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番外615 境界公の誕生日

 転移港の迎賓館で話をしていると次々と人がやってくる。

 まずヴェルドガル王国の面々。メルヴィン王やジョサイア王子、騎士団長のミルドレッド達だが、ジルボルト侯爵家の令嬢ロミーナや、グランティオス王国のロヴィーサといった、タームウィルズやフォレスタニアに滞在している面々も予定の頃合いより先にやってきたようだ。

 各国の王達がやってくる前に転移港で待機して出迎えを、という事だろう。


「おお、テオドール。今日は良き日であるな」

「テオドール公、今日はおめでとう」

「ありがとうございます」


 誕生日という事で祝福の言葉を口にしてくれるメルヴィン王やジョサイア王子に一礼を返す。みんなもメルヴィン王達に丁寧に挨拶をしていた。


「ああ、姫様」

「こんにちは、ネシャート」


 転移港にやってきた面々の中にはバハルザード王国からやってきているネシャートの姿もあって……同郷のエルハーム姫と笑顔で言葉を交わしていた。そして、どうやらペトラやロミーナもネシャートと同じくペレスフォード学舎に通っているから知り合いのようだ。

 同じくペレスフォード学舎に通うアシュレイやオフィーリアを交えて挨拶をしていた。


 ネシャートがやってきた時期は丁度グロウフォニカへ赴く時期だったからな。

 アシュレイやオフィーリアはペレスフォード学舎の学友として、ネシャートとはあまり会話できなかったというのもある。そんなわけで学友が増えてネシャートも笑顔になっていた。


 そうしてネシャートはメルヴィン王やジョサイア王子、俺や父さんといった顔触れに挨拶をすると、ダリルのところにも挨拶に行っていた。


「こんにちは、ダリル様」

「あ、ああ。ネシャート。元気そうで良かった。学舎の方はどう?」

「お陰様で充実した時間を過ごさせて頂いておりますよ」

「そっか。それは良かった」


 と、ダリルは嬉しそうに笑う。裏表のないダリルの笑顔にネシャートも表情を綻ばせる。


「ダリル様は如何しておりましたか?」

「んー。僕は……領地でいつも通りに過ごしていたよ。今年は豊作だし、領地も平和が続いているから良かった」

「ふふ。それは何よりです」


 そんな調子でダリルとネシャートは笑顔で和やかにやり取りしている。関係も良好そうで何よりだ。

 今日はシルン伯爵領のミシェルや、ベシュメルクのマルブランシュ侯爵も来る予定だからな。二人とは話題の合う顔触れだと思うので、そのあたりからも交流を深めて欲しいものだ。


 そうこうしている内に転移港に光の柱が立ち昇り、次々人が現れる。


 国内の知り合いの貴族達だ。今回はウィスネイア伯爵家の令嬢であるオリンピアもやってきて、俺達にスカートの裾を摘まんで挨拶をした後、嬉しそうにコルリスに抱きついたりしていた。そんなオリンピアの様子に、グレイス達も表情を綻ばせている。


 それから国外からの面々。エルドレーネ女王とその護衛であるウェルテス、エッケルスが姿を見せた。


「おお、テオドール。元気そうで何よりだ。今日は誕生日おめでとう」

「これはエルドレーネ陛下。ありがとうございます」


 笑顔で挨拶してくるエルドレーネ女王である。

 それに続くように次々と転移の光が立ち昇り、見知った顔が続々と現れる。

 オーレリア女王とその護衛であるエスティータら、月の民達。ベシュメルクからデイヴィッド王子とクェンティンとコートニー、パルテニアラとガブリエラ。マルブランシュ侯爵。そしてその護衛のスティーヴン達。


「ふふ、前に誕生日を祝いに行くと約束をしたものね。それに、ベシュメルクの人達と同じ日をお祝いする事ができて嬉しいわ」

「妾もだ。月の女王よ」


 と、楽しそうな様子のオーレリア女王とパルテニアラである。カルセドネとシトリアもスティーヴン達に再会できて嬉しそうである。


「デイヴィッド殿下もお元気そうで何よりです」


 そう言うとデイヴィッド王子は俺を見て、嬉しそうに手足を動かして楽しそうに声を上げていた。何度か会っているからな。顔を覚えてくれたのだろうか。


 東からはヨウキ帝やユラとアカネ、シュンカイ帝やセイラン、リン王女。ゲンライやレイメイ、御前、オリエに妖怪達といった顔触れも一緒だ。

 西からはデメトリオ王やバルフォア侯爵、コンスタンザ女王、ネレイド族、深みの魚人族と実にバリエーション豊かな顔触れとなった。


 そしてシルヴァトリア、バハルザード、ドラフデニアにエインフェウス。ハルバロニスの長老達と……近隣諸国の王や知り合い達も揃い踏みである。


「おお。これはテオドール様……!」

「今日はおめでとう」

「おめでとうございます、テオドール公!」


 と、みんなに代わる代わる祝福の言葉を掛けられて俺としても恐縮であるが。


「ありがとうございます。何と申しますか、年々誕生日の規模が大きくなっている気がしてここまでになると些か複雑な気分ですよ」

「くっく。まあ、功績を考えると詮方のない事であろうな。こればかりは慣れるしかなかろう」


 イグナード王は楽しそうに笑う。エインフェウスは獣王の座が世襲制ではないからな。イグナード王としては獣王になってから俺と同じような経験というか気分を味わった事があるのだろう。何となく実感が篭っていて俺としても苦笑してしまう。


 さてさて。これに加えてタームウィルズやフォレスタニアの知り合いであるとか、高位精霊達も加わるので……今年の誕生日はまあ、随分と賑やかな事である。




 まずはタームウィルズの街中を通って、王城にて公式に各国の王の来訪に対する歓迎の言葉と、俺の誕生日に関する祝辞を述べる、と言う事になっている。それが済んだらフォレスタニアに移動し、宴席という流れだ。


「――こうして平穏な日々が続き、同盟に名を連ねる各国との友好が深まっていく事を、余は喜ばしく思う。今日はその立役者であり功労者でもあるフォレスタニア境界公の誕生日である。当人は誕生日が大きな催しにならざるを得ない事に些か戸惑いがあるようではあるが……」


 と、そこで一旦言葉を切り、俺を見て微笑むメルヴィン王である。


「それでもだ。こうして集まった顔触れを見れば、沢山の者達が今日、この日を祝福したいと思っている事が伝わってくるというものだ。余も、今日という日が誰しもにとって喜ばしい、良き日にならん事を願っている」


 メルヴィン王は王城から練兵場に居並ぶ宮廷貴族や武官、文官といった顔触れにそう言って手を広げる。

 拍手と歓声が起きて、楽士隊が賑やかで楽しげな音楽を奏で始めた。俺達は楽士隊の先導で馬車に乗ってフォレスタニアへ、というわけだ。そうして俺達は王城の面々に拍手で見送られてフォレスタニアへと向かう。


 これから冬になる前に、地方から出てきてタームウィルズで過ごす各地の貴族も増える。

 メルヴィン王によればこの時期にこうして各国の王が集まるならば、同盟との友好関係を重視しているという姿勢を明確にしておけるから、冬に貴族達の間で持ち上がる話題もそれに沿った物になるだろうとの事で。


 俺達を乗せた馬車は沿道で拍手や歓声を受けながら神殿前に移動する。何やら街中までお祝いムードであるのだが。


 というわけで賑やかな雰囲気の中、みんなで連れ立って迷宮入口からフォレスタニアに飛んだ。

 フォレスタニアでも入口の塔から下の広場に降りればそこに馬車が用意されており、再びみんなで馬車に乗って居城へと移動する。


 フォレスタニアの街中も……タームウィルズ同様お祝いムードだ。屋台も多く出ていて、沿道の住民、観光客、冒険者といった面々も拍手と歓声で居城へ向かう俺達を見送ってくれた。


 さてさて。城ではセシリアやミハエラ達が宴の準備を進めていてくれるからな。こうしてお祝いに来てくれたみんなにも……楽しんでいって貰えたら嬉しいのだが。

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