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鏡の伊勢、剣の甥  作者: 讃嘆若人
第二部 陰陽干犯篇
36/61

15.剣のヤマトタケル-5

「なんか、今日は良いことが起こりそうね。」

「ふ~む、俺が占いをしたところ、なんかややこしいことが起きるとあったが・・・。」

「もぅ、それは兄さんが占いをしたからじゃないの?占いって、する人の心境を表すんでしょ?兄さんもちゃんと光明思想でいないと!」

「わかった、わかった、それは確かにお前の言う通りだな。で、美夜受(みやず)姫、お前の今日の仕事は何なんだ?」

「ああ、兄さん!そうなのよ、今日はちょっと大変なのよ!」

「どうしたんだ?」

「神事に使う布を綺麗にしないといけないの!」

 ところは尾張の氷上。

 この兄妹は尾張を支配する一族、尾張国造家の若き当主・建稲種(たけいなだね)公とその妹の美夜受姫である。

「そうか、じゃあ、洗濯頑張ってな。」

「なんか冷たい!」

「じゃあなんて言えばいいんだ!教えてくれ。」

「う~ん、なんだろ?」

「・・・・オチがないんだな。」

「ごめんね!今度はもう少し面白いオチを用意するね!」

「いや、もういいよ。じゃあ、洗濯に行ってらっしゃい。」

「可愛い妹が一人で行くのは心配じゃないの?」

「そうだな、こんなに可愛いのにいつまでも独身は可愛そうだ。はやく立派な旦那さんを連れて帰って来い。」

「ちょっと!そう言う意味じゃない!というか、普通、逆でしょ!?」

「いいか、村の若者に会う度に『建稲種公様~!妹様にこっぴどく振られてしまいました!』と泣きつかれたり嫌味を言われる俺の気持ちにもなってくれよな?」

「私が振った男、70人ぐらいだけどなぁ。」

「・・・・それ、村の若い男から既婚者を除いた数よりも多いぞ?」

「全く、こんな可愛い私を正妻にしないとか、論外よね!」

「・・・・なんと反応すればいいんだ?」

「それじゃあ、行ってくるね!」

「あ、じゃあ行ってらっしゃい。」

 美夜受姫は洗うための布を取りに行った後、

「そうだ!神様に私の半身をお願いしよう!」

と思い氷上の産土(うぶすな)の神様に手を合わせて

「神様!もし御心ならば私に理想の半身をお与えください!身長は10尺(約二メートル)で容姿端麗、力も強い武人で、しかも由緒正しい貴族な旦那さんです!そういう人がいたら私の半身として一生彼に尽くすので、お与えください!」

と言挙げした。

「さぁて、それじゃあ川に行こうか!」

 そう言いながら川に行き、布を清流に晒していると後ろの方から声が聴こえる。

「ここら辺だよな?」

「ああ、もうそろそろ氷上の里のはずだが。」

 そっと後ろを見てみると、武骨な男がたちが何やら話をしている。関わりたくないのでまた前を見た。

「氷上の里はどこにあるんだよ!腹が減って仕方ないぞ!」

(何?あの男たち、盗賊?)

「こらこら、お前たち少しは落ち着きなさい。」

「しかし、大将!俺たちどうも道に迷ったようですぜ。」

「わかった、じゃあ私が道を聞いて来よう。」

「おお、流石大将!」

「ところで、人影が見当たらないのだが・・・。」

「あ、大将!あそこに女の子がいます!」

「よし、あの子に道を聞いてくるからお前たちはそこで待ってろよ?」

「おお!よろしくお願いします!」

(ちょっと!あんな怪しい集団と関わりたくないんだけど!)

 どんどん足音が近づいてくる。

「ちょっとお嬢さん?」

(何も聞いていない、何も聞いていない)

「氷上の里ってどこにあるか知ってる?」

(それ、そもそも私の家がある所だし。)

「ねぇ、もしかしたら耳が聞こえないの?」

(そうか!耳が聞こえないことにすればいいんだ!)

 そう思った美夜受姫は頷いた。

「おい!聴こえているじゃないか!」

「あ。」

 自分の失策に気付いた美夜受姫は後ろを振り向く。

「え?」

 そこに立っていた男は、まさに2メートル近い身長で容姿も端麗な男であった。

「あの、どちら様ですか?」

「大和の大王・大帯彦の息子の大和建だ。」

「え!?あの筑紫と出雲の大王を殺したという最強の王子!?」

「あ、そう言う風に広まっているんだ。なんかありがとう、でいいのかな?」

「私、美夜受姫と言います!氷上の里は私の家がある所ですよ!ぜひ来てください!」

「あ、ああ。というか、姫って国造家の娘か何かか?」

「あ、はい!私の兄が今国造をしています!」

「そうか。私達は大和から毛人の国を征伐するために派遣された軍勢だ。よろしく頼む。」

「わかりました!ぜひぜひ、来て下さい!」




「よし、これで今日の祭祀も終わったし・・・。」

 そう言いながら建稲種公が一息つこうとしていると、

「兄さん!ただいま!」

ハイテンションな美夜受姫が帰ってきた。

「理想の旦那さんを見つけてきた!」

「ほぉ、誰かね?」

「あの人です!」

 そう言って美夜受姫は大和建を指した。

「そうか!」

 そう言うと建稲種公は彼が誰かを確認し、大和の大王の息子だと妹が言うなり大和建の方へ歩み寄って口を開いた。

「これこれは大和の地からはるばるご苦労様です。ところで、私の妹の美夜受姫ですがご覧の通り超美人で非の付け所のない素晴らしい女性であり、しかも、まだ独身です!ぜひ妃の一人に加えてやってください。」

「え?良いんですか!?ありがとうございます!」

「おお!さすがは大和の大王の息子、私の妹の良さがわかるとは!」

「いえいえ、あんな超美人は確かに居ませんもん!はい、とても嬉しいです!」

「おお!私としても妹を褒めてくださり、とても嬉しいです。あと、敬語は使わなくてよいですので。」

「いえいえ、義理の兄になる方に敬語を使わないわけにはいきません。しかしながら、私はこれから毛人の国の征伐に行かねばなりません。正式に婚姻するのは私の帰還後でよいですか?」

「おい、美夜受姫、それで良いか?」

「良いですよ~、何年でも待ちます!」

「だ、そうです。よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」


 大和建の東征はいよいよ緒に就いた。

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