16-40.「司法国家」シェリファード(4)
※2018/3/22 誤字修正しました。
サトゥーです。本格ミステリーは苦手ですが、刑事物のTVドラマはわりと好きです。尺が短いせいか、いきなり犯人が分かっていたり、あからさまに怪しい人物がいたりして、素人視聴者に優しいのがいいんですよね。
◇
「それじゃ、次いくよ」
中央神殿の巫女を通して貸し切りにしてもらった神前裁判の部屋で、オレは検証を行なっている。
検証を手伝ってくれているのは、孤島宮殿から呼び出した獣娘達とミーア、ナナ、ミトの六人だ。
今回は部屋を閉め切っているので、彼女達が差別の対象となる事はないだろう。
「ハンバーグは美味しい」
オレの質問に仲間達が次々に答える。
「あい!」
「はいなのです! ハンバーグ先生は最強なのですよ!」
「少し柔らかいですが、美味です」
「ハンバーグの美味しさは真理だと告げます」
「ん」
「そうね」
黄金の天秤がオレの方に傾く。
「今度は私の番ね? ハンバーグは微妙」
オレの対面に立つミトが、あらかじめ決めておいた質問をする。
「おう、の~?」
「そんな事ないのです! ハンバーグ先生はとってもとっても美味しいのですよ!」
「確かに柔らかさは微妙に感じる人もいそうですが、ハンバーグ自体は美味しいと思います」
「その評価には異議を唱えると抗議します」
「むぅ」
黄金の天秤に変化はない。
「その通り、微妙だ」
オレは思ってもいない事を告げたが、黄金の天秤は全く動かない。
口に出した内容と、心の中で思っている内容が異なった場合は、本心の方が優先されるらしい。
ふと視線に気づいて見下ろすと、哀しそうな顔のポチとタマがオレを見上げていた。
「微妙って言ったのは嘘だよ」
「せ~ふ」
「安心したのです。でも、嘘はいけないのですよ」
ほっとするタマと「めっ!」のポーズをするポチの頭を撫でつつ、これまでの検証を頭の中で整理する。
「――仕組みはだいたい分かった、かな」
オレは検証を終える。
「終わったのです?」
「ああ、皆のお陰で完璧に把握できたよ」
「お役に立てて光栄です」
「なんくるないさ~」
「それは何よりなのです」
「マスター、次のさぽーとは何かと問います」
「これで良かったの?」
検証を手伝ってくれた獣娘達やナナ、ミーア、ミトに礼を告げる。
彼女達は素直すぎるくらい素直なので、「黄金の天秤」の検証がすぐに済んだ。
オレは協力に感謝し、検証を手伝ってくれた仲間達を拠点へと送り返す。
もちろん、今回の協力のお礼に、ハンバーグのフルコースをご馳走する予定だ。
オレは部屋を貸し切りにしてくれた巫女に礼を告げ、都市の外れに停泊させてある飛空艇に戻る。
飛び立つ予定はないけど、ここなら防諜設備も整っているからね。
◇
「さてと――」
偵察先の建物の地下道に転移させたチュー太達が配置につくまで時間がありそうなので、空間魔法で情報収集をしてみよう。
「普通ならまずは王様からなんだけど――」
この国は古代ギリシャの直接民主政治に近い政治形態だから、王様がいないんだよね。
都市核を支配している人間がいるはずなんだけど、マップ検索ではそれらしい存在が見つからなかった。
もしかしたら、都市核も政治形態によって支配者を分散できたりするのかもしれない。
ちょっと興味があるし、暇な時にでも適当な都市核で試してみるのもいいかもね。
「とりあえず、中央司法局の長官でいってみよう」
オレはマップで検索した位置情報を基に、空間魔法を発動しようとして思いとどまった。
犯罪が横行するような治安の悪い国なら、逆探知系の魔法装置を備えているかもしれない。
それに、この司法国家シェリファードでは、司法局の上級官僚達が他の国で言う貴族のような地位なので、都市核の端末を持っている可能性がある。
そして都市核の端末があれば、対探知系の結界を張る事ができるんだよね。
なので、逆探知防止用の空間魔法を張ってから、空間魔法の「遠見」と「遠耳」を使う事にした。
中央司法局の長官は、でっぷりと太ったはげた初老男性だった。
『――誰だ!』
おおっと、予想以上に簡単に気付かれてしまった。
単なるかまかけの可能性もあるが、十中八九バレたと考えて良いだろう。
まあ、あらかじめオレが張っておいた対探知系の空間魔法で弾かれていたから、覗いてる事がバレただけで、オレが覗いていた事までは分からないはずだ。
「でも、変だな……」
日常的に監視される危険が無い限り、対探知系の結界なんて使う必要はない。
悪巧みの最中に使うならともかく、ただの書類仕事中に使うのはコスト的にありえない気がする。
「ふむ、長官が部下を呼ぶ様子がないな……」
空間魔法を解除した後もマップで確認していたのだが、長官が部下を呼んだりする気配がない。
もしかしなくても、長官は日常的に誰かに監視されているのだろうか?
まあ、長官の部屋は最優先諜報場所として賢者鼠達に指示してあるので、監視は彼らに任せるとしよう。
◇
賢者鼠が配置に就くまでそれなりに掛かるので、都市核の端末を持っていなさそうな人達を先に調べる事にした。
まずは衛兵局の衛兵詰め所を覗いてみる。
『疲れたぜ』
『愚痴はいいから手を動かせよ』
衛兵の一人がぼやきながら調書らしきモノを書いている姿が見えた。
それにしても、調書か――こっそり複製して汚職している者を特定できないか調べるのも良さそうだ。
『勇者サマが頑張ってるからな』
『まったく、どの勇者サマもあんな感じなのかね?』
『どの勇者サマも? 勇者サマが何人もいるみたいじゃねぇか』
『先代は一人だったけど、今代は四人いるって噂だぜ』
おっと、ちょっと興味深い話題だ。
試練とは関係ないけど、耳を傾けてみよう。
『四人もかよ』
『ああ、一度にまとめて召喚されたそうだ』
『へー、他はどんな勇者サマなんだ?』
『俺が知るかよ』
ふむ、「一度にまとめて」って集団召喚だったのかな?
その割に、サガ帝国で勇者メイコをマップ検索した時に、彼女一人しか勇者が見つからなかったのはどうしてなんだろう?
単に間違って伝わっているだけなのか、それとも勇者メイコ以外をどこか別の場所――おそらくはサガ帝国の「勇者の迷宮」か「血吸い迷宮」あたりで鍛えている最中だったのかもしれない。
そこに上官らしき青年が駆け込んできた。
『おい! 出動だ! 今度は中央区で酒の密造所が見つかったらしい』
『マジかよ』
『勇者サマめ、頑張りすぎだぜ』
オレはマップにちらりと視線を送る。
中央区で活動しているのは、勇者セイギではなくアリサ達だ。
すでにアリサ達は酒の密造所を離れて、次の悪党達の拠点に移動を開始している。
『ぼやいてないで働け! 勇者セイギ殿が頑張っている間に事態を収めねば、「爆炎」の勇者ユウキ殿が現れて根こそぎ灰にしてしまうぞ!』
『なんだよ、それ』
『勇者ってより、魔王じゃねぇか』
上官の言葉を聞いて呆れる衛兵達に同意する。
どうやら、勇者ユウキというのは魔法使い型の勇者らしい。
たぶん、オレ達と入れ替わりにガルレオン同盟に来ていた勇者だろう。
あんまり興味がなかったからスルーしていたけど、今回の試練の後にでも、エチゴヤ商会やシガ王国の諜報部に集まっている情報を閲覧しておいた方がいいかな?
「さてと――」
人がいなくなったタイミングで、調書を「万物引き寄せ」で無許可で借り受け、「録画」「理力の手」「並列思考」の魔法を併用して複製していく。
書写スキルを用いる事も考えたけど、こっちの方が早いんだよね。
◇
複製が終わったところで、オリジナルの調書を元の場所に戻す。
さらに複製したデータをストレージの機能で白紙の紙に複写していく。元々は交流欄のメモ帳を紙に複写するのに使っていた機能だ。
続いて、空間魔法の「遠話」の魔法をエチゴヤ商会のティファリーザに繋ぐ。
『ティファリーザ、忙しいところ悪いが資料の分析を頼む』
『かしこまりました、クロ様』
急な依頼なのに、ティファリーザはいつも通りの平坦なトーンで快諾してくれた。
オレは複製調書の束をユニット配置でティファリーザの執務室へと送りつける。
『どのような分析をご希望ですか?』
『犯罪組織ドゥヂィが実行したと書かれている調書の内、ドゥヂィが実行をしたと断言あるいは判定した者をリストアップしてほしい』
『承知いたしました。利益を得たと思われる者のリストアップは不要ですか?』
『そちらは可能ならやってくれ』
さすがに調書からそれを読み取るのは無理な気がする。
『クロ様、エルテリーナ総支配人から自分には何か任務がないか尋ねてほしいと――』
相変わらず支配人はワーカーホリック気味らしい。
『いや、特にない。支配人には通常業務に勤しむように伝えてくれ』
『は、はあ。承知いたしました』
微妙な感じのティファリーザの返信に少し首を傾げつつも、オレは遠話の魔法を終了した。
◇
「そろそろいいかな?」
賢者鼠達が配置に着いたのをマップで確認してから、オレは再度、空間魔法を使って調査を実行する事にした。
賢者鼠達には録画用の魔法道具を持たせてあるので、オレが揺さぶりを掛けた後の情報を録画して持ち帰ってもらおうと考えているのだ。
逆探知防止用の空間魔法を張ってから、空間魔法の「遠見」と「遠耳」を使う。
長官に再チャレンジする前に、中央司法局に三人いる副長官をターゲットに選んだ。
丁度、副長官の部屋に誰かが駆け込んだのがマップで分かったので、そいつから覗いてみる。
『ブーパ副長官、ゾドの密造所が摘発されたそうです』
『なんだと!』
なかなか、タイムリーな話題だ。
副長官は対探知系の結界を張っていなかったようで、オレの監視に気付かない。
オレは空間魔法越しの会話に耳を傾ける。
監視している賢者鼠達には録画用の魔法道具を預けてあるが、念のためオレも録画&録音の魔法を発動して、今見聞きしている情報を保存しておく。
『忌々しい勇者め! やつに付けたゴウ司法官は何をやっておるのだ! 勇者を下町の地下酒場に誘導してお茶を濁しておけと命じたであろうが!』
なるほど、勇者がやたらと下町あたりを摘発していたのは、彼らが誘導していたからだったらしい。
『い、いえ、それが、今度は勇者ではありません』
『何? また堅物の監察官か? それとも衛兵局の跳ねっ返りどもか?』
容疑者から外せそうな人物情報が聞けたのでメモしておく。
『どちらでもありません』
『では、誰だ? はっきり言え!』
『シガ王国のペンドラゴン伯爵の部下の方々が……』
映像の中で、イケメン中年な副長官が地団駄を踏みそうな顔で机を殴りつける。
『なぜ、そんな輩が我が国で衛兵のまねごとをしておるのだ! 即座に余計なマネを止めさせろ!』
『で、ですが――』
『何を躊躇う? 大国の上級貴族とはいえ、国交もろくにない遠国の貴族など恐るるに足らん。衛兵で足りなければ、国軍の兵士や騎士達を使え!』
――おや?
国交がほとんどないせいか、オレが「魔王殺し」だという事が彼らに伝わっていないようだ。
まあ、勇者セイギがオレの事を「魔王殺し」と呼んでいるのを、この国の裁判官や衛兵達も聞いていただろうし、そのうちに広まりそうな気はするけどさ。
『違うのです! ペンドラゴン伯爵はウリオン中央神殿であの試練を受けておいでなのです』
『試練? なんだ、それは?』
神の試練は知名度が低いのかな?
『ごぞんじないのですか? ウリオン神の試練です。悪を暴き、正義を世に知らしめる、あの試練です』
『それを他国の伯爵が?』
首肯する部下に、副長官が「だからどうした」と怒鳴りつける。
『試練の事は民草でも知っています。それを邪魔すれば、何か後ろ暗い事があると喧伝するようなものではありませんか!』
部下の言葉に副長官がぐぬぬと唸る。
副長官は知らなかったようだが、試練の事は神殿の礼拝や昔話かなんかで民衆に周知されているらしい。
とりあえず、この二人は黒みたいだ。
オレはマップを開いて次の候補を捜す。
今の副長官のように、タイムリーに怪しい者はいなかったものの、密談が行われてそうな場所を見つけたので、衛兵局の局長室を覗いてみる。
『局長!』
『また君かね、スタリー監察官』
とってもメタボな監察官が汗をふきふき、ロマンスグレーの局長に噛みついている姿が映る。
『塩の密輸犯が捕まったと伺いましたが?』
『うむ、犯人の獣人なら、悪徳都市――いや、都市国家ドドブへと逃亡中に追跡捜査官が捕縛した』
『それで、その犯人はどこに収監されたのですか? 今度こそ密輸犯の黒幕を押さえねば』
顔を近づける監察官を、局長が押し返す。
押し返すときに汗が付いたのか、ポケットから取り出したハンカチで手を拭いながら、監察官の質問に答える。
『それなら、判明している。捕縛した捜査官が尋問の末に「犯罪組織ドゥヂィ」の構成員である事を自白しているよ』
『――ドゥヂィ!』
監察官が親の敵の名前を耳にしたように声を荒らげた。
『ドゥヂィ! ドゥヂィ! ドゥヂィ! また、ドゥヂィだと言うのですか!』
『声を抑えたまえ』
局長が厭そうに顔をしかめる。
『今度こそ、ドゥヂィの本拠につながる手がかりを掴んでみせます。その犯人はどこの留置所に収監されてるのですか?』
『ああ、それなら留置所ではなく、死体安置所へ行くといい』
『また、口封じをしたのですか?』
『人聞きの悪い物言いは止めたまえ。護送中に仲間が奪還に現れてね……逃亡を阻止しようとしてやむなく、ね』
監察官氏の言う通り、どう聞いても口封じだね。
しかも、この話の流れだと、捕まった獣人自体が冤罪だった可能性さえある。
『死人に口なし、ですか……』
『君、むやみに同僚を疑うのはやめたまえ。いくら、長官のお気に入りとはいえ、そろそろ処分を考えねばならなくなってくるよ?』
局長が出口はあちらとばかりに、監察官を部屋の外へ追い出す。
『私は必ずドゥヂィの尻尾を掴んでみせます! 必ずです!』
室外から聞こえる監察官の言葉を聞き流しながら、局長が溜め息を吐く。
『まったく、これだから正義を自称する輩は困る。実体のない犯罪組織の尻尾が掴めると思うなら、せいぜい頑張るがいい』
オレは局長の自白を録画&録音しつつ、次々とターゲットを変えながら調査していく。
アリサ達が戻るまでの間に、30人ほどをチェックしたが、密談中だった二人が対探知系の結界を使っていたものの、中央司法局長官のように逆探知まで準備している者はいなかった。
◇
「ただいまー」
陽動班のアリサ達が犯罪者摘発を終えて拠点へと戻ってきた。
「今日はゼナたんとセーラの無双回だったわよ」
「そんな! わ、私は風魔法で瘴気密度の濃い場所へ案内しただけです」
「ゼナ、謙遜しなくていいわ。風魔法と護身術を併用した武術を使って、ほとんど一人で悪漢達を捕縛していたじゃないですか」
アリサとセーラに誉められて、ゼナさんが真っ赤になっている。
「セーラさんはどんな活躍を?」
「私は神聖魔法で悪意を抱いている人を見分けたくらいですよ」
ステータスに罪科を刻まれた者ならアリサが見分けるだろうから、セーラはそういった罪科が無い者を見分けてくれていたのだろう。
都市核の権限を使えば、ステータスに刻まれた罪科を消す事もできるからね。
「こっちの資料の山は何?」
「そっちの付箋紙がたくさん付いたファイルが、この国の調書。こっちの薄いファイルがティファリーザに分析してもらったレポートだよ」
「この短時間に? 相変わらずご主人様って、人使いが荒いわね」
アリサが嘆息しながら薄いファイルを取り上げて読み始める。
「ご主人様、これって凄いわね。本当にわたし達が出かけてから作った資料なの?」
「ああ、そうだよ」
あの調書の束をどう分析したのか分からないが、「塩の密輸は誰それが関与、利益が得られるのはこの人とこの人、そして酒の密造や地下酒場の経営はこちら」などのように、誰が犯罪をドゥヂィになすりつけていたか、誰が利益を得ていたかを事細かに図解入りで分かるレポートに仕上がっていたのだ。
「なんていうか、サイバーな情報戦があったら、最高に活躍しそうな人材よね」
「まったくだ」
ファイルを読み終わったアリサと一緒に頷き合う。
ティファリーザの才能は誰にも言わないようにしないと、シガ王国の宰相あたりから引き抜きの話がきそうだ。
先ほどオレが空間魔法で録画した内容を仲間達と共有する。
単独では意味の無かった内容も、ティファリーザがまとめたレポートを読んだ後に見ると、違った意味を持ってくる。
これだけでも、摘発には十分だが、さすがに国の支配層全てを摘発するのは不可能だ。
先ほどの監察官を含め、まともな法の番人は結構な人数がいたが、残念ながら上層部でまともな人は日和見な者達がほとんどで、摘発の旗頭にできそうな人がいなかった。
さすがに、中央神殿の威光だけで汚職を暴くのは難しい。
下手をしなくても、中央神殿VS中央司法局のような構図になりかねないんだよね。
◇
――ちゅいぃ。
帰還した賢者鼠チュー太が、小さな「魔法の鼠鞄」から録画の魔法道具を次々に取り出してオレに手渡していく。
「ご苦労様、チュー太。他の子達と交代でご飯を食べて監視の続きをよろしくね」
オレはスフレケーキやチーズケーキをチュー太の鼠鞄に収納してやり、空間魔法で司法局の地下へと送り返す。
オレ達は順番に映像を確認していく。
『勇者と「ウリオン神の試練」を受けた伯爵か……他国の者どもに力を借りるのは業腹だが、この国にはもはや自浄作用はない』
「ご主人様、この人って――」
振り向くアリサに小さく首肯し、ジェスチャーで静聴するように伝える。
『資料を調べれば、私こそがドゥヂィの首領だと判断してもおかしくない』
いえ、残念ながら、ティファリーザ・レポートではグレーで終わりました。
『いっそ、私を告発してくれれば、スタリー監察官が調べた者達を道連れにして、この国の膿を全て白日の下に晒してくれようものを……』
なかなかの覚悟だ。
たぶん、彼はこの国の不正を正そうと頑張っていたのだろう。
オレは映像の終了したモニターから顔を上げ、仲間達を見回す。
「そんなわけだから、明日にはすべて片を付けようと思う」
今回の試練は早く終わりそうだ。
裁判で大きなウェイトを占める「黄金の天秤」の検証は今夜やるとして、その前に――。
「長官に会ってくるよ」
最後の仕込みをするために、ね。