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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第134話 家族の手料理は一生思い出に残ると聞きます

 ふと気づくと、ロッサが黙って静かに泣いていた。何事!?

 話を聞くと、家族の事を思い出したらしい。

 家族で食べていた食事が美味しかった事、楽しかった事。そんな食事より美味しい物を食べたと思った罪悪感。

 皆でこれからもこんなに楽しい食事が出来ると思った安堵感。


「美味しかったです……楽しかったです……家で食べたのより美味しかったです……あたし……お父さん……お母さん……」


 一度火が付いたら、止まらない。涙は滂沱と溢れる。

 フィアとリズが二人ががりで慰めている。

 あぁ、びっくりした。やっぱり、まだ子供だよ、この子。心の中の罪悪感が、ざくざくと何かを刻むのを感じる。


 それなりの時間をかけて、ロッサが泣き止んだ。これからの幸せに、期待で胸を膨らませて。


 ハプニングは有ったが、そんな盛況の中、昼ご飯は終了した。

 取り敢えず、鍋や食器を洗って片づける。焚火はまだ薪が大分残っている。


「肉が冷えるまで、スライムを狩ろう」


 そう言って、班分けを決める。私とティアナ、フィアとロットでスライムを狩る。残りのメンバーは荷物と肉の護衛だ。

 ロッサも出したいが、護衛の『警戒』持ちがリズしかいなくなる。それはちょっと怖い。

 取り敢えず同業者が近付いてきた場合は、逃げる選択で。方向だけ決めておいた。熊は良いが荷車と荷物は取られたら困る。


 ティアナの指示に従って、近場のスライムから狩って行く。しかし、こいつら、何処にでもぽこぽこといるな……。


 ちなみに、偶に歳を取ったちょっと大きいスライムが魔術を放って来るが気にしない。

 前に不意を突かれて食らったのだが、『術式耐性』の効果なのか、目の前で掻き消えた。


 その時の消え方を見て少し思ったのだが、この『術式耐性』、呪文のラグを利用して作ったのではないかと。

 前にパーディスが土魔術を使った後に消したのと同じ様な消え方だった。指揮個体の時は、忙しくて消え方までは見ていなかったが。

 もし仮にラグを利用したスキルなら、ラグが解消するまでに消さなければいけない。その事だけは留意しておこう。


 そんな感じで機械的にティアナの指示通り動き、スライムの核を取り出して行く。


「ティアナさん、質問を一つ良いかな?」


「何かしら?リーダーさん」


「今後の事をどう考えているの?」


 はぁ?って顔をされた。まぁ、そうだな。唐突過ぎた。


「いや、フィアとロットが婚約したし、私もリズと婚約した。他のメンバーも結婚とか婚約とか、それぞれが、そう言う事を含めて未来をどう考えているのかなと」


 はぁぁと言う溜息をつかれた。


「リーダーさん。女性にそう言う事を聞くのはあまり好ましい事では無くってよ?」


「いや、まぁ、そうなんだけど。将来像は知りたいかなとは思うよ?」


 次の指示されたスライムに槍を突き刺し、核を抉り取る。


「今現在では考えていないわ。婚約もよ?私は今生きるので精いっぱいなのよ。少しは余裕が出たとは言え、すぐには考えられないわ」


 また新しいスライムを指示される。


「そうか……。いや。特に恋愛に関しては、仕事に差し支えの無い限りは問題無いかと思っているよ。ただ、状況は知りたいかなって。それだけだよ」


 また、はぁぁと言う溜息をつかれた。


「リーダーとしての立場としては理解出来るわ。ただ、あまりずけずけと聞いて欲しい内容では無いわね。誰かと婚約したら教えるわ」


 その時点だと遅いので聞いているのだが……。婚約の前には、恋も愛も有る。女性が恋に落ちた時、愛を育んだ時、それを失った時、どうなるかは痛い程知っている。


 会社では無いが、パーティー「経営」をしている以上、メンバーの福利厚生は考えなければならない。婚約や結婚、出産。女性は男性以上にこう言った場合、どうしても仕事に影響が出てしまう。

 例えば結婚するのでパーティー抜けますとか言われたら困るのだ。妊娠しましたので、パーティー抜けますとかもだけど。

 女性への信用とかの話では無く、現実そうなった場合、女性側の影響が大きい。そう言う意味で女性はリスクを抱えている。出来る限りはフォローしたいが男性では限界も有る。


「出来れば、恋をしそうな段階で教えて欲しいかな?」


「うん?もしかして、口説いてらっしゃる?」


 何か、嫌そうな顔で聞かれた。うわぁ、凹む。メタボ相手って思うのは分かるけど、その顔は無いわ。切なさで心が痛い。


「私はリズ一筋だよ。これは女性に対する偏見では無く、現実問題として対処しなければならないからだよ」


「ロマンチストとリアリストが混じっているわね。はぁぁ、予兆が有れば伝えるわ」


 そう言うと、また新しい対象を指示される。

 予想もしないから、恋に「落ちる」って言うんだけどな。まぁ、今のティアナに言っても無駄かな。それとなくリズに頼んでおこう。


 そうこうしている間に結構な時間が経っていた。さて、戻りますか。


「ティアナさん、そろそろ戻ろうか?」


 そう言うと、ティアナが先導して陣地に走り始めた。さてどの位溜まったかな。折角のロッサの初めてのパーティー活動だ。そこそこの金額だったら記念にもなるだろう。

 あぁ、父親みたいな考え方だなと、子供もいないのにと、微妙な気分になりながら、陣地への道を急ぐ。

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