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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第147話 ブラックジャックをする時はディーラー役を選びます、楽ですから

 食堂は少し早かったか、空いていた。昼の基本は日替わりなので、人数分を店主にお願いする。

 店主が、ガタガタとテーブルを移動してくれて、全員が座れる席が出来た。

 黙っていてもやってくれるここの店主のサービス精神が凄いなと。

 日本では当たり前と感じてしまうが、中々自発的に出来る物では無い事を実践している店主を見ていると、サービスの基礎はお客様に対する思いなんだなと改めて感じた。


 席に座り、先程のクッションの話で盛り上がっている。正直私自身、定期馬車に乗っている時は腰と尻の痛みで立てなくなったりもしていた。

 新しい馬車のサスペンションのお蔭で楽になったが、その上まだ楽にすると言う思考が無い。また、同じ綿が詰まった布団も、寝具と言う固定観念から抜ける事が出来ない。

 滑稽な気はしたが、日本人の常識だって外国人から見たら滑稽な物だろう。


 固定観念と言う物は、常識と言う高い壁が守っている。その先にこそ、ブルーオーシャンが有ると確信した。生活を豊かにするものは価格さえ適正で有れば売れる。


 そんな事を考えながら、ソーセージとスープを楽しむ。


 部屋に戻ると、リズにトランプを渡し、皆に説明をお願いした。私は、焼き印を入れる前の試しと言う事で、サイコロに数字をインクで書いていく。

 裏紙を用意して、転がして出た数字の数を確認して行く。試行数が多く無ければ分からないが、木の材質やサイコロの中の状況により偏りは生まれるだろうなとは考える。

 どうも横から見ていると意味不明な行為のようで、リズが近付いて来る。


「ヒロ、何をしているの?」


「新しい玩具がきちんと働くか、試しているよ」


 玩具と言った途端、リズの目が輝く。


「いや、そんなに良い物じゃ無いよ。玩具の材料みたいなものだから」


 そう言いながら、転がして出た目をメモに加えて行く。見ていて飽きたのか、リズがトランプの輪に戻る。

 投げ方や持つ目をバラバラに試行して行く。まぁ100や200では誤差の範疇だが傾向は出てきた。微かだが、偏る目が有る。日本だとイカサマ用のサイコロだなと苦笑する。

 そのまま、合計3つ程に数字を書いて試行する。残りのサイコロは焼き印で綺麗に仕上げるので家に置いておけば良い。3つ有れば、トランプと合わせて色々遊べる。


 皆はババ抜きを始めていた。ジョーカーが蛇蝎のように嫌われているのを見て、ゲームによって役割が変わるジョーカーの扱いに苦笑が浮かぶ。

 まだ、高度な情報戦は無い。ポーカーフェイスも出来ないので誰がババを持っているかはすぐに分かる。

 あぁ、ティアナはいち早く本質を理解したのか、すぐに表情を変えなくなった。流石貴族の教育だなとは思った。次に気付いたのは、ロットとチャットかな。商家と研究者か……。


 先程、木工屋についででお願いしていた物を入れた大きめの巾着袋を取り出す。

 振るとじゃらじゃら音がする。薄い木切れをリバーシの型で抜いてくれとお願いしていたのだが、かなりの数を抜いてくれている。

 まぁ、チップの代わりだ。


「さて、別のゲームも試してみる?」


 そう言うと、ブラックジャックの説明を始める。リズの時もそうだったが、説明を聞いて理解すると言う事に、この世界の人間は素直で早い。

 そうしなければ命がかかった世界では生き残れないからだろうが。


 ディーラー役は私がやる事にした。3人相手でチップは20枚を渡し、無くなった人間は交代と言う流れだ。

 大まかなルールは通常のブラックジャックと同じだが、配当はブラックジャックで勝てば3倍、普通に勝てば2倍にした。その代り、ディーラーと同等の数字、役の場合はディーラーの勝ちにした。

 若干射幸心を煽る形だが、勝負は早く着く。


 まずは、リズとフィアとロットが相手となった。まずは賭け金を置いてもらう。

 それぞれに2枚を配り、私も2枚取り1枚を面にめくりアップカードを露わにする。3人が自分の札を見て、それぞれ悩み始める。場に出たカードはハートのエース。まぁ、良いカードが出た。

 3人の求める札を配り、全員がスタンドした段階で、私が札を引く。Aと6だったので1枚めくり2、19だ。ここでスタンド。


「じゃあ、それぞれ場に出して確認しよう」


 リズが20、フィアとロットがバストだ。リズにチップを足して、他は回収する。リズがにんまりしている。

 このまま全員が一巡りする程度に遊んだ。それぞれ考え方が有るのだろうが、白熱しているし、悩んでいる。


 しかし、ディーラー役は楽な物だ。何故か?カジノのブラックジャックの台を見れば分かるが、「ディーラーは17以上になるまでカードを引きます」と書いている。

 ディーラーの役は17から21、ブラックジャックか。後はバストしか無い。状況なんて考え無い。ただ機械のようにカードを引くだけだ。 


 ブラックジャックと言えば、21に近づけないといけないと固定観念が有るかもしれないが正しくない。

 バストをしない。ただそれだけが重要だ。


 ディーラーは機械と一緒なので、17以上の役かバストしか無い。なので自分がバストする以外はディーラーのバストを待った方が良い。

 例えば始めの手札が12なんて一番悩むだろう。だが、悩む必要は無い。絵札と言う10が出る確率が高いゲームだ。保持してディーラーのバストに期待した方が精神衛生上良い。


 特に通常のブラックジャックでは数字か役が同等で有ればプッシュになって、賭け金は返って来る。実はアップカードが有る分、ディーラーが不利なゲームなのだ。

 ただ、バストで自爆するのが、このゲームの妙なのだろう。強い役を作りたいと言う思い。人間の欲は中々制御出来ないものだ。


 しかし、配ったチップが凄い勢いで戻って来る。千、万、10万のチップで良いかと思っていたが、10万のチップ扱いだと、この一巡程度で儲けが900万ワールを超えた。

 実際に娯楽室に置く時はディーラーに適当にあしらって、別の設備に誘導させないと、危険だ。


 その中でも、やはりティアナが長く席に残っている。絡繰りに気づいたのか手堅くバストしないように待っている。大きくは増えないがじりじりとチップを増やしている。

 やはりこの子、頭が柔らかい。流石斥候だな。後は意外にもロッサが同じように待ち気味で残っている。これはバストを怖がる気持ちが良い意味で出ているのだろう。


 後ろで待っている仲間は皆の手札を覗き込み、ひそひそとお互い研究している。それを見てちょっと笑ってしまった。向上心は良いが、ただの娯楽なんだが。


「ちょっとしたゲームなんだから、あまり真剣にならず程々にね?」


 そう言うと、皆頷くが、微妙に真剣さが見れない。うーん。娯楽の楽しさを知ってしまうのは禁断の果実なのか?


 そう思っていると、扉がノックされた。応答を確認すると店主だ。扉を開けると店主がノーウェの調査団の先触れが冒険者ギルドに到着したと伝えてきたそうだ。


 さて、お仕事の時間だ。皆にはババ抜きでもやって時間を潰しておくようお願いして、マントを羽織る。さあ、冒険者ギルドに向かいますか。

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