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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第135話 引退後も元気に楽しんでいる方を見ると自分もそうなりたいと思います

 陣地に戻ると、フィアとロットは先に帰って来ていた。

 リズに確認すると、特に他の冒険者も敵性生物の接近も無かったようだ。熊の方も、2頭共十分冷えたらしい。


 ドルを先頭に、皆で沈めていた熊を引き上げる。ロッサはリズから解体の仕方を教わっている。今まで熊の解体はした事が無いらしい。

 まぁ、普通に考えてソロで熊を倒せる人間はいない。ドルは……別枠だろう。


 その上で知識を得たいと、これまで以上に出来る事を増やしたいと言う思いは純粋に嬉しい。

 幸せに生きる未来って何だろう、か……。言ってすぐ実行出来るのは彼女の美徳なのだろう。

 先程の涙と未来への期待への笑顔が、これから先の未来に重く圧し掛かる。責任重大だな。


 核の数と品質をチャットに確認してもらっていたが、一番高かった時には及ばないにしてもそこそこ近い額にはなるとの事だ。

 まぁ、狩りに行った人数が違うのでしょうがないか。

 

 時間的には日が暮れるまでまだ余裕は有るが、荷車を押しながらだとぎりぎりになるだろう。血臭をさせながら森を歩く事になるので、狼の襲撃も心配か。

 暗くなってから活発になると言っても、獲物の臭いを嗅げば夕方だろうが襲ってくるだろう。『警戒』持ちには常時緊張してもらう事になる。私も含めてだが。


「リズ、後どれくらいかかりそう?」


「んー。後は骨周りの処理だから20分程度かな」


 まぁ、許容範囲かな。川沿いの道を開拓する形になるから何時もより遅くなると考えても、いけるか。襲撃を事前に察知して避けよう。


「ロット。川沿いに一気に抜けるけど、狼の襲撃が問題かな?察知範囲で回避出来るかな?」


「集中すれば何とかなります。ただ、頻繁に蛇行する可能性が高いので、真っ直ぐに行くメリットが薄れます」


「んー。狼の処理をする時間は無いかぁ……。勿体無いけど、襲撃が頻発するなら迎撃して置いて行くしか無いかな」


 そう言うと、少しだけフィアが嫌そうな顔をした。まぁ、獲物を無駄にするのは私も不本意だ。


「あたし、狼の処理は習いました。皮を剥ぐだけなら大丈夫です」


 ロッサがピンと手を上げながら言う。処理速度は2倍は無理でも近いか……。まぁ、誤差の範囲ではあるか。


「分かった。では、当初通り村への帰還を実行する。狼の襲撃の際は私が迎撃を担当する。斥候職の皆は周囲の警戒を密に。また川沿いと言う新しい道を進む。安全に留意して欲しい」


 そんな話をしていると、リズから処理完了を告げられた。


「皆。疲れているところを悪いけど、本日最後のお仕事だよ。出発の用意をお願い」


 熊の肉を荷車やそれぞれに背負っていく。ロッサも重い荷物を持ちたがったが、流石に鹿で懲りた。

 程々の荷物を渡すと少し不満気だったが、今回問題無かったら次は増やす約束で機嫌を直してくれた。

 周囲の点検も済ませ、忘れ物の確認もした。今回迎撃を担当するので、地図に関してはティアナにお願いした。

 『警戒』範囲が狭い分、余計な仕事を押し付ける形になるが覚えて欲しい事なので仕方無い。逆に川沿いと分かっているので、そこまで重要じゃない分経験を積むには丁度良い。


「では、出発」


 そう言うと、ロットとロッサを先頭に、全体が動き出す。

 川沿いに下る方向が風上だ。襲撃が有るとしたら、背後からの可能性が高い為、ティアナと一緒に最後尾に着く。

 皆、喋る事も無く、黙々と進む。地図上で半分程進んだ頃にロットが下がって来る。


「狼らしき対象が後方にいます。発見されたかどうかは不明です」


 前に進んでいる最中に後方に出たと言う事は見つかっている可能性も高いか。


「分かったよ。ティアナさん、確認したら教えて欲しいかな」


「分かったわ。リーダー」


 ティアナが地図をこちらに手渡し、集中しながら歩き始める。

 予想よりもペースは速い。正直、ロッサが的確に藪を切り開いているからだが、本人のスタミナが心配だ。無茶しないと良いが。


 先程の報告からかなり進んだが、特に動きは無い。


「こちらではまだ捉えられないわ」


 ティアナが告げる。ティアナの範囲だとロットより大分狭いが、狼の脚で真っ直ぐならそこまで時間はかからない。

 列の先頭に出て、ロットに確認する。先程の反応は現在は範囲外との事だった。

 先遣でこちらを確認したなら、群れを呼んでこちらに来るかな?もう少し反応が無ければ、偶々と判断しよう。

 また、引っかかったら教えて欲しいとお願いして、後方に戻る。


 地図を確認する限り、森の外周付近まで辿り着いたが襲撃は無かった。良かった偶々か。知らず知らず浮いていた、汗を拭う。


 それ以降は特に問題無く、そのまま森を抜ける。時刻は予想より大分早かった。太陽は沈みかけているがまだまだ夕方だ。ロッサの殊勲だろう。

 川沿いを歩き、馬車を発見し接近したが、レイの姿は無い。予定では野営と伝えていた。馬の世話と言っていたので放しているのだろうか。


 貰った笛を鳴らす。皆でロッサを褒めていると、馬に乗ったレイが馬車に向かって駆けてきた。


「野営と伺っておりましたが、予定変更ですか?」


「申し訳無い。予想より早く目標が消化出来たので戻って来たよ」


「いえ、お気遣いなさらず。予定変更は、常ですので」


 そう告げると、引き連れていた馬も合わせて馬車につなげて行く。

 レイ本人は馬車で寝るつもりだった為、野営の準備は無い。食事はもう済ませたそうだ。話を聞くと川魚を突いたりと本人曰くかなり楽しんでいたようだ。

 馬車の用意をしながら雑談をしていると、魔物の巣窟に単独で潜入した話等、聞かせてもらった、本当にこの人勿体無い人材だ。軍の経験も有るだろうがサバイバビリティが高すぎる。


 ドルが戦利品を馬車に運び込み、荷車を搭載し、皆で乗り込む。


「じゃあ、帰ろうか」


 そう告げると、レイが馬車を巧みに操り、半円を描き、村への道を進む。安心したのか、気付かず溜息が出ていた。


「疲れたの?」


 リズが聞いて来る。


「いや。皆が無事で安心した」


 そう言うと、皆微笑んでくれた。今日も何とか無事帰れる。そう思いながら、馬車の揺れに身を任せた。

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