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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第143話 エンターテインメントと聞くと何故か毎回違和感が有ります

 何時もの関係者に目礼し、槍と鉈を置き、跪く。

 日頃の感謝と、今後の男爵領の運営に関しての幸いと、新設備に関する新しい業態の是非を祈った。


 その瞬間、


 <告。深刻なエラーが発生しました。不明なシステムが接続されました。カウンターシステムの>


 『識者』先生が前と同じく慌てた口調で告げたと思った瞬間、ブツッと言う音と共に沈黙する。


「よぉ。初めましてやな。お客さん。わてはレタニアステ。商業、司ってんねん」


 燕尾服にシルクハットを被った布袋さんみたいな男性が目前に浮いていた。


「は、初めまして。アキヒロと申します」


 福々しく、ぽよんとした顔と体形。しかも何故関西弁?そう思うと若干引き気味になった。


「ん?あぁ、この口調かいな。あれや。あんさんとこの神さん、おるやろ?あんお方と、わて知り合いやねん」


「神様……ですか?」


 地球の神様に知り合いはいない。どの神様だ?


「偶に管理者通してメッセージのやり取りしとんねん。なんや、展望塔の上で祀られてる言うてはったけど?口調は話しとったらうつってもうたんよ」


 心当たりが有った!!あの神様か!!しかも管理者を通してると言う事はそこで検閲、警告を出しているのか。


「心当たりが有るのですが、えっと、商売の神様なんでしょうか?」


 福々しく笑いながら、レタニアステが答える。


「そりゃそうやがな。地球で金回す規模大きゅうするからって、先物や相場っちゅう概念を生み出したんやで?その神さんがその場で祀られんで、どこで祀られんねん」


 あぁ、米の先物取引の事か……。世界に先駆けて日本で始まった、先物取引。その概念や手法は現在でも、株式相場や商品先物相場に引き継がれている。

 えぇぇぇぇ。幸運の神様だと思っていた。商業系なの!?


「いやぁ。あないにえげつない概念、よう思いつくわ。確かに、何が力持っとるかによる話やけど、あの時代、あの場所、米中心の経済やからこそ出来たんちゃうかな?」


 ふぉふぉふぉと笑う。


「で?今日はどないしたん?何や商売の話で悩んでる言うて聞いたから、わてが出てきたけど」


「いえ、今後領地で設備を作る際に、一部に賭け事を導入しようと考えています。ただ、この余裕の無い世界でその様な行為が認められるのか。先にお伺いに参りました」


 レタニアステが腹を抱えて笑い出す。


「あんさんが考えるんやから、競馬やカジノ辺りやろ?かまへん、かまへん。大いにやったらええやん」


 浮かべた涙を拭きながら続ける。


「この世界は余裕があらへん。あんさんも余裕の無い人間がどないな生活するんかは知ってるやろ?生活の潤いっちゅうのは、人生の潤滑や」


「しかし、確率により貧富を生み出します。余裕の無い人間を追い込む事になるかもしれません」


「そう言うてる時点でセーフティネットも考えてるやん。どうせあれやろ?ケツの毛まで引っこ抜くようなん、やるつもりあらへんやろ?」


 そんな阿漕な事は出来ない。非日常の世界を楽しんでもらう程度の話だ。


「はい」


「なら、わてがどうこう言う話やあらへんわ。あんさんが言うてんのは賭けやのうて、エンターテインメントやん。そんなんに目くじら立てられへんわ」


 再度大きく笑い出す。


「人が楽し思わな、生活が豊かや言わんわ。ひーひー言いながら生きても、あかんあかん。わてかて毎日、出し抜こうて考えてる相手の対応ばっかりや」


 若干沈んだ顔をする。


「禍福は言うけど、悪言う概念はこの世界言うても根絶でけへん。それでも、生きたい思て必死で生きとる皆の為や。必死で頑張るわな。その世界に楽しみを持ち込も思ってくれるんやろ?そないに嬉しい事は無いわ」


 再び笑みを浮かべる。


「ええやん、やり、やり。大いに楽しませてやったらええやん。それであんさんハッピー、皆ハッピーや。こないにええ話あらへんわ」


「はい。楽しんでもらって、また男爵領に訪れてもらえたらと考えています」


「その思いが商売の基本のきや。それがのうなるから、悪言うんは生まれるんや。まぁ、同じ様な事やってヤクザな商売やる言うんやったら、首絞めたるさかい、気にせんとやりぃな」


 その言葉に思わず吹いてしまった。


「やっとわろうたか。いやぁ、なんや、本場でも笑いとるっちゅうのに命かけてるんやろ?芸人言うたか?まぁ、そうやって笑えるんやったら、皆笑わせられるよって。思う様に頑張ったらええがな」


 その言葉に肩の力が抜けた。


「良くご存じですね。しかし、はい。私の民は私が笑顔にします」


「その意気や。ほな話は以上かいな?」


「そうですね。賭け……いや、総合エンターテインメントですか?新しい業態の許可も頂けましたし。大丈夫です」


「あんじょうきばりや。あんさんはお客さんや。それでも、体張ってこの世界の中で、ええ世界を作ろ思てる。その思いがわてらには嬉しいんや。遍く愛や言うたかて、嬉しいもんは嬉しさかいな」


 温かい思いが心に生まれる。そりゃ、全てに愛を注いでいても、望ましいと考える事はきっと有る。そんな思いに答えられているなら、良かった。


「まぁ、でも、無理は大概にしときや?あんさんが壊れたら全部パーやで?そこはフォローでけんさかい、気ぃつけや」


「はい、気を付けます」


 そう言うと、レタニアステが背筋を伸ばす。


「お客さんやのに、わざわざ新しい商売の挨拶まで来てくれておおきにな。ほな、さいなら」


 挨拶が終わった瞬間レタニアステは消え、世界が動き出す。


 瞬間ブツッと言う音が改めて頭の中で鳴る。


 <告。再接続を確認しました。深刻なエラーは復旧しました。不明なシステムの接続ログの確認を行います。…………確認完了。不明なシステムは接続されていません。正常な動作が確認されました。>


 いつもの『識者』先生。


 しかし『識者』先生のプロテクトを抜くタイミングが皆、微妙にばらばらなんだが、何か法則とか有るのかな?


 <告。『祈祷』が2.00を超過しました。>


 えーと。うん。どうしよう。上がってもあんまり意味無い気がする。普通は喜ぶんだろうけど、ちょっと素直に喜べない。これ以上頻繁に明瞭に話す状況って何だろう。それはそれで気になるか。


 そんな感じで、『識者』先生と福々しい姿を思いながら、教会を後にした。

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