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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第113話 桜はあまり武将達には好かれておらず、家紋としては後世の方の方が多いです

 家ではティーシアが夕ご飯の準備をしていた。リズも装備を外し、準備に混ざる。

 私は、石鹸の様子を確認しに行く。


 納屋の中は、熟成中の肉と加工品が大分増えてきた。油かすの需要が高まり、村人の肉を食べたい欲求も高まっている。

 そのニーズに答える為、加工品の増産を決めたようだ。ただ、肉を売るよりも利益率が良い為、その方が正しいと考える。


 石鹸2号に関しては、大分鹸化が進み、クリーム状の部分が増えて来ている。前回は長い間見れなかった時期も有ったが、こうやって変化するんだと興味深く眺めた。

 学生時代の実験の時は、先生が鹸化の管理をしていたので、こんな細かくは観察出来なかった。人生いつでも勉強だなと、少し苦笑が零れた。

 香油の投入はまだ早いと判断した。どちらにせよ香りが飛ぶ物なので、乾燥中に混ぜるよりもう少し固まってから内包させた方が良いと考えたからだ。


 部屋に戻り、上総掘りの設計図を書き上げる。本来であれば竹をバネにして掘削部分の上下を楽に出来るのだが、現状で竹の実物を見ていない為、そこは人力でカバーしてもらう。

 土を引き上げる時の重さから、運用人数を割り出し、大体10人前後が貼りつけばなんとか使用出来そうだと見れた。

 掘鉄管と呼ばれる鑿部分と土を閉じ込める鉄の管を使って掘り進めるのだが、加工が出来るのかが少し疑問だ。念の為、ノミとしての部分と弁が付いた鉄管部分を別にした設計も併記しておく。

 入れ替える運用が面倒なので、出来れば開発して欲しいが、無理なら後者でお願いする旨を注記しておく。

 後は掘り進める際の壁と鉄管の温度を下げる為の粘土水だが、粘土がどれだけ採れるのかが謎だ。ただ、地球の環境と似ているのであれば、そう珍しい物でも無いだろう。


 書き終わった頃に、リズがやって来た。ご飯が出来たようだ。設計図を書くのに夢中になっていたが、アストも帰ってきているようだ。

 食事を楽しみ、休憩を挟み、お風呂マシーンの時間が始まる。水魔術の習熟が上がるにつれ熱湯でもかなりの量が作れる様になったので、練習として物足りなくなってきたのは贅沢だろうか。

 適温を大量に出すのは、まだしんどいので、その辺りと併用しながら修行としよう。


 アストから順に入浴して行き、最後に私が樽に沈む。大分文明的な生活になって来たなと感慨深い。


 カビアを思い出し、今後官僚団のまとめ役になるのかと思案する。歳は若いが5年も現場で叩き上げられたのだ。それなりに仕事はしてくれるだろう。

 取り敢えず、今回の設計図をさっさとノーウェに渡してもらって開発を進めてもらう。色々領地の将来は考えているが、大まかなビジョンとしては観光都市計画だ。

 通常の町は特産でもなければ、人間の流れは生まれない。ここにサービス業の拡充をして、人間の往来を増やすと共に滞在者を増やす。

 その人間が落とす金が新たなキャッシュフローの原資となる。上総掘りと温泉設備はその一環としてなくてはならない。カラカラ浴場では無いが、まずは温泉保養地として名を売る事を考えよう。

 宿に関しても、サービスの質を一定以上に保つ為、試験制度と監査を導入するつもりだ。そこそこの料金で大きな幸福体験を持ち帰れる。そんな町をまずは目指そう。


 未来を考えていると、長風呂になったのか、ふらっとする。さっさと上がり、樽の清掃をする。


 部屋に戻ると、リズが思案しているのか夢想しているのか、ぼーっとしていた。


「何を考えているの?」


「ヒロが言っていた鎧の話?」


「あぁ。最終的に重装した方がリズには向いていると思うよ」


「でも、可愛くないのがちょっと難点かな?」


 ハンマーを振り回す女子が可愛いかは疑問だが。


「まぁ、戦闘の時だからあまり関係無いかと思うよ?」


「でも、また歌になった時に、こう、戦乙女?って呼ばれなくなりそうで嫌だ」


 あぁ、そう言う英雄願望も有るのか。私は全く無いので気づかなかった。


「その辺りは安全が担保されてから考えても良いんじゃないかな。リズがなるべく傷付かないようにして欲しいな」


「ヒロ、やっぱりずるい」


 上目遣いで、睨まれる。そんな所も可愛い。


「ずるくて結構。リズが一番大事だから」


 ベットに座っているリズの頭をぎゅっと抱きしめる。


「怪我しないようにしなくちゃいけないね」


「ヒロが治してくれるんでしょ?」


「怪我する事自体が嫌だよ」


 そのままキスをして、布団に潜り込む。今朝の無理が出てきたのか寝ころんだ途端抗えない睡魔に襲われた。


 朝になり、朝食を済ませ、何時ものように合流ポイントに集合する。皆の疲れも抜けているようだ。

 買い出しをお願いする間、少し子爵の使いと話をして来る旨を伝える。


 村外れの屋敷に向かい、ドアノッカーを叩く。重い音が扉の向こうから聞こえる。

 少し待つと、びしりとした服装のカビアが出てきた。


「おはよう、カビア」


「おはようございます。男爵様。ささ、中にお入り下さい」


 そのままソファーの有る応接室に通される。

 メイドも1名着いて来ているのか、可愛らしい女の子がお茶を用意してくれる。朝食の際の火がまだ残っているのだろう。


「すまないが、子爵様へ急ぎ開発を願いたい物が有る」


「開発ですか?」


 カビアが怪訝そうな顔をする。図面を取り出し、説明を始める。


「現在の技術で、露天で100m掘るとしたら、どの程度時間がかかる?」


「状況によりますが、半年以上は確実に。岩盤の状況によりますが1年を超える事も有ります」


「この装置が開発されれば、細い穴だが、1か月で掘れる」


 そう言うと、驚愕の眼差しで、設計図を凝視する。


「構造は単純ですね。この掘り進める部分の開発は若干難航するかと思いますが、ここまで詳細に記載されておりましたら、すぐにでも実物はお見せ出来ます」


「まずは、試作品の完成を目指して急ピッチで進めて欲しい。またこの開発品に関しては特許を私名義で取得して欲しい。公爵領の中でも水に困っている場所は多いはずだ。深井戸が掘れればかなり苦労は軽減出来るはずだ」


「分かりました。急ぎ町に戻り子爵様と協議致します。兎に角男爵様の案件は優先せよとのご命令ですので、近日中にはご回答出来るかと考えます」


「一旦、開発の指揮はカビアが取ってくれ。形になるまで町の滞在を許可する。今回の町づくりに無くてはならない物だ。頼む」


「承知致しました。急ぎ町に向かいます」


「そこは任せる。初めての仕事から重たい物で恐縮だが、急いで頼む」


「勿体無いお言葉です。それでは失礼致します」


 念の為、木工屋で型作りネスに作ってもらった紋章で、ノーウェへ早めに顔を出す旨の書状と合わせて、封筒に封をする。今回は開発依頼なので通常の紋章だ。

 一般的に紋章を簡略化して略式紋章にする。私は桜が好きなので八重桜の十枚の花弁を紋章に、一重の桜の五枚の花弁を略式紋章に登録した。


 カビアが一礼し、足早に旅装の準備を始める。 


 私はメイドの誘導で、そのまま屋敷を出る。


 集合場所に到着すると、暇だったのか皆で狩りに関しての議論を交わしている。良い傾向だなと思う。


「さぁ、用事も済んだし、そろそろ向かおうか?」


 そう声をかけ、遠征に出発する。

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