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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
序章
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奴隷の鏡だよ

日に日に俺は痩せ細っていった。

鏡がないので、どんな顔をしているのかわからないが、肋骨が浮いてきている。

腕や足も随分細くなった。

こんな環境でも、死にたくない。

前世の社畜根性は、未だ現役だ。

俺は、夜に皆が寝静まった頃、周辺を歩き回った。

前に読んだ図鑑に載っていた毒性のない草は、魔法で消毒して口に入れた。

この消毒の魔法は重宝している。

これがなけりゃ、あっという間にコレラにでもかかって死んでいたと思う。


とにかく食えそうなものは、なんでも口に入れた。

睡眠は不足しがちだったが、空腹で寝れない日も多かったので、あまり影響はない。

相変わらず、おっさん達にはボコられたが、殺される事はないと思うと、耐えられた。


ある日、俺はウンコ穴に魔法を使ってみた。

随分慣れたが、臭いものは臭いのだ。

魔法で消臭できないもんか、と。

結果は余り効果はなかった。気持ちマシになったかな、というぐらいだ。

ただ、消毒の魔法を使ったので、食える程度には綺麗なウンコだ。

食おうとは思わないが。


それからも、人の目を盗んで色んな魔法を試してみた。

少しでも、この環境をマシにしたい。

それだけだ。

いつかボロ雑巾のようになって死ぬのだろうが、それまで俺は生きているのだ。




今が何年の何日かという感覚もない。

俺の身体は気がつけばかなり大きくなっていた。

相変わらず痩せ細ってはいたが。

最近は、ウンコ穴を溢れさせる事もなくなり、殴ったり蹴ったりしてくるやつも、少しだか減ってきた。

おっさん達は老いぼれてきた。

よく現場監督っぽいおっさんに、棒叩きにされていた。

ざまぁみろとは思わない。

その後には、集団リンチが待っている。

標的は100%俺だ。

やられる方も年季が入ってきて、服で見えない所はすぐに魔法で治してしまう。

完全には治らないが、痛みは随分マシになるのだ。


我ながら、慣れとは恐ろしいと思う。

こんな環境に慣れを感じる自分が恐ろしい。

前世の生活も、貴族の生活も、すべて夢だったのかも知れない、と最近は半ば本気で思っている。



俺は、自分が奴隷である事を、受け入れ始めていた。


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