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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第106話 週の平均睡眠時間が1時間の時は死ぬかと思いました

 リズを中心に熊の解体を進めて行く。今回は雄らしく、色々と薬師ギルドに高く買ってもらえる部位も多く、ありがたい獲物だった。

 ロットには、走り書きの今回の経路をもう少し詳細に詰めてもらっている。これに関しては、ギルドに提出する資料の基になるので、慎重に記載してもらっている。


 村までの道程で幾つか見つけておいたポイントで村になるべく近い場所を目標に移動を開始する。今回も前回よりは小さめと言っても、かなりの量を搭載して進む。重いぃ。

 もう熊は狩る事は無いので、道中の獲物は根こそぎ狩って行く。特にうようよいるスライムはフィアが目の色を変えて狩っている。


 スライムに関してだが、正直、8等級辺りのパーティーにならなければ狩場までは辿り着けない。でも対象が9等級扱いなのは、見つけてしまえば狩るのは容易なので、8等級扱いにすると一気に8等級をクリア出来てしまうからと睨んでいる。

 ちなみに、チャットに詳細を聞いたのだが、スライムの核から改めて成分を抽出しないと魔道具の基盤の材料にはならない。魔道具の基盤の材料になるので、需要に供給が全く追いついていないそうだ。

 特に、大規模な蓄魔装置になるサイズの核は、圧倒的に足りない。前のヒュージスライムの核のサイズを伝えると、涎を垂らしそうな顔で羨ましがっていた。大規模な魔術、例えば大量の水を生み出す装置等に使われるそうだ。


 私にとっては重くて辛いが、荷車の積載量にはまだ余裕が有る。このまま行けば今回も、稼ぎとしては破格で終れそうだ。


 こうやって稼いでいると悪目立ちしそうなものだが、他のパーティーの稼ぎはギルド側では秘匿事項として、絶対に漏らさない。自分達が酒場で叫ぶ等の阿呆な行為をしない限りは、ばれない。

 ただ、メインで何を狩っているかや、大物を狩った場合には鑑定途中の状況を覗き見て、ばれる事が有る。前に知らない人から『薬草』と呼ばれたのもそれが理由だ。


 まぁ、稼ぎが良いから何かされると言う物でも無い。稼ぎが良いと言う事は、実力が有る事の証なので、そうそう手出しは出来ない。ただ、闇討ちなどには警戒が必要なので、人間関係は面倒くさいなとは思う。

 ただ、冒険者ギルドに登録した際にも警告されたが、他の冒険者を明確に襲った事実が発覚した場合は、物凄く重い罰が有る。我々も、間違っても先に手は出さないように皆には伝えている。


 そんな感じで、現実逃避しながら、ポイントについたのは夕暮れも差し迫った頃だった。

 早速、野営の準備をし始める。獲物に関しては昼の分が大分残っているので、リズには野草の採取をお願いした。


 空を見ると、かなりどんよりし始めているので、夜半は雨の可能性が高い。私のシフトを後ろに回して、雨の際には私とロットが見張りに立とうと考える。

 視界が悪くなると、正直焚火の灯りでは、敵を視認出来ない。『警戒』頼りになってしまう。その為の人選だ。マントとテントの効果がやっと確認出来るなとも考えた。


 焚火に関しては、雨が降っても大丈夫なように大きな木の下で用意をした。普通のパーティーは水の確保の為、水源近くに陣取るが、水魔術を使える人間がいるだけで自由度が広がる。

 また、我々は、水を持ち運ぶ必要も無い。これも効率を上げている要因だろう。水は兎に角、場所と重量を割く必要が有る。必須なだけに厄介なのだ。

 ちなみにもしもの時の為、各自水筒は持参している。革の水筒だが、減れば私が補充している。あまり長時間同じ水を入れておくと革の臭いが移って飲みにくいので、木筒の水筒でも作りたいなとは思う。


 本日の夕ご飯の担当は、チャットだ。慣れている感じで、手早く用意を進めて行く。まだ入ったばかりだと言うのに、他の人間とも打ち解けている。

 苦労性と言う一面も有るが、根が素直で優しい性格と言うのが大きいのだろう。それに付き合いが深まり分かったのだが、思ったより感情を素直に出すタイプだった。訛りに騙されていた気もする。


 空が茜色に染まり、もうすぐ夜が始まる頃には、美味しそうな匂いが周囲を漂っていた。同じ様な材料を使っていても、各自で個性が出るので飽きる事は無い。


「今回も目標が達成出来て幸いです。今日の野営でも狼が出る可能性は高いです。見張りは気をつけて警戒して下さい。雨の可能性も有りますので、そこは私とロットでカバーします。では、食べましょう」


 そう言って、食事を始める。串焼き一つとっても、色々香草を塗してあり、スパイシーな感じになっている。料理が得意と言っていたのは伊達では無い。

 スープも、色々な具材のうま味が合わさって、滋味溢れる物になっている。この子、謙遜しすぎじゃないかと思ってしまった。

 

 他の人間も、嬉しそうに食事を続けている。将来的に男爵領で開発が進み色々調味料が開発出来る様になったら、もっと豊かな食事風景になるのかと思えば、楽しみでもある。


 食事を終え、今回の狩りに関しての反省や、オークへの対応に関して皆で話し合う。それぞれがしっかりと意見を持っているのは素晴らしい。

 そんな感じで食休みを終え、各自で睡眠に入る。


 空はますますどんよりとなっている。前番に関してはリズにお願いした。中番が私、後番がロットの順番にした。

 今回はちょっとロットに無理をさせているので、一度完全休養日を挟もうと考えている。明日の朝にでも提案しよう。稼ぎはかなり良いので、無理をする必要も無い。


 そんな事を考えながら、ロットと同じテントに潜り込む。


 夜半過ぎに、パラパラと言う雨音が聞こえて来て、意識が覚醒した。テントも新しい為か水漏れも無い。やっぱり全然違うなとは思った。

 荷車の方は、熊の皮で覆っているので肉に雨がかかる心配も無い。寝直すには微妙なタイミングだったので、そのままリズと変わる。


 木の下でも小雨が吹き込んでくるが、マントに包まっている限り、そう寒さは感じない。如実に効果が出る物だと感心した。


 『警戒』の訓練も兼ねて、範囲を広げられないかと練習をしていたら、予想通り狼達の群れが接近してきていたのを端の方で感じる。焚火から離れて闇に眼を慣らしてから、静かにホバーで後ろに回り込む。

 気付いた狼が寄って来るのを確認しながら、一匹一匹確実に処理をしていく。大きめの群れだったらしく、10匹が積まれた。流石にリズは寝たばかりなので起こせない。隅に積んで明日の朝対応をお願いする事にした。


 それからも、襲撃は続いた。雨が降っていても血の臭いは拡散するのか、狼が寄って来る。

 襲撃の間は暇だったので狼達の内容物等をチェックしてみたが、あまり食べていない。痩せ細った個体も多い。秋口の獲物が多い季節にこれはおかしい。指揮個体が暴れていた余波が生態系に影響を及ぼしているのかと考える。

 正直、このままロットに変わったとしても、襲撃の度に起こされそうだったので、ロットを起こし、このまま朝まで見張りを続ける旨を伝える。明け方に仮眠を取れば何とかなるだろう。


 その後も懲りないのか、飢えが限界に達しているのか、延々襲撃は続いた。狼の血の臭いも拡散しているので、危険なのは分かっているはずなのに、それでも襲ってくる。

 他の小規模なパーティーでは、この状況は危険だろうなとは思う。この辺りもギルドには報告しておこうと考えた。


 明け方になり、襲撃は終わった。雨も止んでいる。

 隅に積んでいた狼も小山の様になっている。数えると32匹となった。捌くのだけでも一苦労だろう。


 日が昇ったので、皆も起き出してきた。戻ってからの完全休養と、狼の処理の件を伝え、私は食事の用意が終わるまで仮眠に入った。


 声をかけられ、ぼーっとしながら、起き上がる。1時間程度の睡眠だったが、朦朧としていた頭はかなりすっきりとしていた。

 外に出ると、小山の様だった狼も皮を剥がされてまとめられていた。リズ凄い……。


 本日に関しては、経路の敵を殲滅しながら、1日かけての帰還となる。諸注意と特に、昨日の雨の影響によるぬかるみに対する厳重な警戒は強く指示した。


 後は、必死で荷車を引く簡単なお仕事だ。ホバーを使っていると分かるのだが、体重はかなり増えた。

 太ったというより筋肉が付いたと思うのだが、視線を下に向けても光景は変わらない。本格的にお相撲さん体形になるのを覚悟するべきだろうと諦めた。


 帰還の途に関しては、私抜きでもさくさくと処理が進む。流石にロットの広範囲な『警戒』からの、『隠身』での急襲のコンボの運用も板について来た。

 ぬかるみに対しての注意もきちんと出来ており、怪我一つ無く先に進む。危険な場合はチャットのフォローも入る。

 大分パーティーとしての形も固まって来た。良い事だ。

 フォーマットとしての運用が固まるからこそ、そこからの発展が望める。そういう意味では理想的な展開だ。


 大きな怪我も、危険も無く、昼過ぎには村に到着した。

 皆には、鑑定をお願いし、私はギルド側に報告をする為、受付嬢に声をかけた。すると思ってもみなかった事が2点程伝えられた。

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