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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第108話 集団での議論って気を使いませんか?

 木工屋に駆け込み、荷車の作成を依頼してみた。もう開発した物で、設計図も残しているので、明日中には仕上げてくれるとの事だ。車軸の予備も一緒にお願いした。

 今回持って行った1号の点検もしてもらったが、全くガタも来ていない。この程度の荷重までなら、森の中を引きずりまわしても大丈夫そうだ。


 次は、雑貨屋に鍋を持って走る。在庫を見せてもらったが、今でも結構大きな鍋だ。これ以上となると車載を前提にしなければならない。

 鍋吊りの機材も諦めて購入した。その辺りの木で支えるには、ちょっと鍋の重量が有り過ぎる。後は減っていた調味料も一緒に購入する。

 今までの鍋を下取りしてもらい、新しい鍋を荷車に積む。結構荷物が増えてきたが、人数が増えたのだから、しょうがないか……。買ったばかりの鍋を下取りに出すのはどこか空しかった。


 そのまま、荷車を引きながら家に戻る。周辺の奥様方がちらちらとこちらを見ている。何か有ったか?と思ったが、石鹸の件かと思い至った。

 取り敢えず、気づいていない振りをしながら、家路を急ぐ。


 家に戻ると、リズ達はまだ訓練の最中のようで、いたのはティーシアだけだった。


「ただいま戻りました」


 挨拶をしながら家に入ると、いつもよりも綺麗なティーシアがいた。どうも酢リンスの効果が出たらしく、髪の毛が艶やかでサラサラだった。


「うふふふふ。ご近所で評判よ。綺麗って言われちゃった。えへへ……」


 親子らしい笑い方だなと思ってしまった。取り敢えず、中々訓練の様子も見れないので、荷物だけ置いて訓練場所まで移動する。

 今日は走ってばっかりな気がすると、息を切らせながら訓練場所に到着する。お腹がぷよんぷよん跳ねるのが鬱陶しい。


 訓練場所で一際目立つ存在がいた。完全装備のドルがいるのだが、何だろう、一人要塞?と言う感じになっていた。

 タワーシールドなのだろうか?人間であれば、足から胴体を覆う大きさなのだが、ドワーフだと頭まですっぽり覆われている。顔の高さ辺りに小さな覗き穴がぽつぽつ開いている。

 しかも、下の方にはスパイクと言うか杭が内側から下に引き出せるようになっている。

 何かが突進して来る場合は、杭を引き出し、地面に固定して、押し返す構造のようだ。フルプレートと相まって、どう見ても砦と城壁と言う感じだ。


 あまりの姿に少し話を聞いてみたが、釣って来た熊の突進程度なら普通に受けて押し返せるそうだ。

 自分を高く売る嘘なのか?と一瞬思ったのだが、ティアナが真面目な顔で頷いていたので本当なのだろう。

 人間業じゃない……。ドワーフすげぇなと感心した。実際に現場を見れば本気で驚くのだろうなとは思った。


 しかもロングメイスが厳つい。四枚の刃も鋭利では無く鈍い鉄の板状になっている。

 切れ味を考えず、端で殴れば十分と言う思想なのだろうか、見ただけで腰の辺りがヒュンとなる迫力だ。

 それを、棒切れを振り回す様に、軽々と振り回す。『剛力』と基礎筋力が相まって、何か凄い事になっているなと思った。


 熊対策のフォーメーションとしては、今までの陣形に前衛として真正面にドルが入る。

 ティアナが『警戒』しながら牽制担当となり、ロットはその間に別の熊を探索する方針となった。

 熊の痕跡を見つけ次第、元の場所か、最短距離の川に移動し、そのまま次の獲物に向かって行く流れだ。


 川に置いておけば、何かに食べられる心配も無い。

 露出している肉の部分は偶に魚に齧られていたりするが極僅かだ。気にするだけ無駄だ。


 ドルの積載量を考えれば、荷車を引いてもらって、トータルで熊2頭分は持って帰る事が出来る。

 リズが荷車を引いてくれればもう少し余裕が生まれるのだが、あまり動きを制限するのもと考えて保留中だ。


 しかし、皆そのうち『剛力』が生えてきそうな気もする。現在の私でも、80kgを積載した荷車を引きながら、100kg以上の肉を背中に縛っても歩ける。

 他の皆も熊討伐の際には、30kg以上の荷物を背負っているのだ。


 私の『剛力』も熊狩りを始めてから結構なスピードで上がって行っている。筋肉もついているので相乗効果で積載量が跳ね上がって行っている。

 ドルの『剛力』は3近い。スキルに関しては1を超えた途端一気に能力が跳ね上がる。どれだけが限界かは本人もきちんと計った事が無いらしい。

 ただ、鍛冶師の時に300kg近い鉄塊を普通に持ち運んではいたらしい。想像も出来ない。


 そのまま、ゴブリン戦やスライム戦等も想定しながら、訓練は続いて行く。皆真剣な様子で、どうやって効率を上げるか議論している。

 ティアナ達も最初は戸惑いながらだったが、きちんと意見が通る事を認識してからは、積極的に議論に混じっていた。


 この、集団での議論と言うのも難しいのだが、取り敢えずパーティー内での意見は必ず考慮すると言う約束にはしている。

 ただ、考慮に値しない場合は理由を述べて蹴って良い事にもしている。無駄な事は無駄だからだ。

 その分皆、周りを配慮して考えた上で、きちんと意見を言うようになった。


 そんなこんなで夕暮れもかなり遅い時間まで訓練と議論は続いた。初めて覗いたが、有意義な時間だった。皆の頑張りが良く分かった。

 

 その場で解散し、リズと一緒に家に戻る。ちなみにティアナ達は安い方の宿に泊まっているらしい。早く青空亭に移動出来るように頑張ってもらいたい。  

 遅くなった為、アストはもう帰っていた。久々に大物がかかったらしく上機嫌だ。最近は油かすも食べ物として認知され、利用範囲の広さに需要が増えているらしい。

 元々は農家などの肉を摂取するのが難しい世帯向けに安く販売していたのだが、現在は村中で普通に食べられるようになってきているらしい。

 奥様ネットワークって凄いなと思った。獣脂蝋燭の売り上げも順調で、薪代の回収どころか、かなりの黒になっている。

 今年分の税どころか、村で肩代わりしてもらっていた税に関してもこのまま行けば短い期間で完済出来そうだ。

 この肩代わり分は家に紐づくので、アストが出て行ってもアテンに相続した場合はそのまま引き継がれてしまう。その前に完済したいのが親心なのだろう。

 まぁ、忙しそうに働くティーシアがどんどん若返って見えるので、忙しいのも良い事だとは思う。


 折角家に戻ったので、本日はお風呂の日となった。水魔術がどんどん上がっているので、出せる湯量も増えてきた。

 家族分は過剰帰還が無くても十分賄える。水で薄める前提では有るが。


 食後、一家の長であるアストから入浴を開始する。ティーシアが甲斐甲斐しく洗ってあげているようで良い夫婦だなと思った。

 まぁ、ティーシアの番になったらアストが洗っているので、プレイの一環か?とも思ったが、大人なので何も言わない。


 その後はリズをお風呂に入れて、私の番だ。


 ゆっくりとお湯に浸かりながら、明日の執事との話を考える。承認されたと言っても、条件が付いている場合も有る。どの程度の期間がかかるかも分からない。

 正直、こんな短期間であの規模の話を確認して、議論して、承認出来ると思っていなかった。私の考えの甘さだが、対応が想定を超えて早すぎる。

 まぁ、最悪のケースだけを想定して、条件が悪ければ、ご破算にしても問題無いかなとは考えてはいる。

 どうせ切ったカードは2枚だし、効果が見えれば手の平を返す可能性が高い。どちらにしてもこちらに損は無いと踏んでおく。

 そこまで考えれば気楽なものだ。仲間の未来に関しては気を配る必要が有るが、どちらにしても動ける様に先は考えておく事にしよう。


 そこまで考えた時にくらっとした。流石にのぼせる……。

 樽を洗いながら、汗が引くのを待つ。


 部屋に戻ると、毎度のようにベッドに転がり髪の毛の感触を楽しみながら、ゴロゴロしている可愛い生き物がいた。


「飽きないの?」


「飽きない」


 即答だった。


「私は子爵様の執事と会う約束が有るけど。明日はどうするの?」


「ティアナ達の足りない物を揃えようと言う話になったよ。テントは流石に無理だけど」


「だよねぇ。ティアナさん達も雨の時はマントで凌ぐって言ってたしね……」


「その他の細々した物を買い揃えようかって。この村に来て間もないし」


「そっかぁ。良い子だね……」


 頭を撫でてあげると、嬉しそうな猫みたいな顔で擦り寄って来た。

 中々、こうしてスキンシップを取れる機会も少ない。軽い口付けを色んな場所にしながら、話し込んでいく。


 もう虫の音もほとんど聞こえなくなった。本格的な冬が来るのか。そんな事を考えながら、2人で眠り込んで行った。

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