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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第158話 仕事で県内に行った時パスポートを貰いましたが、良く出来ているなと笑いました

 朝日を感じて、目を覚ます。2日目か、3人が戻るまでに何をするかか……。そんな事を考えていると、甲高い歓声が上がった。女性陣のテントだ。

 体を起こし、テントから出る。女性陣のテントを見ると、皆が集まってキャッキャと騒いでいる。

 近付くと、はっきりと違いが分かった。朝日に照らされて、髪に天使の輪が生まれている。


「あ、リーダー。どうよ、超可愛く無い?」


 フィアが上機嫌で向かってくる。フィアもくすんだ印象が一変している。健康的美少女と言う感じだ。


「うん。可愛くなったと思うよ」


 そう言うと、くるくると回りながら髪の毛を靡かせ、そのままロットと話し込み始めた。両者お似合いだ。

 ロットはかなりショックだったのか、でれっとした顔をしている。惚れてしまった相手だ。それもしょうがない。


 後は次々とこちらに向かって来ては感想を求めてくる。正直、褒めるしかないので、語彙が辛い。

 チャットは新卒学生的なビシっとした美人に、ティアナは余裕の有るはっきりした美人に、ロッサは超美少女と言う感じでキラキラしていた。

 と言うか、ロッサの髪が細いのか少しの風で靡き、その度に銀糸がキラキラと輝く。

 もう、お互いにニヤニヤしながら褒め合っている。ロッサは自分の変化を認識出来ていないので、一方的に褒め手に立っていて、褒められるとキョトンとしている。


 気にしていた、アレルギーやアルカリによるかぶれ等も出ていなかった。髪の毛もきちんとキューティクルが整っているのか、滑らかな輝きだ。


 騒ぎに気付いたのか、調査団も起き出し始めた。中でも女性陣は変化に目敏く気付いたのか、褒めながら秘密を探ろうと必死だった。

 ちなみにリズは、昨日の休憩と夕方の余裕の有る時に調査団の女性に質問攻めされていた。盗賊騒ぎの後からだろうか、皆の親密さが顕著になった。

 やはり、共通の敵と戦った実績は仲間の絆を作るものなんだなと思った。


 ただ、石鹸の在庫はそこまで無い。1号の在庫は持ってきたので、パーティーメンバー1か月分は有ると計算している。レイも含める。

 調査団の女性分までは計算していない。ノーウェに対する宣伝と考えると、見誤ったかとも思うが、そもそもこんなに女性がいると想像もしていなかった。

 アスト達の使う分も有るので、根こそぎは持って来る事が出来なかった。まぁ、伝聞でも伝えてもらえれば幸いだ。


 調査団の男性陣は戸惑い気味だ。彼らは女性の美に対する欲求がどれほど恐ろしいか分かっていない。

 この余裕の無い世界でも、女性は綺麗になる事に貪欲だ。もう本能と言っても良いと思う。それが彼女達の生存戦略なのだから。


 このまま放って置いても埒が明かないので皆に朝ご飯の支度を指示する。

 女性陣は若干不満の色だ。調査団の人間も混じって何をしているんだか……。上司直属の部下なので何も言う気は無いが。


「はいはい。朝ご飯の後は時間が空くので、そこで好きなだけやりましょう。では、朝ご飯の準備を始めましょう」


「はい」


 皆が唱和し、テキパキと動き出す。リズとロッサを呼び止め、朝ご飯の後に中型の草食獣を狩って欲しい旨を伝える。


「この採取時間で当たりをつけるね」


 リズが言うと、ロッサもうんうんと頷く。そのまま、仲良く林に駆け出して行く。


「男爵様」


 レイが何時の間にか背後に立って、声をかけてくる。旅の最中は常時最低限の『警戒』を展開しているのに、この人『隠身』で突破して来る。『警戒』慣れしていると、ちょっと驚く。

 もう本人にとって、無意識の行動なんだろうなとも考える。私も『隠身』の訓練で常時展開する事は有るからだ。


「何ですか?」


「昨晩は、この身に対して過分の配慮を頂きまして、ありがとうございます。感謝し尽くせぬ思いでございます」


 あれ?私、レイに何かしたか……?

 あ、馬車をテント代わりにしてもらった件か!

 テントで寝るのも辛いかと思ってお願いしたんだけど、誤解している……。まぁ、良い誤解だから気にしないでおこう。

 

「いえ。よく眠れましたか?」


「はい。引退した身ですが、その先でこのような快適な環境が与えられるとは思いもしませんでした」


 にこやかに話している姿を見て、少しの罪悪感がちくちくと心を突き刺す。ちなみに、御者は馬の世話が有るので採取等には参加しない。それで良い。馬の世話なんて、逆に出来ない。

 颯爽と馬の方に向かう姿を見送りながら、薪を探し始める。積載分は十分有るのだが、草原地帯を進む際に薪は簡単に手に入らない。拾える時には拾って使った方が良い。

 積載が減って馬の負担を減らす事は帰りに考える。長旅だ。余るくらいが丁度良いの精神で進む。


 十分に乾いた薪を集めて、野営地に戻る。採取担当の人間はちらほら帰って来ている。朝は手軽なスープ程度かなと考えているので、燻製を使ってロッサにスープでも作ってもらう。

 正直、燻製の方が足が早い。使って行かないと、この時期でも腐る。


 徐々に皆、帰って来る。集めてみると、昨日採取しきれなかった物が結構有ったようだ。昨日はもう暗くなりかけていたし、しょうがないだろう。

 保存の効く物は今後に回し、葉物を中心に選択して行く。


「ロッサ、朝ご飯のスープをお願いしても良いかな?」


「あたしですか?はい。作ります」


 昨日、ロッサも涙目になりながら、ドルのスープを飲んでいた。あれの二の舞は無いだろう。

 調査団を含めて、鍋に熱湯を注いでいく。焚火に火を点け、後はロッサに任せる。


 私は、昨日の石板を持ち帰ってみて、ちょっとした悪戯を思いついていた。


 石板は、結構滑らかだ。もっとざらざらと言うか凹凸が有ると思っていたが、イメージの通り滑らかだ。

 この世界でパスタっぽい物は町で見かけた。乾麺は探してみたが残念ながら無かった。麺も押し出しでは無く、切っているようだった。

 荷物に、小麦粉も大量に積んで来ている。いざと言う時、スイトン的にスープに入れて主食にするらしい。


 ならば、あれだ。国内なのにパスポートを配布している県のあれを作ろう。


 馬車に戻り、野菜を洗う為の幅広のタライを食器用のタワシで洗う。丁度馬車の横を通って戻ろうとしていたリズを捕まえ、桶と小麦粉、塩を使う旨を皆に伝えてもらう事にした。

 パーティー資金を使った在庫の管理はパーティー全体で共有している為、勝手に使うと皆に怒られる。そう言う風に運用している。私も例外では無い。


 取り敢えず、分量に関しては覚えている。一人暮らしだと土日が暇なので、よく作っていた。十人前くらいで良いか。小さな桶に規定量の水を生み、塩を匙で計り塩水を作る。確か塩の割合が13%だった筈だ。

 この状態で、少し置かないといけない。そう思っていると、馬車の外から声がかかった。ロッサが態々、朝ご飯出が来上がったとの事で迎えに来てくれた。一緒に焚火まで向かう。


 朝ご飯と言う事で、スープと携帯食を食べる。ソロで生きていたと言う事で少しドキドキしていたが、普通に美味しかった。素材の味を生かした味と言うか、うん美味しい。

 ただ、美味しいとストレートに言うと激しく恐縮されたので気をつけよう。本人は褒められ慣れていない。


 朝ご飯の後に、皆に改めて小麦粉等を使う旨を伝える。皆は怪訝な顔をしている。麺類はそこまでポピュラーな物ではないようだ。店で食べる物なのだろうか。アスト宅でも出た事は無い。

 ナンもどきでも焼くのかと聞かれたので、新しい料理と答えておいた。


 どちらにせよ、送り出した3人が戻らなければこの場から動きようが無い。


 リズとロッサ、護衛にロットの3人で狩りに出てもらう。

 残りの皆は、順番に周辺警戒をする形で打ち合わせを進めて行く。名目とは言え護衛の契約なので、気は抜けない。


 早速残ったティアナに調査団の女性達が集まっている。向こうも向こうで、人員の調整をしているようだ。テントに誘導し、そこで話をしてもらう事にした。


 私は昨日と同じ石板を生み、準備を始める。過剰帰還の気配は無いが、土魔術はまだ低い。休んで様子を見る事にした。

 小麦粉の小袋が1kgちょっとなので、打ち粉に少し残し、タライで先程の塩水と混ぜていく。ポイントは少しずつ水を加えてそぼろ状にして行く事だ。

 そぼろ状になったら、石板の上に移動させて、塊にまとめる。後は体重をかけて延ばしてはくるくると丸め、また延ばすを繰り返す。本当は踏んで伸ばしたいが、ビニールなんて便利な物が無い。

 汗が滲むまで、繰り返し伸ばしては丸め続ける。もう良いかなと思うところで何個かに分けて、円形に延ばし、くるくると中心に向かって全周を丸めていく。大きな肉まんみたいな形になったところで、洗濯して綺麗な端切れに包む。

 馬車では生地を寝かすのに温度が低すぎる。どこか無いかと考え、女性陣が話をしているテントに置く事にした。あそこなら確実に20度以上は有る。


「ティアナさん、少し良いかな?」


 テントの前で声をかけると、幕を開けてティアナが顔を出す。


「何かしら?」


 ティアナが不思議そうな顔で聞いて来る。


「夕ご飯の材料を作っているんだけど、温かい所で保管する必要が有るんだ。テントの隅に置いてもらえないかな?」


 そう言うと、納得がいったのか頷きながら端切れの塊を受け取り、そっとテントの隅に置いてくれる。

 準備は整った。後はリズ達を待つだけだ。


 私は周辺警戒の川側担当を代わってもらった。川に向かって、火魔術を色々アレンジしながら撃っていく。

 危険でも何でも、上げないと始まらない。もしもを考えると手数は多いに越した事は無い。


 川の上に花火のような炎を咲かせながら、リズ達の帰りを待った。

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