンは完成していた。思ったよりも忠実に再現されている。穴の精度も良い。後は木札も回収した。


 そのまま鍛冶屋に向かう。久々にネスの顔を見てちょっと安心した。


「おう。帰ったか。久々じゃねえか」


 にやりと男臭い顔で笑ってくる。


「お久しぶりです。頼んでいた物は如何ですか?」


「おう、焼き印だな。出来てる。どうすんだ、これ?」


 木札を差し出す。


「白い方の中点に略式紋章を、裏にそれぞれを焼き印で押して下さい。ニス塗は木工屋かな?」


「んあ?あぁ。ニス塗はうちでも出来る。全部やるぞ?」


「じゃあ、両面お願いします。子爵様に見せる物なので、ちょっと早めが良いのですが……」


「数が数だからな……。まぁ弟子総出で今日中に押印は終わらす。ニス塗は今日中で明日一杯で乾燥だな」


 その間はバックギャモンとチェスで時間稼ぎか。


「分かりました。お幾らですか?」


「あん?前に50貰っただろう。あれの内で良い。弟子の修行になったしな」


 本当に律儀だな……。


「足出るでしょ?」


「構うかよ。修行だ、修行」


 そうやって笑う。あぁ、こう言う気の良い工場の職人さんいたなぁ。皆不況だ不況だって言いながらも、笑ってた。義理人情で血反吐吐いても耐えてた。良い仕事してくれたなぁ……。

 ふと、思い出し、苦笑とちょっとだけ切ない物を感じた。


「ありがとうございます」


「良いって事よ。んじゃ、明日の夕方か?」


「子爵様次第ですね。まぁ、予定しておきます」


 その後はクロスボウの開発の話になった。結局、試作までは行きついた。

 後はロッサ次第だ。だが、まだ芯が入っていないんだよな、あの子……。渡すにはまだ少し足りない。私が保護者代わりの間は無理だ。自立したら考えよう。

 取り敢えず、試作段階で一旦ストップと言う話にした。


 そのまま旅の話を交えつつ、雑談に花を咲かせる。

 楽しい気分のまま、辞去する。


 後はと、村で一番高い宿に向かう。ちょうど夕ご飯時なので食事の内容を見てみたが、いまいちだ。店主に一番高い部屋を見せてもらったが、調度が少々ゴージャスになった程度だ。

 これで値段3倍は無い。サービスは分からないけど、青空亭の方が気心(きごころ)が知れている。


 青空亭に向かう。店主がこちらに気付き次第すぐさま近寄って来て挨拶と用件伺いが始まる。あぁ、この人良いなぁ。サービスが何か分かっている。

 年始の夜の一泊で初めての夜と言う事を伝え、プランを練り始める。婚約の時が有るので、あっさりと納得してくれて色々提案してきてくれる。

 部屋も態々当日だけ、特別に整えてくれるそうだ。で、最終的な価格だが、安い。勉強し過ぎだ。その辺りを指摘すると、うちのメンバーが常宿(じょうやど)にしているからサービスとの事だ。

 内情まで把握してサービス考えるんだから、この人本物だ。その場で色を付けて支払う。この人ヘッドハンティング出来ないかな?温泉宿のマネージャーとかやらせたい。


 そんな事を考えながら、皆の様子を見に部屋を叩く。ロット達の部屋に集まっていた。リズが状況説明をしてくれていたので、私は補足程度で済んだ。


「はぁ、そんなことになってたなんて。僕、全然気付かなかったよ」


 フィアが呆れた顔で呟く。うん、普通は気付かない。あまりに大きな餌の所為で尻尾を出しただけだ。


「呆れたわ……。はぁ、国内どこを回ってもそうだったなんて……。気付きもしなかったわ。まだまだね……」


 ティアナはちょっと自信を失った感じだ。そんな時は、バックギャーモーンー。


「何ですの?これ」


 チャットが興味深そうに聞いてくる。


「チェスとは違う、新しい卓上玩具?」


 そう答えると、皆の目が光る。まだトランプにもチェスにも飽きていないけど、次だ。矢継ぎ早に積みゲーが積まれる感じか?堪らんな。


 と言う訳で急いでサイコロもう一つに数字を書く。穴にはめ込むとしっかり保持する。あの木工屋、思った以上に腕が良いな……。何か進化していっている。


 と言う訳で、ティアナと皆に、ルールを説明して行く。これがちょっと面倒臭い。バックギャモンのルールって、説明しにくい。


 実際にコマを置いて、サイコロ振りながら、動きで説明していく。取り敢えず、一通り説明が終わった。ティアナも理解の色は見える。


「じゃあ、実際にやってみようか?」


「ええ」


 と言う訳で、サイコロで先攻後攻を決める。

 バックギャモンなんて名前が付いているが、要は双六だ。自分の駒を陣地に入れきったら勝ち。ただ、ちょっと戦術は有る。

 始めの頃は中盤辺りにポイントを作って、兎に角相手の動きを封じる。そうやって孤立させて、その上でヒットを狙う。

 後はじりじり上げて行き、ダンスを狙う。このゲームの一回休みは強烈に痛い。


「3と5。これヒットするよ」


「うっ……」


 上手く動かせば、終盤戦はヒットされたらダンスするに近い状況は作れる。そうやって封殺してじりじりと戦線を上げて行き、終了だ。


「はい。これで終了。今回はバックギャモン勝ちだね。3点もらうよ」


「納得いかないわ……。運よね?これ。あぁぁぁ。悔しい」


 まぁ、基本、運だけどそれだけじゃないのが面白い所かな?


「じゃあ、5ポイント戦だから、後2ポイント取ったら、こっちの勝ちだよ」


「負けないわ!!」


 おぅおぅ。珍しくティアナが熱くなっている。チェスは頭で勝負だけど、バックギャモンは運だしな。納得いかない部分も有るんだろう。


 と言う訳で、再度封殺し切ってギャモン勝ちとなった。最後に上手くヒット出来なかった。まぁ、5点で終了だ。


「あぁぁぁぁぁ……」


 ティアナが頭を抱えて崩れる。そんなに悔しいのか……。この子、本当に運関係が絡むとメンタル弱いな。


 そんな感じで皆で試して貰う。どうも、ロッサがかなり気に入ったようだ。チェスは複雑だが、バックギャモンは双六だ。覚えやすい。リズとフィアもそんな感じかな?

 まぁ、平安時代でも流行ったくらいだから、女性陣人気は高い。


 そんな事をしていると、外が真っ暗だ。やばい、夕ご飯の時間だ。齧りついているリズの首元を掴み、猫のように持ち上げる。


「ヒロ、苦しい」


「リズ、夕ご飯。アストさん達、待っている」


 そんな感じで、家まで駆け出す。余裕が無くて気付かなかったが、空気は乾燥し、冷たい。あぁ、もう冬なんだな。やっと季節を感じられる事に日常を感じた。

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