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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第154話 あそこのタンメンを食べた夜にトイレに行くと、熱いです……

 お腹が膨れたので、レイの馬の世話の手伝いに向かう。非常に恐縮されたが、腹ごなしと言う事で許して貰う。

 顔を撫でたりはしていたが、直接体を触れた事は無い。恐々と後脚を触ろうとすると、ふっと移動して避けられた。


「あまり恐々としますと、馬も怯えます。堂々とお触り下さい」


 レイが様子を見たのか、声をかけてくれる。ふぅと息を吐き、緊張を解く。何でも無い様子で再度後脚に触れると、今度は逃げ無い。

 触れてみて分かったが、凄い筋肉だ。太くしなやかで、弾力に富む。これを延々マッサージしていたのか?どんなスタミナなんだと唖然とした。

 筋に沿って、手の平で押し込んでいく。ちょっと気持ち良さそうに眼を細める仕草が可愛い。気づくと夢中になって、馬の反応を追っていた。

 20分程も押していると、腕の感覚が無くなってきた。固い、これ。


「そろそろ出発です。ご用意を。馬も喜んでおります」


 レイがそう言った途端、馬が振り向き、顔を舐めてくる。あぁ、可愛いなこの子。顔を撫でてから、水魔術でお湯を生み顔を洗う。ごめん、ちょっと臭い。

 端切れで顔を拭いながら馬車に向かうと、全員乗車済みだった。調査団の馬車も準備中で皆続々と乗り込んでいる。


「では、出発します」


 馬をつなぎ、各所の点検も終わったレイが軽やかに御者台に昇り、出発の声をかけてくる。

 発車した馬車は順調に進みだす。ここからは順調だった。ほとんどアクシデントは起きなかった。休憩も一度挟んだ。これも白湯を飲んで御者の体を温める程度の休憩だ。


 ちなみにほとんどと言ったのは、1度だけ倒木を発見した為だ。これも早期に発見した為、大事は無かった。「即時」「止まれ」の旗で馬車を止める。

 そこからは重機ドルが発進し、あっさり横に寄せ、無事発車出来た。と言うか、本当に意味が分からない。私も『剛力』が上がればああなるのか?


 そんな感じで、本日の野営地はもう少しとの事だった。


 相変わらず、トランプ人気は絶好調だ。人数的に余りが出るのが飢餓感を絶妙に煽るらしく、飽きずに延々遊んでいる。

 ティアナとチャットはチェスがまともに打てるようになった。1回覚えると、研究者の性なのか、戦術を延々と考えている。長考が続いてティアナが苛々する状況だ。


 私は引き続き、魔術の訓練中だ。土なら問題無いだろうと、腕時計で計りながらチクチクと森の木々の合間を狙って撃ち続けている。

 風と水が一旦2.00まで上がったので、土か火をと思ったが、林で火が引火した場合を考えると怖くて撃てない。

 と言うか、世の中の火魔術を使う魔術士はどうやって訓練しているんだ?指針が分からない。川とかに向かって撃っているんだろうか?


 そんな感じで、時間を潰していると、速度が緩やかになって来るのを感じた。

 外はもう夕焼けで真っ赤に染まっている。太陽も大分沈みかけている。晩ご飯の狩りは難しいだろう。


 川に面した大きな空き地に所々、過去の野営の跡が見える。ゆっくりと林沿いに大きく回り、馬車が止まる。


 早速皆で馬車を降り、採取と薪集めに走る。狩りに関しては予定通り無しで燻製か塩漬け肉を使う事になった。今日の料理当番は、久々にドルだ。

 皆が、駆け回り、そこそこの野草が集まった。ただかなり暗くなっていた為、見え辛く何を採って来たかは本人しか分からない。『認識』先生で確認するのも、毎回皆まともな物を採って来るので面倒くさくなってきた。今回は無しで良いや。


 焚火も有る程度の間隔を空けて、3つ大きめのを焚いている。調査団側の鍋にも熱湯を注ぐ。調理時間を短縮しないと、真っ暗になる。


 ドルが塩漬け肉を刻み、スープのような物を作っている。前回も無難に普通な物を作っていたので安心だろうと思う。

 フィアは明確な外れを引く時が有る。リズも偶にやらかす。逆に上手いのは、ロットだろう。野営の経験が豊富で、料理も作り慣れている。

 次点はチャットとティアナかな。チャットも野営に慣れているし、研究者的考え方なのか、きっちりと毎回同じような味を出す。

 ティアナは美味しい物をある程度食べ慣れている所為か、それをベースに作るので、自然と美味しい物になる。大きな外れも無い。ロッサはまだ担当に当たっていない。


 ドルが煮込んでいる鍋が焚火に照らされ、浮かび上がって見えていた。その幻想的な光景に、3D系のリアルなゲームの中みたいだなと思った。その瞬間、どっちがリアルなんだかと苦笑が浮かんだ。

 ふと、風に乗った香りに鼻がジンと痛んだ。え……?ドルに何を作ったんだと聞こうとしたら、完成したとドルが叫ぶ。強制的にカップが回収されて行き、何かが注がれる。

 食事の挨拶を終え、カップに鼻を近付けると、独特の揮発性の刺激を感じる。あるぇ?これ、どこかで感じた事が有る。そう思いながら、一口含む……。


「ぎゃー。辛い、何これ超辛い。ちょっとドル!!これ、何よ!!」


 フィアが叫ぶが、同感だ。口に含んだ瞬間、異常な唐辛子感を感じる。お昼に会社の同僚と良く行った激辛タンメンの店を思い出した。

 私が頼むのは通常だったが、それでも十分辛い。はふはふ言いながら、水を飲んでは余計に舌を痛めていた。同僚は唐辛子数十倍を平気で食べる。

 ある日何を思ったのか本当に記憶が無いのだが、一口味見させてもらった。口に含んだ瞬間の痛みと、スープを飲んだのに、舌の上がじゃりじゃりすると言う異常体験をした。


 あれだ、あれに近い……。はっと気付き、ティアナのカップを見ると、スープはほとんど入っておらず、具材がほとんどだった。視線に気付いたのか申し訳無さそうに微笑まれた。常習犯か!!


 フィアが詰め寄って話している内容を確認すると、どうもドルが大量の唐辛子を見つけたらしい。寒い時に体を温めると言う事で、大量に刻んで放り込んだとの事だ。

 本人は唐辛子に耐性が有るらしく、顔色も変えずに食べている。だが、他の全員、厳密にはティアナを除くが、ヒーヒー言いながら食べている。

 救われるのは、塩漬け肉の塩分と旨味が入っているので、辛く無ければ普通のスープと言う事だろうか。

 覚悟を決めて、必死で食す……。食材を無駄に出来ない。でも、やっぱりカップの底の方は、じゃりじゃりしていた。

 これ、後で下痢になったらどうしよう。お尻熱いよな?前のタンメンの時は色んな所がひりひりした。


 ドルとティアナを除く皆が、げっそりしながら、食事の時間が終わる。今後、ドルは唐辛子禁止だ。満場一致でそう決まった。ドルの意見?この件に関しては聞きません。個人の嗜好より食材の方が大事だ。


 そんな感じで食事の時間が終わり、まったりした雰囲気が辺りを包む。丁度良いと、トイレ用の衝立を使う人間はいないか確認して行く。誰もいない。

 調査団の人間に川側への移動禁止を言い渡し、川に向かう。怪訝な顔はされたがそこは気にしない。丁度石が堆積している川原だったので、衝立を石で固定する。

 内側の石を均し、薄めの石板を生み、バランスを調整する。石板の模様は暗すぎて分からない。御影石をイメージしたので、黒地に砂嵐っぽい模様の可能性が高い。明日の朝確認しよう。ちなみに訓練のお蔭か、薄手の石板程度は生めるようになった。


 馬車から樽を担いで、再度川原に向かい石板の上に設置する。樽を担いだ時点で気付いたのか、リズが木箱から手桶と石鹸、石鹸用の水切り、お酢の小瓶を持って来てくれる。


 さてと、リズの綺麗の秘密を皆に暴くとしようか。

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