表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/66

46.任用



 ――ウェルズリー公爵領。


「ば、バカな!? カイトが負けただと!?」


 東方騎士団長から報告を受けたウェルズリー公爵は、いよいよ腰を抜かす勢いだった。


「申し訳ありません……」


「おのれ……」


 小隊長任用試験は、一度でも負けたらそこで終わりだ。

 もはや万事休す。

 いくら騎士団長の力を持ってしても、この状況を覆す方法はない。

 カイトが昇進するのは不可能だ。


「こうなったら……何としても、リートが試験に勝つことだけは避けなければならない……」


 もはや公爵を動かしているのは意地だった。


 かつて、智謀策略をめぐらせ公爵にまで上り詰めた男だが、前王が死んだことで一気に勢力基盤が弱まっていた。

 だから、カイトを早急に騎士団で成り上がらせる必要があったのだが、その目論見は頓挫しつつある。


「……しかし、公爵様。毒がダメでは手の打ちようがありません……」


「いや、まだ一つあるぞ」


「……と言いますと?」


「あいつはどこまでも甘ちゃんの偽善野郎だ。それを利用するのだ」


 ウェルズリー公爵の頭の中で、完璧なシナリオが描かれる。


「騎士団長、これが最後のチャンスだ――」



 †


 ――小隊長試験第二試合から二週間後の王宮。


 近衛騎士の事務所に、リートとシャーロットが呼び出される。


「お前たち、聞いて喜べ」


 ウルス隊長が笑みを浮かべながら言う。


「――今日、中央騎士団の人事院から内示があった。シャーロットを正式な騎士として迎え入れるそうだ」



「「ほんとですか!?」」


 シャーロットとリートは、声を揃えて驚く。


「嘘をつくわけないだろ」


「――!!」


 シャーロットは、口をその小さな手で抑えて、そして俯く。


「ありがとうございます……」


 ポロポロと涙を流し、それを拭うこともできなかった。ただ両足に力を込めてなんとか立っているのがやっとだった。


 ――これまで彼女の人生は辛いことが多かった。

 だがようやく認められたのだ。


「まだ任用試験の途中ではあるが、第一・第二試合の内容がよかった。騎士レベルの力は十分にあると認められたのだ」


 そう言うと、隊長はもう少し詳細な経緯を説明してくれた。

 前にシャーロットを見習いにしてチャンスをやれと、ランドに命令した中央騎士団のある中隊長がいた。彼が、シャーロットの活躍を見て人事院に打診したらしい。それが決め手だった。


「来月から中央騎士団の騎士だ。残念だがいきなり近衛騎士にはなれないからな。すぐにリートのもとで働かせてやることはできないが……」


 リートとしてはもちろん寂しさはあったが、しかし彼女の夢がかなったのは自分のことのように嬉しかった。


「よかったな、シャーロット」


 リートは彼女の肩をポンポンと優しく叩く。


「ありがとうございます、師匠……! 本当に……ありがとうございます!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 全く、ふざけた真似をするならタダでは済まさんぞ。
[一言]  『偽善』ねぇ。狙うのはシャーロットかサラか。はたまた無関係の民? つくづく『聖騎士』どころか『騎士』失格のオッサンですね。
[一言] 弱点と逆鱗の違いがわからないクチか、それとも・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ