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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第105話 卵でとじたスープは好きです

 薪を拾い、焚火を起こしていると採取に出ていた仲間達が、続々と戻って来る。


 その中でも、リズが鳥と共に、小さな羊か山羊か分からない生き物を狩って来てくれた。地球でも、羊と山羊の見分けはつかないが、この世界でも同じなのだろう。

 『認識』先生で調べても、生態とヤムタと言う名前と毒が無い事しか分からない。まぁ、どちらかの近縁種なのだろう。

 

 実は森で偶に見かけていたのだが、リズに手出ししないように止められていた。仲間意識が強く、一匹に手を出すと、周囲のヤムタがわらわらと集まって攻撃されるらしい。

 角も有るので、思わね怪我をする可能性も有る。今回は、はぐれた個体がいたので狩ったそうだ。子羊のローストとか聞くと、かなり美味しそうなイメージだ。胡椒を効かせて焼いてしまおう。


 時間は有るので、鳥ガラからスープを作って行く。今回は鳥の巣が見つかったようでいつも食べている卵も拾って来てくれた。鳥の身は夕ご飯にしよう。

 野草たっぷりの羊のモツ煮込み風に卵をふんわりと合わせる感じを想像しながら、料理を進めて行く。調味料が無いので色々味の工夫をするのが大変だ。

 まぁ、日本の調味料の数がおかしい気もするけど。どの国のスーパーに行っても、あんなに多様な国の調味料を置いているのはそう見た事が無い。


 鳥ガラから出汁を取りながら、野草の詳細を確認して、切り分けと投入のタイミングを想定して行く。徐々にガラからの香りが周囲に漂い始めた。


 そんな中、チャットの手が空いたのだろう。少し真剣な表情で詰め寄って来る。


「すみません、お忙しいとこ。リーダーはん、あれは風魔術やんねぇ?あんなんなるの、見た事ないですわ……。内側から弾けてましたし……」


「先の熊の件?んー。はぐらかす訳では無く、私の育ちが特殊でね。風がもっと狭い空間に密集したらどうなるか想像は出来る?」


「密集ですか?風がつよなる感じでしょうか……。具体的には浮かびません。それが、あの風魔術のイメージゆうんですか?」


「私の故郷では、小さな丈夫な容器に空気を入れて行ったら最後にどうなるかっていうのは割と実験されていたんだ。そのイメージが鮮明に残っているから、あんな感じになるんだよ」


「そんな事をしてはったんですね……。分かりました。詳しゅうは聞きません。また時間の有る時でもイメージを教えてもらえたら嬉しいですわ」


 チャットがはんなりと微笑む。こう見ているだけなら深窓の令嬢なんだが。


「それは構わないよ。レクチャー出来る物はレクチャーするよ」


「風魔術にまだ、可能性がようけ残っている。それだけでも、心が躍りますぅ」


 根っからの研究者なんだなと微笑ましく思った。

 ロットの帰還まで、2時間程度を想定している。焚火の周囲で焼くなら、そろそろ焼き始めないと間に合わないなと串に刺した羊もどきの肉を火で直接炙り周囲を固め、焚火の外側に刺して行く。


 普通のパーティーだと、食料調達は想定しない。野草を採って適当に鍋で煮込んで味付けして食べる程度だ。リズがいるからこそ、この食生活が保てる、リズに感謝しないとと改めて思った。


 忙しなく用意を進めていると、ロットが帰って来た。2時間弱くらいだ。大体想定していた通り。慌てた様子は無いので、話は後回しにして料理を仕上げて行く。


 カップにスープを注ぎ、木皿に子羊もどきの焼いたやつを盛り付ける。


「じゃあ、ロットが頑張ってくれたおかげで情報が有る程度掴めそうです。お疲れ様でした。寒かったと思うので温まって下さい。食べましょう」


 そう言うと、皆が食べ始める。スープに口付けると澄んだ鳥の味に野草の香り、子羊の臭みが調和し、悪くない感じで仕上がっている。

 もちろん、子羊もどきを焼いたのも、中まで火が通っており、肉がするりと外れる。柔らかくジューシーで歯ごたえもほぼ無く、口の中で噛むと肉汁を出して消えて行く。そんな感じだった。


「うま……。リーダー、また料理上手くなってるじゃん。これに追いつけとか無理じゃん」


 フィアが、にまにましながらも文句を言ってくる。精進してくれとしか言いようが無い。

 他の3人も嬉しそうに食べている。特にロットは戻って来た時には寒さの所為か、かなり震えていた。今は卵ふんわりのスープを飲んで落ち着いてきている。


「美味しいです。それに温かい……。助かります」


 ロットが心底温まった感じでにこやかに微笑む。良かった。さっきまでは青い顔をしていた。


「実際の所、追跡は上手くいった?」


 食事も落ち着いて来たようなので、聞いてみる。


「結論としては、拠点までは把握出来ませんでした。5km圏内のまだ奥に向かっていました。途中、他の正体不明な大型動物ダイアウルフと思われる気配も拾いましたので、今後は感じ分ける事が出来ます」


「危険は無かった?」


「基本的には『警戒』の限界範囲で追跡していましたので、こちらを認識は出来ていないようです。一度近くまで接近して姿形と容貌は確認しました。オークです。基本的に陽動は無く真っ直ぐ進んでいましたので。住処もこの直線上と思われます」


 紙を出してくる。今までの活動範囲の紙と照らし合わせて、大体の場所を確認する。かなり森の奥だ。ダイアウルフに遭遇した場所辺りよりも奥になる。

 また、ダイアウルフを感じたと言う事は、これ以上奥に行った場合、鉢合わせすると言う事にもなる。冒険者ギルドに報告の上、今後の方針を決めないといけないな。

 ロットが異動する際に目印は刻んでいるので、追跡は可能だ。その辺りを含めて報告するか。

 後は、例の罠の意味が分かった。オークは我々とは別の浅い所から森に侵入し、徐々に奥に進んで行ったのだろう。あの罠はその時に仕掛けた物を回収し忘れたか、放置した物だ。どう考えてもこの距離で狩りの範囲と言うのは無い。


「方針に関しては、熊も狩れたので、一旦後退し、そのまま村まで戻り、ギルド側に報告をして判断を仰ぐ。今晩は野営となる。皆、そのつもりで」


 焚火が消えるまでは食休みと言う事で、ロットも体を温めるのに集中していた。フィアがそっと横に座り込んで抱擁してあげているのが微笑ましい。

 まぁ、熊の解体を並行してリズが行っている。チャットも覚えると言う事で助手としてついている。


 私はまた、あの大荷物の運搬かと少し心が重くなっていた。流石にメタボのサラリーマンにはきつい。前に樽に浸かっている時に気づいたが、腹は凹まないのに、足の筋肉はかなり発達していた。押してもむっちりと筋肉が詰まっていた。

 ますます、お相撲さんみたいになって行くなと嘆息した。

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