第141話 学生の頃は集まるとトランプで遊んでいました
夕食を終え、皆のお風呂を順番に処理して行く。
その合間も石鹸3号の攪拌作業と様子見だ。ちなみに、ティーシア経由で村長と村の衛生管理の為に手洗い石鹸の販売が出来ないか交渉中だ。
衛生管理の概念は明確には無いが、手を洗えば汚れが落ちる、病気になり難いと言う事は体感的に理解している。
そこをもう一歩進めたいのだが、理解させるのは中々難しい。なので、石鹸で綺麗になっている本人が交渉役に立つ事で話を進められないか検討中だ。
まぁ、焦る必要は無い。収入源が一つ増えればラッキー程度の規模の話だ。
そんな事を考えていると、リズが上がったと呼びに来たので、私も樽に浸かる。
久々に日本に帰ったが、違和感は有った物の普通に生活は出来てしまった。順応が早いのだろうか。この世界でも何となく生きてこれたしな。
それに、魔術の主軸が両方2.00まで上がったのは嬉しい。風はちょっと怖いが、水は便利なので是非どんどん上げたい。あぁ、本末転倒だな。
そんな事を考えながら、桶を洗い、立て掛ける。
部屋に戻ると、リズがくてんとベッドで横たわって、にへにへしていた。
「何か、喜ばしい事が有ったの?」
「んー?いや。昨日、気持ち良かったなって……」
あぁ、聞くだけ無駄だった。まぁ、本人が納得しているなら、それで良いか。
「自分で完結して良いの?」
「昨日は、なんだか、全然我慢出来なかったよ?でも、ヒロも凄い反応してくれて、胸の奥がきゅぅってした」
聞くんじゃ無かった。自分の反応なんて人から聞くのは微妙だ。まぁ、昨日はお酒が入ったからしょうがなかったのだろう。
「もし良かったら、玩具作ったけど、フィア達の所に遊びに行く?」
「あ、駄目だよ。フィア達ならこの時間」
要は、日が暮れると、盛っているらしい。ロットも25歳か……。まだ全然大丈夫な歳だしなぁ。フィアも普通なら思春期真っただ中だ。
もう婚約者だ。何をしても特に文句も無い。まぁ、良いか。機会は幾らでも有る。
リズとちょっとテストでもするか。
「じゃあ、リズ。新しい遊びでもする?」
「新しい遊び?」
ランダムに半分を抜いて、大富豪でも試してみよう。階段無しの革命有りだ。オーソドックスな形なのかな?ハウスルールは一切無くした。
「こんな感じで、2が一番強くて、その次に1で13、12って続くよ。3が一番弱いの」
そう言いながら、一人大富豪でゲームの説明をしていく。
「うわぁ、何これ……。木札で遊べるんだね。うわぁ……」
まぁ、一戦やってみるかと、試してみる。
手を抜き気味にやってみたが、圧勝してしまった。どうも札がこっちに偏った。
「うーん。うん。大体遊び方が分かったよ」
そう言うので、また混ぜ直して、半分の山を脇に置く。
「じゃあ、2戦目だね」
素直に大きな札を出して行くので、コントロールがしやすい。途中まではリズ優勢だが、最終的に勝ってしまう。
「はい。出せないね?私はこれで最後。私の勝ちだよ」
「あぁぁぁ。悔しい。途中まで勝っていたのに……。ずるい。何かずるい」
うん。思ったより嵌っている。
「面白い?これ」
「うん!!初めて見たけど、簡単だし面白い。もっとやりたい!!」
ふむ。リズでも面白いか……。と言う事は一般受けはしそうだな。貴族向けはきちんと絵を書いて美術品風に。庶民向けは焼き印で簡易なトランプにするか。
「他にも遊び方が有るけど、どうする?」
「え!?他にも有るの?でも、これだけだよね?」
カードの山を指さす。
「まぁ、色々と遊べるよ」
そう言いながら、神経衰弱やポーカー、ババ抜き、ページワン、ブラックジャック等色々ルールを教えながら遊んで行く。
「楽しい!!楽しいよ!!」
凄いキラキラした目で言われる。まぁ、娯楽の無い世界だ。トランプ一つでも、このはしゃぎっぷりだ。
「これ売ってたら買う?」
「買うよ!」
「幾らくらいだと思った?」
「うーん……。4万……いや、5万ワールくらいかな。これだけ面白いし、色々出来るから。高そうな感じがするよ」
一瞬、吹き出しそうになった。木札と焼き印で量産したら、原価は加工費込みでも千も行かない。
5万って農家の年収の20分の1かぁと思った。でも、日本に置き換えて食費など諸経費を抜いた金額でみると、最新ゲーム機とゲーム数本分の値段だ。
娯楽の無い世界なら、インパクトは有るか……。それにこの世界、汎用性や多様性が有る道具の値段が異様に高い。
商家なら、買えない事も無い価格帯では有るか……。絵付きなのは高級路線で貴族や豪商向けで考える。
「そっかぁ。リズなら買うかな?」
「今の収入だと、買うかな。皆で遊べるのが良い。一人持っていれば良いだけだし」
その辺りはリバーシと同じだ。持っている人間が場の長になれる。まぁ、賭け事を始めれば一気に売り上げも上がりそうだ。やっぱり娯楽室はカジノ路線かな。
「分かった。ありがとう」
「え?もう、止めちゃうの?」
少し涙目をうるうるさせながら聞いて来る。余程楽しかったらしい。頭を使う遊びなんて無いし、そんな物か。
「どれで遊びたい?」
「えーと。大富豪!!」
おめでとう。大富豪。君はこの世界でも大人気だよ。高校生の頃、阿呆な程皆で遊んでいたなと思い出した。
そんな感じでトランプで遊び続けた。流石に2人でトランプはきついのだが、もう何か火が付いたかのように遊びたがる。
ゲーム機を渡した時の甥の熱狂ぶりと、妹に取り上げられるまでの熱中ぶりを思い出した。
そんな感じで、リズにせがまれるまま色々と遊びながら、夜は更けて行った。