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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第148話 長旅の準備なんて地味な物です

 冒険者ギルドに着くと、豪華な装備に身を包んだ男性と、軽装の男女が5人程で集まっていた。


 手を振ると、こちらに気付いたのか、豪華な男性が近付いて来る。50手前程度なのかな?


「初めまして、男爵様。今回この調査団を率います、ペルスと申します」


 目礼で挨拶をしてくる。


「初めまして、ペルスさん。アキヒロです。今回はよろしくお願いします」


 そう答えて、握手を交わす。

 冒険者ギルドには、もう指名依頼を出してくれたようだ。先にそちらを処理すると言う事で、調査団の皆には会議室に向かってもらった。


「指名依頼の処理をお願いしたいのですが」


 受付嬢にカードを渡し、手続きをお願いする。

 少し処理をした後、ノーウェからの依頼票を差し出してくる。


 契約内容としては、調査団の護衛が任務だ。報酬は日当1万ワール。達成数はギルドが張り込んだのか参加者全員に1日3を割り振るようだ。

 確かに報酬が1万ではどう考えても割に合わない。ノーウェも良く調整してくれた。


 その間の報酬に関してだが、別に調査団からそれぞれに14万ワールを日当扱いで提示されている。

 これは一般に護衛が優秀だった際に、依頼者が冒険者に贈るご祝儀みたいなものだ。後の縁も考えて慣習的に行われている。

 これには税金がかからない。個人間の贈答扱いだからだ。


 で、今回の日当だが、ノーウェに1日辺りの収入を答えたら、この形になった。この資金の元も民の血税なのだが、任務上の正当な権利なので横領では無い。

 護衛任務に関しては、きちんと対応する。今後の護衛任務の訓練の為にもだ。


 依頼を受理し、職員に誘導され会議室に向かう。一番豪華な会議室だ。ここを使うのも頻繁になって来たなと益体も無い事を考える。

 職員がノックすると、全員が起立で待っていた。座って待っていれば良いのにと思ったが、口には出さない。


「寄親である子爵様の部下の方々です。お気楽になさってください」


 職員がお茶を用意する間に、皆に話しかけ席に着かせる。


「すみません。恐縮です」


 ペルスが最後に腰を落ち着かせる。皆でお茶を飲みながら、状況を確認して行く。


 調査団が到着したのは先程との事。団員の構成内訳は政務財務系が5名、設計建築系が5名、護衛役の偽装兵が10名、コック兼雑務担当が2名、御者が2名の24人が馬車2台で来ている。

 ペルスは政務財務系の役職との事で今回の団長を任されたらしい。この5名はそれぞれの役割のリーダーが集まっている。


 馬車は大きさは私達の馬車と同じ位だ。旧式を改造し、サスペンションを付けている為、速度は私達の馬車程出せないが、普通の馬車よりは速度を出しても馬の負担にはならない。


 子爵の官僚団が調査している、詳細な地図を確認しながら、経路を決めて行く。

 まず町の予定地までだが、普通の定期馬車なら7日だが、向こうの馬車の速度に合わせて4日程だ。町の予定地で2、3日調査を行い、海側に南下する。ここの道は無くは無いが悪路の為5日程かかる。

 そこでも2、3日の調査を行い、10日程で村まで戻って来る。最長25日程度の旅だ。


 こちらは携帯食や保存食は約2か月分を用意している。向こうも調査機材以外は自分達の食料と馬の餌だ。水は私が生めるし、偽装兵の1人は水魔術を使える魔術士だ。


 調査内容に関して詳細を詰めて行く。基本的には町が設計通りに構築されているかの確認と、歓楽街の場所の指定、そして海の村の場所指定だ。

 細々とした連絡手段や意思疎通のやり方などを取り決め、最後には握手で別れた。レイに関してはペルスから説明するとの事。調査団員は屋敷と宿で今日は宿泊するとの事だ。

 明日は朝一で用意して、青空亭前で合流、出発と言う流れになった。


「では、失礼致します」


 ペルス達がきびきびとした動きで、会議室を後にする。日程が決まったので、開発を頼んでいる木工屋と鍛冶屋に寄って開発期間の猶予を伝える。


 宿に戻ると、皆真剣な顔でババ抜きをしていた。今まで話し合いをしていた雰囲気とのあまりの違いで笑ってしまった。

 調査団の規模と話し合いの内容を伝える。仕事の話をし始めるときちんと真剣になる。オンオフがきっちり分けられるなら、何も言わない。


「食料は足りるけど、生鮮食品、特に野菜は不足するわね」


 ティアナが思案顔で手を上げる。


「そこは、野草の採取でカバーするしか無いかな?今の時期ならまだいける。冬になったら無理だけど」


 そう言うと、納得したのか手を降ろす。


「急病人等の問題が発生した場合はどうしますか?」


 ロッサがピっと手を挙げて聞いて来る。


「馬車の人員を分けて、戻るしかないかな。1台減っても何とかなるけど、2台目以降は失敗と諦めて帰るしかない。そこは前提にしよう。無理はしない」


 ロッサも手を降ろす。


 他にも数点質問が出て、皆で協議をしていく。そうなると足りない機材や食料も出て来るので、買い込みに行く事になった。

 塩漬け野菜がまず足りないので、樽で買って持って行こう、とかそう言う話だ。最悪調査団の食料を分けてもらう事も出来るが、それは無しだ。自分達で完結出来るように用意する。

 個別に買い物を振り分けて、一旦解散とした。明日は食事を取り、青空亭前で集合と言う話でまとめた。


 リズと私も買い込む物を買い込み、家に戻る。布系がちょっと多目に必要になりそうだったので追加を買ったりだ。


 家に戻ると、アストが道具の手入れを終えて、リビングで寛いでいた。


「結局旅程は25日前後です」


 帰宅の挨拶をして、アストとティーシアに旅の予定を報告する。その間の石鹸等に関してあらゆる案件はアスト達に任せた、今後、担って行くのはアストやアテン達だ。

 ティーシアが娘の初めての長旅に少し心配そうだが、本人は気楽な感じだ。


 そんな感じで食事を楽しみ、お風呂の準備をする。

 私は合間に納屋で石鹸の対応に追われる。4号にこの段階で香油を入れてどの程度違いが出るかテストもしてみよう。


 皆がお風呂を終え、最後に浸かる。正直日本でこんな長旅はした事が無い。用意なんて考えれば考える程必要な物は増えて行く。日本の旅なんて楽な物だった。

 色々不安や疑心暗鬼は有るが、やらないといけない事なので、諦めてやる。日本の仕事でもそんな物だった。


 樽から上がり、洗浄し、干して置く。


 部屋では、リズが思案顔でベッドに転がっていた。


「悩み事?」


「そう言う訳じゃないけど。ただ、長い旅行なんて初めてだから何が起こるか分からない。それがちょっと不安かな?」


 そんな事を相談しながら、不安を一つ一つ丁寧に潰して行く。

 リズが心配しないように、旅が出来たら良いな。その為には私が頑張るしかないか。


 そう思いながら夜も更けて行く。明日も有ると言う事で少し早めにベッドに潜り込む。微かな虫の声に秋の残滓を感じながら、冬の調査旅行に思いを巡らせた。

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