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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第169話 沖縄でココナッツを買って飲んだ後、果肉を食べた時の鮮烈な記憶は未だに残っています

 昼からは引き続き、村周りの設計と塩田周りの話に戻った。これに関しては今日中には終わらないと見ている。

 昆布は度々状況を見ている。秋の快晴の太陽と強い潮風のお蔭で順調に乾燥している。ただ、乾燥し過ぎると割れるとも聞いているので慎重に様子を確かめる。

 程々に乾燥した辺りで取り込み、タワシで砂などのゴミを落とす。ある程度の大きさで切り分け、馬車に積載する。熟成では無いが風通しの良い所で置いておく必要が有った筈だ。


 夜は昼から出していたエビのガラでスープのベースを作り塩漬け肉と野草のスープを作り楽しんだ。肉食圏の人間に魚介類を食べて貰うには兎に角、臭みを出さない事だ。

 エビの濃厚さは損なわず、臭みの無い美味しい物が出来て良かった。


 そのまま何時も通りお風呂に入り、仲間達で打ち合わせとなった。今後生活の場とするに当たって、周辺の調査を護衛班以外にお願いしていた。


「林方面は特に問題無しね。結構奥まで進んだけど、襲ってくる個体はいなかったわ」


 ティアナが報告する。ティアナ達は途中の林まで馬車で移動し、中の探索をお願いした。


「浜の両方を確認しましたが、そちらも問題は無いです。昼間に陸上まで襲ってくる魔物はいませんでした」


 ロットが報告する。ロット達は、ホバーで移動した浜の東西をもう少し広めに探索してもらった。


「と言う事は、最低限、生活するのに危険は無いと見て良いかな?」


 そう言うと、若干消極的だが頷きが返って来た。

 消極的な部分は、短時間での探索の為、はっきりと言い切れない為だろう。

 だが元々、生活の場で有った場所だ。大きく環境が変化しているのなら、何かしら影響が出ている筈だ。それが無いのであれば、一旦は安心と思うしかない。


「探索、お疲れ様でした。じゃあ、前番は引き続き警戒をお願いね。後の人間は休もう」


 そう言って、解散となった。本日はロッサが前番だ。


 そのままドルとテントに潜り休む事にする。しかし、人魚か……。隣人としてはとても友好的なので、是非良い関係を続けたいな。そう思いながら目を瞑る。

 15日目は、こうして終わっていった。


 16日目も快晴だ。この時期、雨が少ないのは本当に助かる。


 引き続き、調査団と一緒に村の設計に携わる。予定では今日で滞在期間も終わりだ。合間を見て、仲間を集める。


「面白い物、飲んでみない?」


 そう言って、氷水で冷やしたココナッツをタライから取り出す。


 ココヤシは結構生えていた。ココヤシの実がココナッツだが、若い実も結構なっていたので収穫しておいた。緑一色より、斑点が有る物が丁度良い。毒が無い事は確認した。


 ナイフで上部を削り、慎重に穴を開ける。皆がそれに倣って穴を開ける。


 口を当て傾けると、トクトクと独特の甘みを伴ったスポーツドリンクのような果汁が流れ込む。塩味は弱い。ほんのり程度か。だが強烈に甘い。沖縄で飲んだ物より全然甘い。

 他の皆もその味に魅了されたのか、表情を輝かせ夢中で貪るように飲んでいる。


 この世界、砂糖の精製は行われているがまだまだ高価だ。甘味は快楽と直結している。それに冒険者は仕事上、酒が中々飲めないので甘い物が好きな人間は多い。


「美味しいです!!」


 珍しく、ロッサが叫びを上げる。中々甘い物も食べられなかっただろうから、鮮烈な印象なのだろう。

 

「上品な味ね。でも、この甘さは癖になりそうよ」


 ティアナも珍しく素直に称賛している。表情は年相応の無邪気な物だ。何時もそうなら、もっと可愛いのにと思ったのは内緒だ。

 リズとフィアも二人で手を叩き合って喜んでいる。チャットは何か思案顔だ。でも、飲むのは止めない。何を考えているのだろう。

 男性陣は、黙々と飲んでいる。ロットとドルは分かっていたが、レイもどうも甘い物好きだ。

 軍に入ると酒も碌に飲めないと前の騎士や調査団の偽装兵に聞いた。だから甘党になるんだろうなと思った。


「飲み終わった?じゃあ、実を縦に割ってみよう」


 そう。ココナッツはジュースだけじゃない。成熟すると、ジュースは果肉に代わっていく。完全に置換すると固い果肉だが、途中の実だと柔らかく食べられる。

 鉈で縦に割ると、柔らかな真っ白い果肉が見えた。皆の物も同じく柔らかい物だ。良かった。固いのは食べにくい。


「その白いのを匙で掬って食べてみて」


 そう言って、私も食べてみる。あぁ、この独特の濃厚な甘さ。ココナッツの香りがほのかに漂いながらもあっさりと甘く、食感はイカの刺身のようだが、口の中で蕩ける。あぁ、山葵と醤油が欲しい。


 食べた人間は目を白黒させている。甘いお菓子なんて硬い物ばかりだ。果物も有るが、ここまで柔らかで甘い物など中々無い。


 女性陣は一瞬魅了され陶酔した表情を浮かべていたが、その後は貪るように食べていた。女の子はどの世界でも甘い物が好きだなと苦笑が浮かんだ。

 男性陣は一心不乱だ。レイも目の色を変えて食べているのには微笑ましい気分になった。この果肉は、魅了される。日本で甘味に慣れた私でも、美味しいと感じるのだ。


「この実は、あの形の椰子の木になるよ。実が緑の物はジュースが、色が変わると果肉に代わるよ。ただ、完全に代わると固くなるので気をつけて。水が手に入らない時は代わりに飲める。栄養価も高いのでお勧めだよ」


 ココヤシの説明をして、試飲、試食会を終える。

 皆、他の椰子の木の実がどう言う物か聞いて来るので、一つ一つ答えて行った。ただ、見た事も無い種類も有ったので、私が知らないかパニアシモ絡みだろう。

 オウギヤシも有ったので、砂糖は作れる。サゴヤシからは澱粉が取れるので非常の場合はこいつからパンを作れる。ココヤシから油も抽出可能だ。


 砂糖に関しても、流通している砂糖はサトウキビからの抽出と見ている。黒砂糖の風味がそのままだ。精製が甘いので蜜の香りがかなり残っている。

 ここの温暖な気候なら、サトウキビの栽培も可能だろう。林を切り開き、並行してサトウキビ畑にするのも良いと計画している。

 砂糖の製造は西側の南部領主管轄で、秘匿されている情報では無い。ギルド全般で調べて見たが、関与しているギルドは無い。規模が小さいので領主の権限で商売が十分回っているのだろう。公爵を通じての交渉は可能だと見ている。


 ここはある種楽園だ。地球の歴史と連綿と続く資源開発の技術を考えれば、文字通り楽園だ。塩だけじゃ無い。あらゆる可能性が詰まっている。

 現地で見て、初めて分かった。やはり視察は重要だ。百聞は一見に如かずとはよく言った物だ。間違い無い。勝算が見えて来た。


 南国特有の抜けるような青空を眺めながら、実感した手応えに心が震えていた。

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