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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第104話 褒める行為は人間関係を円滑にするのに重要です

 本日の収支としては、頭割りで5万前後は稼いでいる。8等級の稼ぎとしては間違い無く、破格だ。要因はパーティーの関係と荷物の圧迫を気にせず行動出来る事だ。


 通常のパーティーはリーダーの指示で動くだけの集団だ。元々面識の有る仲間等なら別だが、ビジネスパートナーとしてのパーティーはそんなものだ。

 そうなると、リーダーの指示以外の事は極力しない。ビジネスライクに付き合っている。お互いがお互いにそう認識し合っている。そこには創意工夫は生まれない。


 何らかの目的を共有して行動するパーティーはそこに至るまでに創意工夫をする。そこで大きな違いが出て来る。

 リーダーがビジョンを明確に提示出来れば、仲間は創意工夫をして叶えようとする。そこに個々人の利益がはっきりと見えるからだ。


 現状では、このメンバーのビジョンとしては、男爵領の発展とその中で重要ポストに就く事だ。メリットの享受はビジネスの基本なので何も思わない。逆に欲が無い人間の方が読み難い。

 その為には、冒険者兼業と言う方針を打ち出した私をどうフォローするのかと言う考えになって来る。要は短期目標が冒険者としての実力向上とその為の資金稼ぎとはっきり認識している。


 正直、この面子だが、かなり勤勉で優秀だ。村の冒険者で自主的に訓練している人間を見る事は少ない。

 大概その努力している人間はギルドの成績も良いし信用も有る。明確に冒険者として大成したいと努力するからだろう。


 また、敵の倒し方や発見に関しても効率が上がって来ている。ロットが『警戒』範囲の相手への経路を最短に処理しているのも有るし、リズやフィアも『警戒』と『隠身』を使って急襲の成功率を上げようと必死だ。

 チャットも元々後衛に特化していたが過剰帰還を抑えた上で、効率的な運用が出来る様に考えている。


 荷物に関しては、遠征は食料と戦利品との戦いだ。食料が無ければ生きられないが、戦利品を持ち帰る為にはどこかで妥協しなければならない。ポーターも人間なので、食べるのだ。

 荷車に関しては、そもそも食事をしない。その上80kgの重量までは耐える。80kgは2人から3人分の積載量だ。そりゃ、効率が段違いになる。


 そんな事をぼけーと、本日中番をしながら考えていた。『警戒』で周囲は確認しているので、考え事でもしていないと寝てしまいそうだ。


 何故そんな事を考えていたかと言うと、先程確認した時にチャットに『隠身』が生えていた。

 皆で急襲の際に見つからない重要性を教え込み、実際の方法を教え込んでいたのだ。でも、この短期間で生えるとは思っていなかった。

 ただ、ロットや他の人間に頼っている為『警戒』は生えていない。そこも良し悪しだなとは思う。専業化は効率を上げるのに良いのだが、何か有った時に脆い。


 冗長性を考えるなら、『警戒』と『隠身』だけでも皆が取得し、伸ばせる環境が作りたい。敵を狩るのに、大げさな技も物凄い力も現状、必要無い。

 稼ぐなら、最低限の殺傷力で相手に気付かれない内に狩れればそれで良い。また、ロットを始め目を潰された際に、最低限敵から身を隠せる事も大きい。

 訓練出来ないか、皆で相談してもらおうかなと決めた。


 そう言えば全然関係無いが、この世界でそれなりに森の中に入っているが、マダニや蛭等の凶悪な吸血生物に遭遇した事が無い。正直、蛭は覚悟したがそれも無い。

 良く物語やゲームで森の中や山の中で活動するシーンに、そう言う場面が無いのを不思議がっていたが、実際に自分自身がそうなると疑問で仕方無い。

 まぁ、考えても遭遇しない物は遭遇しない。逆にありがたい状況なので享受しておこう。


 そんな取り留めの無い事を考えていたら、後番のフィアが起きてきたので交代した。ちなみにローテーションは厳密な形では回していない。

 体調等も有るので、その日その日で相談しながらなるべくローテーション通りに回す運用だ。厳密にしてしまうとどこかで無理が出る。不公平感はこの際関係無い。実利の問題だから皆納得している。


 ちなみに、体調の件で連想したが、この世界にも生理は有る。その為の用意も各員がしっかり準備している。

 ただ、加護を受けている間は、周期がほぼ確実に安定するし、出る量も痛みも少ない。情緒不安定になる事も無い。ニキビや吹き出物も無くなるらしい。

 その辺りを聞いた時に、低用量ピルを思い出した。出産を司る神がプロパティを弄る時に参照しているんだろうなと思いつつ、眠りについた。


 朝起きると、食事の準備が始まっていた。本日の当番はフィアだ。そこはかとない不安を感じながら、野草の採取に走る。

 結論としては普通の鳥のスープが完成していた。可もなく不可も無く、普通のスープだった。良かった。安心した。


 ロットは、スープの味を褒め称えている。取り敢えずおいたが発覚した後、ロットを捕まえて褒める重要性は叩き込んでおいた。この世界の人間の感覚だと、何時破局するか怖い為、妥協はしない。

 フィアも満更でも無いようで誇らしげな顔をしながら、ロットといちゃいちゃしている。

 残りの2人は至って普通の顔でスープと保存食を食べている。まぁ、そんなものだろう。

 

 食事を済ませ、後片づけを終えると、出発だ。


 森の中心付近を緩やかに蛇行しながら川が流れている。前回の熊を沈めたのもその流れの一部だ。現状はこの川を目安に、蛇行しながら熊の痕跡を追っている。

 熊が、水分の確保、食料調達で川を利用する頻度は高い為、その方針で進めている。


 歩き出して間も無く、ロットが熊の痕跡を見つける。川辺の湿った土にくっきりと足跡が残っている。前回の熊よりは小さめだが、十分な大きさの足跡だ。


「かなり新しいです。獲物は近いです。追跡を開始します」


 そう言うと、足跡から方向を導き出し、ロットが先導を始める。ここからは狩りは最低限で熊の追跡に集中する。

 1時間程、森の中心からややずれた方向へ進んだ所で熊を発見した。

 前回よりは確かに小さいがそれでも比較すれば程度だ。やっぱり怖い。


 ちょっと泣きそうになりながら、ロットの釣って来たのをリズ、フィアが怯ませ、私が牽制を担当する。

 パターン通りに進み、必死ながらもこのまま何も無ければ、大事は無さそうだと思った時だった。


「正体不明の大型の生き物を『警戒』が捉えました」


 言われた瞬間、すぐさま判断をした。熊に関しては即時、風魔術で喉元を爆散させる。脳味噌も薬師ギルドに売れるので頭を爆散は出来ない。

 攻性の風魔術を披露したのは初めてなのでチャットが驚愕の顔で見ていたが気にしていられない。

 深追いは危険だが、様子は確認したい。身軽に動ける人間に単独で動いて貰うか……。


「ロット。対象の生き物を『警戒』範囲に置いたまま追跡。目的は対象の拠点確認。無理に相手を確認する必要は無い。対象がダイアウルフと判断した場合は即時撤退。5kmまでの追跡は認める。一切の戦闘行動は禁止。その条件で追跡は可能?」


「戦闘を回避するなら可能です。行ってきます」


 そう言うと、ロットが静かに走り出す。5kmか……。最長で往復2時間かな。

 取り敢えず、倒した熊の処理はしないといけないので、残ったメンバーで必死に持ち上げて、体勢を整えて血抜きをする。この度に思うが、何か器具を開発したい。

 血抜きが完了した後は、川までまた必死で引きずり、縛った状態で岩に固定した。冷える時間を考えると、今日はこいつを解体して後退して野営かな。

 無理をすれば村までは戻れるが、そんな時間に戻ってもギルドが閉まっている。意味が無いし、危険だ。


 色々とチャットが聞きたそうだったが、それなりに緊迫している状況なので、またゆっくりとした機会に説明すると伝えた。


 取り敢えず、拠点が分かれば良し。駄目でも方角だけでも分かれば探索範囲は狭められる。攻めるにせよ、守るにせよ、情報は絶対に欲しい。

 性格上、指示した以上はロットが無理をする事は無いが、事故が無い訳では無い。誰か付ければとも思ったが逆に足手纏いだ。


 無事を祈りながら、帰ってきた後の事を考え、お昼ご飯の準備を始める事にした。

 大分冷えて帰って来るだろうから、せめて温かい物だけでも用意してやりたい。

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