第12話 ドイツのソーセージは世界一ぃぃぃ。ドイツじゃないけど。
鶏の鳴き声が響く中、夜明けと共に目が覚める。時計を見ると5時半を過ぎた辺りだった。
日に日に健康体になっている気がする。
あぁ、そうそう。初めて民家のトイレを体験したけど、腰かけ式だった。
正直メタボの身としては、和式のようにしゃがみ込むトイレはお腹がつかえて後ろにひっくり返る。
流石に陶器ではなく、石をくり抜き磨いたものの底に穴が開いておりそこから汲み取り桶に落ちるタイプ。
腰かけ部分は木製のU字の板が敷かれていた。
トイレットペーパーは無いが、手桶の水で洗浄し布で拭く形で、洗濯は各員で行うとの事だった。
手桶の水はその都度汲みに行かなければならない。
利用後は麦藁を穴から落としておく。後の発酵を促すのと臭いが上がるのを防ぐ為らしい。
これを開発した人には本当に感謝したい。
後、洗濯に関してだがムクロジの実を使っていた。
昨日の胡椒もそうなのだが、植生が全く分からない。
ティーシアさんに話を聞いてみると南の森で両方とも採取出来るとの事。昨日のハーブも南の森産らしい。
詳しくは植物を司る神の加護により多様な植生が育まれているとの事。
リアルに神が影響を及ぼしているんだなと。異世界恐るべし。
後、絶対にガーデニングゲーム気分なんだろうなと思った。
と言う話を朝ご飯を食べながら聞いてみた。
朝ご飯はライ麦パン、と言うかロッゲンブロートだろと言う勢いでライ麦だった。
若干酸味が強かった為、ラードを塗って食す。
後はヴァイスヴルストとキャベツの塩漬け。
燻製したソーセージは売り物らしい。またザワークラウトじゃないのは香辛料が含まれていない為だ。
探せばキャラウェイやディルも南の森に有りそうだし、今度探してみるか。
生えているのは見た事が無いが、スマホの百科事典で調べれば分かるだろう。
何と言うか、朝からドイツと言う感じのメニューだった。
後、仕事を探したい旨を聞いてみると、有りました。冒険者ギルド。流石異世界。
ただモンスターハンター一辺倒な感じではなく、ハロワ寄りな何でも屋稼業のようではあった。
と言うのもやっぱり中世っぽく、各職能に応じてギルドが存在しており、その隙間を埋めるものらしい。
例えば薬に関しては薬師ギルドが存在しており、製薬・販売を取り仕切っている。
ただ、材料の採取に関しては冒険者ギルドに外注しているとの事。
大規模商隊や貴人の護衛には傭兵ギルドが付くが、小規模商隊や個人の護衛は冒険者ギルドに発注するらしい。
後モンスターは存在するとの事。またその素材を使った諸々が有る為、討伐依頼も受け付けている。
「さて、取り敢えずギルドが開くまで時間も有るし、TODOリストでも作るか」
職業柄か、リストを作らないと安心出来ない。
「まずは居候状態解消の為、宿に泊まれるだけの資金の確保か」
[ ]貨幣価値の確認
[ ]宿の料金の確認
[ ]各依頼の難度と報酬額の確認
「『獲得』先生の有効利用の為、討伐依頼は積極的に受けたいな。強くないとリザティアを守れない」
[ ]討伐依頼を優先して受ける。
[ ]『獲得』によるスキル譲渡の効率化を図る。
「『認識』先生がいるので採取に関してはアドバンテージが有るか。採取も積極的に受けよう」
[ ]採取依頼の確認
[ ]採取対象の探索方法の確認
[ ]『認識』による採取の効率化を図る。
取り敢えず、本日の目標はこの8点としよう。
スマホのTODOリストアプリに登録していると、玄関の方で気配を感じる。
アストさんが狩りに出かけるのかな。お見送りに行こう。
「アストさん、出かけられるんですか?」
「あぁ。罠の仕掛けと小物の狩猟を予定している。リザティアもいるので心配はいらない」
「腰は大丈夫ですか?」
「昨日の段階でほぼ完治している。もう動いても問題は無い」
アストが微笑みながら荷物を担ぎ、手を振ってくる。
「アキヒロさん、行ってきます。あまり無茶はなさらないで下さい」
リザティアが心配そうな顔でこちらを見て来る。
「取り敢えずまずは様子見だけだし。心配はいらないよ」
私も微笑みを返しながら、手を振る。
出て行く2人を見送り、時計を見ると7時半だった。
そろそろギルドが開く時間の為、用意を始める。
服装に関しては、リザティアの兄の物を直して貸してもらえる事になった。
直したのはお腹周りとズボンの裾上げだったのが切ないが。
スーツに関しては奇跡的に返り血を浴びていなかった。
ただ、ワイシャツの袖口には飛沫が散っていたので一生懸命洗濯した。
さて、本日も張り切って頑張ろうと。