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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第107話 話し方で誤解される方って偶に見かけます

 1点目は、斥候職を募集していたのに応募してきた人材がいるとの話なのだが、2人組のパーティーらしい。

 1人は斥候で、1人は前衛との事だ。正直、儲けのバランスと訓練の都合も有るので一気に人員増は避けたいと考えていたが、両者共にギルド側のお墨付きとの事だ。

 本日は村の宿で休養中との事なので、迎えに行くとの事だ。


 2点目は、ノーウェより、官僚団の承認が下りたので具体的な話をする為に、全権委任の執事が1人昨日から待っているらしい。

 正直こちらを優先したいのだが、遠征のスケジュールをそのまま伝えているので、今は村の周辺の視察を行っているらしい。

 先触れを出してもらい、明日朝からギルドでの打ち合わせをセッティングしてもらうようお願いした。


 面談の前に、オークとダイアウルフの報告をしたい旨を伝えると、そのまま会議室では無く、ハーティスの執務室に誘導された。


「ご無沙汰しています」


 挨拶をすると、嬉しそうに駆け寄って来たので握手を交わす。


「最近の動向も追わせて頂いていますが、いやいや。達成率もさる事ながら、情報収集の部分でもフォロー頂き、本当に助かっております」


 深々と礼をされたので、肩を抑え、顔を上げてもらう。


 そのまま、ソファーに座り、今回の経緯を説明する。罠の意味の憶測、オークとの接触と、ダイアウルフらしき生物の確認に関しては資料を含めて念入りに行った。

 どうも、森の地図に関しても詳細に記載しているパーティーは少なく、持ち込んだ詳細地図とギルド側の詳細地図とを合わせ、大体の位置は共有出来た。


「ダイアウルフに関しては徐々にテリトリーの把握は進んでいましたが、オークの方にまでは人員が割けていなかった為、本当に助かります」


 話を聞いている限りは、少数精鋭で森の奥にアタックをかけているが、まだオークの発見までは出来ていないようだ。

 冒険者から漏れ聞こえて来る情報も地図情報では確度が低すぎて、ギルドも迂闊に動けないらしい。


「ここまで調べて頂ければ、該当の方角に集中して斥候を運用出来ます。かなり気になさっていたとお聞きしておりますので、その部分のフォローはお任せ下さい」


 ハーティスから頼もしい回答は得られた。取り敢えずギルドがオークの村なり住処なりを特定してくれれば、人員を送り込み排除は可能だ。

 これ以上、森の中で不確定要素を増やして欲しくないので、正直助かる。


「これは、まだ正式な依頼では無く今後の流れとしてお聞き下さい。斥候の偵察が完了次第、威力偵察に移ります。その際にお手伝いを願う可能性が有ります」


 うーん……。ちょっと、いや、かなり微妙な話だ。危険が読み切れない。


「現在、パーティーメンバーも8等級になったとは言え、まだまだ経験不足です。ご期待に沿えない可能性が高いです」


 暗に断りたい旨を告げた。

 ただ、ハーティスと言うより、ギルド側として、8等級クラスが現在村で枯渇気味と言うのも問題視している。

 指揮個体の対応で集まっていた8等級達が他の地域に移動し始めているらしい。事態収束の宣言と共に、ゴブリンの価値も下がり、この森は8等級としてうま味の有る狩場としては少し弱い。

 ただ、聞いている限りはこの村のギルドと言う組織の問題だろうと思うので、何とか威力偵察には参加したくないと断る。


「8等級初心者への指名としては、難易度が高すぎませんか?私達のパーティーの戦術は急襲による物です。正面切っての戦闘は指揮個体戦程度しか体験していないですよ?」


「オークを根絶やしにする必要は現在無いと考えています。あまり増えすぎても問題ですが、今後の8等級の定着の為、どの程度の個体がいるかの情報は得たいのです」


 話は分からないでも無いが、押し切られても困る。だが、男爵領の話が進むにしても、半年や1年は冒険者を続けないといけない。まだまだ信用される冒険者像を崩す訳にはいかない。


「せめて、ギルドの斥候のフォローと他のパーティーを含めての合同指名にして下さい。危険度が読めないのであれば、こちら側の戦力を飽和させるしか安全を担保出来ません」


「そこに関しては、今後の流れの部分も有りますので、上とは話をします。安全を考慮した形で参加頂けるよう、また達成料に関しても調整は致します」


 譲歩は引き出せたので、一旦手打ちにするか。こちら側としても独自に安全策は考えなければいけない。

 難しい問題が乗って来た。報告した分、自業自得ではあるが、組織との関係を深める為にはこう言う地道な報告や根回しも必要だ。今回は諦めるか。切れるカードが双方共に弱い。


「分かりました。遠征の調整も有りますので、日程が決まり次第お教え下さい」


 その後は、オークに関する書面で分からない情報を直接教えてもらった。

 やはり『警戒』や『隠身』を持った個体は存在しそうだ。比率は分からないが、不意打ち上等の私達に取っては不向きな相手だなとは感じた。

 後は雑談が続く。新男爵領の予定地周りに関してもノーウェ側から打診が有り、周辺のギルドが人員を出し合い調査を行ってくれているらしい。その辺りは流石ノーウェだ。そつがない。


 話し中に、ノックの音が聞こえる。どうも面談の2名が到着したらしい。


 挨拶を交わし、面談の為、会議室へ向かう。


「初めまして、ティアナと申しますわ」


 部屋に入った途端、座っていた女性が立ち上がり、挨拶をしてきた。


「初めまして、アキヒロと申します。本日は休みの際に申し訳無いです」


 そんな感じで話は始まった。

 ティアナと名乗る女性は、完全な金髪に天然パーマなのか、若干ウェーブがかっている。上品な綺麗な顔立ちだ。背丈はリズと同じくらいと見える。


「初めまして。ドルティオと申す。近しい物はドルと呼びます。よろしくお願い致す」


 男性の方は、ひげ面の背の低い男性だった。筋肉質の体といい、これがドワーフか。初めて見た。


「率直にお聞きしますが、どの様な経緯で私達のパーティーに接触しようと考えたのですか?」


 聞いてみると、ティアナが話し出す。こちらの方がリーダー役なのか。女性のリーダーは数は少ないがいない訳では無い。


 元々はもっと西の王都側で冒険者をやっていたが、後衛の女性が結婚を機にパーティーから抜けた為、他のメンバーを探しながら東に流れてきたらしい。

 その際に、楽師の情報を聞きつけて、興味を持ち接触してきたとの事だ。やばい、楽師の歌の威力が高すぎる。ちょっと怖い。


「歌われているような人間では有りません。今でも何とかパーティーを切り盛りしている程度の才覚です」


「ご謙遜ですわ。職員の方からも話は伺いました。作戦立案能力、遂行能力、また信用度もトップクラスとなれば、普通では有り得ませんわ」


 また、ギルド員か……。こちらも相手の事を調べるから文句は言えないが、期待を煽るのは止めて欲しい。


「このパーティーではどの様な立ち位置で活動をお考えですか?」


 ティアナの言う話では、元々商家から貴族に叙爵された家の次女だったらしい。ただ、父親に為政者の才能が無かったらしく一気に没落気味になっているらしい。

 そんな家の次女にまともな縁談も無いし、商い自体は懇意にしていた知人に譲った為、どうしようもなくなり家を飛び出したらしい。ただ、最低限家とは縁切りはしているらしいが。

 そこで教育を受けていた事も有り、冒険者ギルドで斥候職を目指したとの事だ。実際に適性が有ったのか、達成率は非常に高くギルド側の信用も限りなく高い。

 そんな流れで、ドルともう一人の女性でパーティーを組み、どんどんと先に進んでいたが、今回の件で躓いたとの事だ。

 ただ、冒険者として大成したいと言う訳では無く、安定して生活がしたいと言うのが主目的では有るようだ。


 ドルに関しては、元々鍛冶師だったが、自分で作った物を試している内に冒険者家業に目覚めた異色の経歴の持ち主だった。

 正直、板金のフルプレートなのに、動く際にほとんどガチャつかない。関節部にも細かい鎖状の覆いが貼られており、非常に完成度が高い。これも自作との事だ。

 彼も、冒険者は自作の製品の試しと言う事で、そこまで冒険者家業に拘っている訳では無い。ネスとは話が合いそうだなと思った。


「まだ、公にはしていないですが、男爵への叙爵の話が進んでいます。自由な冒険者生活と言うには制限がかかります。その辺りは問題無いですか?」


 ティアナに関しては元々安定した生活が目的なので、問題無い。短期的な目標に関しても理解を示してくれた。また、元貴族令嬢として官僚系の知識も蓄えているので将来官僚団への編入も可能だ。

 ドルに関しても、そもそも鍛冶屋だ。鍛冶屋として領内でやって行けるのであれば本望との事だ。ますますネスと合うだろう。


 で、『認識』先生の意見なのだが。ティアナに関してはロットに比べ『警戒』は低いが、『隠身』と『軽業』、『暗器術』が高い。どう考えても急所への一撃必殺でやって来た感じだ。

 ドルに関しては、元々の筋力に加え『剛力』が高い。獲物は4枚刃のロングメイスだ。『棍棒(メイス)』と『盾(大型)』が生えているので大型のシールドを持っているのだろう。

 正しくリズの正統進化形だ。熊と殴り合える装備だ。


 正直、斥候職は喉から手が出る程欲しい。ロットに過剰に負担をかけているのでさっさと軽減しないとそこが脆弱性になりかねない。また斥候同士の意見の違いと言うのも、聞きたい。

 鍛冶師は言い方が悪いが、武器防具の整備や開発にネスの手を借りなくても済むようになる。材料と場所は揃える必要は有るが格安で揃える事が出来るようになるのも美味しい。


「現状の人数と合わせると、達成料は下がるかもしれないですが、その辺りはどうお考えですか?」


 ぶっちゃけた金額をはっきり聞いてみたが、8等級の平均よりも圧倒的に少ない。どう考えても整備費用を除けばぎりぎりの生活の筈だ。

 うわー、断る理由が無いわー。色々考えてみたが、メリットが大きい。


「私がリーダーと言う事になりますが、その点に関して不満は有りますか?疑問でも良いです。率直に言って下さい」


 と聞いてみたが、特に不満は無いらしい。ティアナも積極的にリーダーをやりたい訳でも無く、人材がいない為頑張っていたようだ。

 疑問に関しても、パーティーとしての運用や実際の活動に関してだったので、事細かに説明をしたら大げさに納得していた。


「では、明日は休養日ですので、本日他のパーティーメンバーと会ってみますか?人となりも気になるでしょう」


 そう言って、2人を連れて、下の鑑定受付に向かった。


 フィアが相変わらず、目がお金マークだった。今回の熊に関しては、雄と言う事で色々高くなった部分が有ったのと、肉に関しても冬に向け保存食への加工材料としての品薄も有りじわじわ高騰中だ。

 極めつけは、毛皮が状態が良く敷物として使えるサイズと言う事で、一気に高騰している所為でとんでもない額になっていた。

 狼の毛皮の高騰も同じくだ。それにその他のスライムの核等が合わさる。正直パーティー資金を入れても頭割りで15万を超えた。意味が分からない。熊すげぇ……。

 達成数も、熊で1、狼で6だ。ロットを除いて、皆仲良く達成数3になった。


 新人2人は金額を聞いて、目が点だった。申し訳無いが、今までの1回の報酬としては桁が一つ違う。そりゃ驚くわ。私でも今回のは驚いた。


 で、エントランスの広いスペースで面談を行ったが、全員不満は無いようだ。

 ティアナの口調でちょっと高慢な印象を受けるかなと思ったが、話し方は生まれの所為で本人は至って素直な良い子だった。

 ドルは寡黙気味だが、きちんと受け答えは出来る。真摯さも滲み出ている。

 と言う訳で、明日の完全休養後、明後日から一緒に活動する事になった。一旦パーティー資金を配分して、再度徴収する。2人もそこまで蓄えが無い訳では無いので納得してくれた。


 まだ時間が早い為、他の皆は訓練でフォーメーションや役割分担のチェックをするとの事だ。


 取り敢えず、ギルドには一旦募集を打ち切ってもらった。これ以上増えると管理出来ない。


 私は、取り敢えず荷車2号の生産をお願いしに木工屋に走る事にした。肉もこの気温なら1日程度なら関係無い。1回の遠征で2匹を目標に頑張ってみよう。

 後は鍋を大きい物に変えないといけない。下取りはしてくれるので、急いで対応してもらおう。


 明日の打ち合わせの件も有る。一気に忙しくなってきた。

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