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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第114話 やっぱりトイレ事情は気になります

 前回の教訓として、達成料と鑑定による収入か、達成数を稼ぐかで意見は分かれた。

 ただ、生活の安定を確保したい意見が過半数を占めたので、今回の目標も熊狩りだ。

  

 冬になれば、遠征も厳しくなる。そういう意味では稼げる間に稼ぎたいと言うのも分かる。


 一行で、前回の遠征に関しての反省点などを洗い出しながら、道を進んで行く。流石に何度も通っていると、獣道みたいな微かな道が出来ている。

 それに沿いながら、目印と地図と照らし合わせ、森の奥側への最短経路を進む。


 この人数なら、ダイアウルフも狩れる可能性は高い。活動圏が広がったとしてもいきなり危険視の必要は無いだろう。


 予定通り、森の奥との境界辺りに昼前に辿り着く。一旦休憩と昼ご飯の準備を始める。


 今回はフィアと一緒に薪拾いを行う。


「最近の調子はどう?」


 会話の無い親子の父親みたいな台詞だなと思いながら、聞いてみる。


「んー。お金が稼げるのは超嬉しい。ただ中々パーティーの中で自分の立ち位置?を確立出来てない気もする」


 リズとドルの破壊力が高いので、一匹倒して多額の収入が入る相手にはフィアだとちょっと向かない。


「フィアの特性は乱戦の時に、掻き回すのが向いているからね。指揮個体戦の時のような感じかな」


「うん、そう思うー」


「これから冬が近付けば、熊の数も減って行く。そうなるともっと奥に入ってダイアウルフなんかとの戦いになる。そう言う時にこそ、真価を発揮すると思うよ」


「そっかぁ。熊も冬眠するしね。そう考えるとやる気出てきたぁ」


「うん。腐る必要は無いよ。皆それぞれに向いている局面が有るから」


 そんな話をしながら、薪と目についた野草を集めて行く。

 陣地に戻ると、他の人間も集まって来ていた。今日の昼当番はティアナだ。


 焚火を起こし、鍋に熱湯を注ぐ。今日もリズは、数羽の鳥を狩って来て捌いている。


 ティアナも貴族の家ながら、自分で全部こなしていたのか料理に関してもそつなく進めて行く。


 温かいたっぶりの鳥肉とモツが入ったスープを楽しむ。色々な野草、香草と合わさり美味しい。モツの臭みも無い。


「料理上手だね」


「家で教え込まれましたわ」


 褒められて少し照れたのか、ツンとした反応が可愛い感じだった。


 食休みと体を温め直し、狩りを続ける。スライムに関してもあまり狩り過ぎるのも良くないと思い、方角はずらし先に進む。

 ゴブリンやスライムを狩りながらじりじりと森の奥に入り込んでいると、ロットから声がかかる。


「熊の痕跡です。ただ、少し古いです。かなり追う必要が有ります」


 時間はそこまで遅くは無い。一旦、その痕跡を追う事にした。方角は森の奥の方だった。ダイアウルフの活動範囲の話を聞いていただけに、少し不安は感じた。

 そのまま、微かな痕跡を辿り、奥へと分け入って行く。避けにくい敵は処理して行き、より、奥へ奥へ入って行く。

 前に、ヒュージスライムと戦った場所よりは手前だが、森の奥の方と言ってもおかしくない場所まで来ている。ただ、オークが向かった場所とはかなり離れている。


「はっきりした痕跡が見つかりました。近付いています」


 ロットは目印を刻みながら、周囲に気を配り、なお奥へと進む。微かな川のせせらぎの音も聞こえる。詳細地図の埋まっていない上方も徐々に埋めて行く。

 冒険者ギルドが地図も売ってくれれば楽なのだが、売ってはくれない。地図を持った人間が安易に奥に潜り込まないようにとの事だが、胡散臭い。

 まぁ、組織なので、何か理由は有るのだろうとは思う。


 ロットとティアナが仲良く熊の痕跡を説明しながら追うのをフィアがちょっと面白くない顔で見ている。


「お仕事だから、嫉妬しても仕方無いよ?そんなにロットを信用出来ない?」


 小声で問いかける。


「そんなんじゃない!そんなんじゃないけど……。少しだけ、モヤモヤはする」


 一瞬激高しかけるが、そのまま尻すぼみになって行く。


「うん。帰ったら、一杯甘えてあげて。ロットがフィアさん以外見向きをしないようにしちゃおう」


「うん。頑張る」


 女の子らしいガッツポーズで、気合を入れる。


 人数が増えると、色々あるなと思いながら、地図の記載に大忙しだ。これを怠ると簡単に迷子になれる。森で迷子になったら、まず助からない。

 地図の描き方はチャットも習ったようで可能だ。大雑把に特徴だけを書き記しているので、後で清書してもらおう。

 しかし、地図を見ながら進んでいるから分かるが、どんどん奥に入り込んでいる。方位磁石とも合わせているので、そこは正確な筈だ。

 うーん……。このタイミングで言うのもあれだが、ちょっと注意喚起はしておこうかな。

 そう思った瞬間だった。


「『警戒』の範囲に入りました。釣ってきますので、迎撃をお願いします」


 そう言い残して、走って行く。まぁ、ロットの『警戒』範囲にダイアウルフがいないのであれば問題は無いか……。

 周辺を捜索して、開けたポイントを探し出す。今回は少し離れた場所だったので、ティアナに中継をお願いする。

 しばし待った後、ティアナが陣地に駆け込んでくる。


「ロットさんがもう少しで戻ります。準備を」


 ティアナの『警戒』範囲には入っているので、ドルの位置取りの微調整を任せる。

 杭を展開させ、ロットの到着を待つ。


「後方約10m、用意をお願いします」


 そう叫びながら、藪を突っ切る。そのまま、ドルの横を抜けて行く。


 ドルが前進し薮の奥側の突進音を聞きながら盾を振りかぶる。

 音が間近に迫った瞬間に盾を振り下ろし、杭を地面に突き刺す。

 現れた熊に対して斜め上に構えた盾をぶち当てる。咆哮のような気合を入れ、踏み止まる。

 リズとフィアは背後に回り込んでおり、すかさず後脚を狙い始める。

 ドルも、杭を抜き間隔を保ちつつ豪快なシールドバッシュを熊の鼻にぶち当てて行く。

 ただ、今回の熊は今までの熊よりもかなり大きい。腕の長さが長い為、密着状態でバッシュを当てた瞬間だと、盾の後側に爪が回り込みそうだった。

 ドルも盾の感触で気づいたのか、いつもよりやや後退してシールドバッシュを当てる。そうなると視界が開ける為、後方への牽制で前脚を薙ぐ機会も増える。

 獲物を傷付けないとか言っていられないので、タイミングを見て顔に向かい、槍を突き出す。


「ドル、メイス使って」


 叫びながら、隙を見ながら顔に向かって槍を突き出し、牽制を繰り返す。

 熊がドルに向かって前脚を繰り出した瞬間盾でがっちりと抑え込み、そのまま横合いに思い切り弾く。上体が傾いだ瞬間にドルが横顔にメイスを叩き込む。

 熊が痛みに悲鳴のような方向をあげて横転する。その瞬間、隙を伺っていたリズが後脚の関節を思い切り上から殴る。鈍い音が聞こえた。

 もう一本と思った瞬間、ドルが接近して、顔面に横薙ぎの一撃をぶち当てる。鼻が折れたのか、一気に動きが緩慢になる。

 隙を突き、そのまま首筋を狙って槍を突き出し、深々と刺さった瞬間、抉る。


「離れて」


 仲間が離れるのを見て、槍を引き抜き後退する。血飛沫が上がり熊がびくびくと痙攣を始める。致命傷のようで、そのまま動きを止めた。


「大きかったおすなぁ……」


 チャットが驚愕と呆れの混じった声で呟く。本当に大きい。3mは超えている。

 血抜きの為にひっくり返した際に雄と分かった。


「このサイズは初めてだけど、かなりきつかったね」


 呆れる様に呟いたが、皆が首を振り肯定してきた。膂力も有った為か、ドルの盾も表面に傷が入っていた。


「ドル、盾の方は大丈夫?」


「中まで鉄が詰まっているので、大丈夫だ」


 『剛力』有りで設計しているのか、クッション部が内側の手元と肘で固定する周囲にしか無い。鎧と盾だけで50kg近くなる筈だ。

 ドルもそうだが、鉄無垢の盾の表面だけでも傷を付ける熊の膂力が恐ろしい……。


 ロットは打ち合わせ通り、次の獲物の探索に向かっている。血抜きが有る程度完了した段階で、川に向かう。

 流石にこの大きさはドルでも大変じゃないのかと思ったが、何食わぬ顔でずるずると引きずって行く。


 このサイズだと、引き上げる際にロープが切れるのが怖いので何重にも厳重に縛り、川に沈める。


 ロットも付近の川まで戻って来る筈なので、一旦はここで待機となる。

 皆の水筒にカップにお湯を注ぎ、汗が引いて冷えた体を温める。


「ほんまに助かりますわぁ……」


 ほっとした顔でチャットが呟く。


「冬場は寒さとの戦いですが、こうやって温かい物を頻繁に摂取出来るのは最高ね」


 ティアナも嬉しそうにお湯を飲んでいる。


 ドルは黙ったままカップで手を温めながら、ゆっくりと口に含んでいる。


 幼馴染2人組は、何かの話で盛り上がっている。


 今の機会だからと、一旦休憩とする。まぁ、トイレ休憩も含める。

 ちなみに、トイレ事情だが、小さい方はさておき、野営中は荷車に積んでいる衝立の中に穴を掘ってそこで済ませる。

 洗浄用の手桶が有るのでそれで洗い、使い捨ての端切れと一緒に埋める。使い捨ての端切れは補充品の重要品目だ。

 使用後は、衝立を移動させて新たな穴を掘り、手桶に水を補充しておくマナーだ。


 狩りの最中は衝立は無しだ。その辺りで穴を掘り、後は同じく。

 『警戒』持ちは良いのだが、無い場合は同性が近くで見張りながらする。

 流石にもう慣れた。始めの頃はカルチャーショックだったが。


 端切れも、様々な大きさで安く売っている。洋服の裁断等で大量に出る物を安く提供している。

 ティッシュ感覚で使うには高いが、稼ぎを考えれば微々たるものだ。


 まだ夕暮れまでは時間が有る。もう一戦有るかなと考えながらゆっくりとお湯を啜った。

 今度はお茶かハーブティーでも買って来ようかな。

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