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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第111話 隠し事しているつもりでもばれている事って有りますよね

 ドルと別れたが、流石にアルコールが入った状態で、役人に会うのは気が引けるので、そのまま家に戻った。


 石鹸2号の様子を確認したが、ティーシアがきちんと攪拌をしてくれている様で、徐々に鹸化も進んでいる。

 これが完成したら、最低限村の家庭に手洗い用石鹸は配布出来る。香り付きにするかは迷うが、奮発するのも悪くないなとは思う。

 しかし、アテンのお嫁さんは、下手したらティーシア絡みの作業を全部やる羽目になるのか?大変だなとは思う。


 庭に出て、チャットに聞いた方法で、風魔術の訓練を始める。台風の時を意識して、兎に角大きな風を上空に向かって吹かせる。

 スキルを確認すると、上がっている……。がぁぁ……。今までの苦労は何だったんだ。諦めて、色々な種類の風を試して行く。

 過剰帰還の兆候が出始める度に休憩を挟み、延々試して行くと、気づけば停滞していたスキルは一気に上がり、もう2目前まで上がっていた。

 理由は分かったのだが、釈然としない。


 火に関しては取り敢えず、温度を低めで、油を想定して土が露出している所を焼いて試して行く。テルミット反応とか怖くて試していない。


 土も同じ様に、石の形や速度を色々弄りながら射出し続ける。

 石の素材は変えられるのかと一回大理石をイメージして出してみたが、ブロック1個を出すだけで吐きそうになった。効率が悪すぎる。

 取り敢えず、記念に取っておく。彫刻家でも見つけたら、何か作ってもらおう。


 そうこうしていると、『術式制御』も並行して上がり、これも2近い。

 射程を歩測で図る限りは30mを超えるか超えないかだ。遠距離攻撃としては大分使える距離になってきた。2になった時にどこまで延びるかだ。


 そんな事をしている内に、辺りは夕暮れに染まっていた。

 家に入ると、リズとティーシアが夕ご飯の準備を始めていた。

 折角なので、手伝う事にした。リズも大分様になってきた。


 そろそろ出来るかというタイミングで、アストが帰って来た。今日も大物がかかったらしく、本当に嬉しそうだ。

 この時期のイノシシは餌が豊富で丸々としており、美味しいので高く売れる。


 明るい雰囲気の中で食事を進めて行く。


「そう言えば、アテンから手紙が有ったわ。向こうの両親の説得は何とか出来たって。ただ冬が近いから、このまま春まで向こうを手伝うって」


 ティーシアがそんな事を言う。


「そうなると、男爵領の完成時期を超えますね。アテンさんが帰って来るまでは、こちらでお住まいになりますか?」


 アストに問うと、思案顔で呟く。


「村の食肉の供給を考えると、そうだな。他の商品の件も有るし、アテンに引継ぎもせねばならん。そこは申し訳無いが無理を言わせてくれ」


「いえいえ。無理とかでは有りません。私もその頃には男爵領での対応が始まっていますから。部屋は用意しておりますので、お好きな時期にお越し下さい」


「助かる」


 アストが、素直な笑顔を見せる。中々そう言う姿を見せないのでちょっと嬉しい。


 その後は近況報告等を続けながら、食事を終える。


 折角なので、本日もお風呂タイムとなった。


 お湯作りマシーンと化した私は延々お湯を作り続けた。リズを洗ったりの役得は有ったが。


 樽に浸かりながら、執事の話、リズの話を思い返す。ロスティーやノーウェに関しては、本人に聞かなければ狙いが読めない。

 今のままだと何か曲解して、とんでもない事になりそうな気がする。少なくともリズの言い分の方が正しい。

 貴族とは言え、人間だ。私に人間以上を求めるとは思えない……。堂々巡りだが、もどかしい。

 日本なら電話で聞けば終わる話なのにな。苦笑が知らず知らず浮かぶ。まだまだ日本人だな、私。


 湯あたりしない内に上がって、樽を洗浄する。


 部屋に戻ると、今日は色々髪形を弄っている可愛いのがいた。


「髪形変えるの?」


「サラサラで癖が無くなったから、色々試せるの」


 編み上げて、巻き上げのお団子を作ったり、器用に髪形を変えて行く。


「可愛いよ、リズ」


「えへへ」


 嬉しそうに笑った後は、何時ものようにストレートに戻す。


「元に戻すの?」


「ヒロ、これが一番好きでしょ?」


 初めて会った時の髪形だから、印象深いのは確かだ。


「好きだけど、拘らないよ。好きな髪形にしたら?」


「好きだって思われる髪形にしたい」


 あー。可愛いなって思ってしまった。ずるいな、女の子って。

 そのまま抱きしめて、ベッドの上をごろごろと行ったり来たりする。


「色々幸せな事が増えたけど、これからもっと増えて行くんだね」


「うん。そうなるよう、努力するつもり」


 そう、皆が幸せになる為に、どうするべきか。


「でも、無理しないでね?」


「心配をかけないようにするよ」


 そんな話をしながら、二人で布団に潜り込む。

 少しずつ肌寒くなり、隣の体温が心地良い。

 温かさを感じながら、ゆっくりと眠りに落ちて行った。


 朝起きると、珍しくリズがまだ眠っていた。天使の様な寝顔と言うが、朝日に照らされた髪がキラキラと輝き幻想的な雰囲気を醸し出している。

 触れると壊れそうだなと思いながら、そっと口付ける。


「……んにゃ……?」


 寝ぼけているのか、半目を開けてそのまま、また眠ろうとする。

 首筋に、唇を這わせて、耳元で囁く。


「リズ、朝だよ」


 今度は、覚醒したようだ。そのまま真っ赤な顔になり叫ぶ。


「ずるい、何かずるい。いつも、何!?不意打ちもずるい」


「まぁ、そんなものだし」


 柳に風でいなして、キッチンに向かってもらう。

 朝食の準備の間に出かける準備を整えて行く。


 朝食を取り、何時ものように留守の対応をお願いする。

 リズと一緒に、冒険者ギルド前に向かう。他のメンバーは揃っていた。

 取り敢えず、相談してもらった上で消耗品、補充品の買い出しを手分けしてもらう。


 その間に、私はギルド内に入り、依頼票を覗く。8等級の効率的な上げ方を模索するが、どれも手間の割に達成数が入らない。

 地道に熊と狼を狩るのが、今のメンバーだと手っ取り早そうだ。


 そのまま、掲示板を離れようとする私を受付嬢が引き止める。どうも客が来ているようだ。会議室に誘導され、そのまま部屋に通される。


「初めまして、男爵様。私、カビアと申します」


 執事の言っていた、出向の人間なのかな?


「初めまして。子爵様の執事が言っていた出向の人かな?」


「はい。今後は男爵様にお仕えするよう命ぜられております」


 若い。20には行っていない。政務系って言ってたが、若すぎないか?


「えーと、政務系の人材が来ると聞いていたけど、結構若いよね?」


「今年で、18となります。ただ、職務に関しましては13から始めておりますので5年目となります」


 成人前から、職務についていたのか。優秀なのか?


「父親が官僚だった為、教育を受けておりました。研修名目で13から政務に携わっておりましたが、問題無しと言う事でそのまま本採用となり、今に至ります」


 あぁ、優秀な子だ。


「まずはご挨拶までと。後は子爵様より、お手紙を預かっております」


 受け取った手紙には略式紋章が押されている。私信か。ナイフで開け、中身を取り出す。


『気の利かない執事の為、誤解をしていると思い手紙を送った。今回決定する来年度予算の件に関しては真の意味で自由にして良い。君が、父上や私の事を信用していないのは前回の会談で分かっていた。ただそれでも、国を、民を思う心に偽りは無いと判断した。君の語る夢に父上も、私も心躍った。父上も私も君を家族と思い遇すると言うのは本心だ。あまり考えすぎず、成すべき事を成してくれる事を切に願う』


 短い手紙だった。だが、本当にありがたかった。疑っていたのはばれていても、その上で家族と認めてくれた。

 やっぱり優秀な政治家って奴を嘗めていた。敵わないと思った。


「失礼だが、これから遠征だ。返事に関しては帰還の後でも問題は無いかな?」


「いえ。返事に関しては不要と。今はご自身の成すべき事に専念して欲しいとの事です」


「そうか……。では遠征から戻り次第、一度ご挨拶にお伺いしよう。君はどこに滞在するのかな?」


「町側の村外れに政務用の屋敷が有ります。そちらで滞在しております。御用の際にはお申し付け下さい」


 あぁ、あのこじんまりした屋敷か。誰が住んでいるのかと思った。


「じゃあ、私はこれで」


「ご武運をお祈り致します」


 カビアに別れを告げ、皆の所へ戻る。もう買い物は完了したようだ。新人2人も気合が入っている。特にドルは昨日よりさっぱりした顔をしている。


 さて、これから忙しくなる。その試金石としての今回、頑張ろう。

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