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誕生日プレゼントにブクマと評価ください(更新停止しておきながら悪びれないクズ投稿者)
オンラインゲーの常ではあるが、定期的なアップデートによってゲームシステムが大きく変更されることがある。
更新後に追加された、或いは削除された要素、バグ……それらはユーザーの意見を参考に調整した結果であり、改善……善い方向に改めようとした過程で起きる必然だ。
が、当然、最初から完璧な答えなんて出よう筈も無く、調整内容が酷いものならそれを揶揄したユーザーが自らのことをβテスターだの、金払ってバグチェックさせられてる等とほざくものだが、それはことデイブレにおいても変わりなく、というかなんなら事実ですらある。
『突発イベント発生!』
『突発イベント:過熱へと誘う商船』
『概要:エリア内計10ヶ所に商船と取引可能なコンソールが出現し、所持アイテムと同価値の物資を交換出来る(アーティファクト含む)』
『位置:マップに表示』
『制限時間:20分』
「はい裏目ー、殺せば巻き返せるからまだマシだけど」
デイブレ運営はトップランカーを体のいいモルモットとして見ているため、こうして次回アプデで実装予定の機能を、公式大会決勝で唐突にランカーにテストプレイさせてくるのが通例だ。
それを知っていた、覚えていたが故に事前に作戦立てて来たのだが、現実は予定通りには上手く運ばないもので……唐突なシステム通知を咀嚼して私はついげんなりする。
「地下から干渉出来ないイベント投げんなよぅ」
このエリアの地下にあるカタコンベはスケルトン等の死霊系モンスターが大量に出現する。様々な理由でここに向かった私だったが、結局は下にずっと降りてけば着くので行きは迷うことはないのに対し、帰還は記憶頼りのため適当に来たせいで帰り道が分からなくなった。もうこれ徘徊老人なんだよなぁ。
簡易地形記録用紙は縦軸には弱いし、システムから見れるマップは使えないし、いや潜伏にはなるけどもうほぼここにいる意味無いんだよな?
「はてさてどうしたものか」
神輿の上で足を組み考える。
乗り心地の悪い骨の椅子を担ぐ数百体のスケルトンがカタカタガシャガシャうるさく私を運ぶ。まるで祭囃子みたいな騒音だ、名付けるなら私を崇め奉りな祭か? いやこんなん考えてるから何も浮かばないんでしょうが。
「カタカタカタッ!」
「おっなになに?」
索敵させていた部隊が骨を鳴らしながら帰還する。いやそこらじゅうでなってるけど。嬉しそうな雰囲気が感じ取れるのは私の目が成長した証だろう。ふふん。
悦に浸りながら暫く案内させ、細い道を進ませると、そこにあったのはこれみよがしに備え付けられたスイッチだった。
「ほう? ……ぶっ!?」
試しに踏ませてみた瞬間、開いた天井から降ってきた大重量が私の顔面に直撃。担がれていた高所からバランスを崩して落下すれば、ろくに受け身も取れず顔から地面に叩きつけられた。い゛だい゛……
「っただのトラップじゃねぇか!」
ガバッと起き上がりながら半ギレで魔法をぶっぱなし使えないカスを処刑、同時に振り子鉄球を蹴り壊す。
ご丁寧に踏んだ馬鹿じゃ無く私を狙ってきやがってクソが、普段の行い良いのになんでこうなるの!? これ後で知り合いに笑われるやつだろちくしょうめ!
「はぁー……なんでこんなとこで遊んでんの私? 蹂躙開始だ(キリッ)っつってカッコつけてた私は何処?」
なんかストレスというより一周回って萎えてきたというか、なんで私わざわざこんなジメジメしたところで無機物と戯れてんだ?
ちょっと前までふにふにしててぬくもりある幼女抱き締めてたのに、金策のためとはいえつまらなくて暗い場所にぶち込まれるのは控えめに言っても拷問では?
「あーやっべ飽きてきた、可及的速やかにロリのエキス吸いたい」
コヒメちゃんとか、コヒメちゃんとか、コヒメちゃんとか。
あの子いい匂いするんだよねぇ、まるで私に抱きしめられるために生まれてきたような体じゃない? てかそうでしょ。世界の真理をまた一つ見つけちまったなー? ……おっとまずいよだれが。
人に聞かれたらヤベー奴扱いされそうなことを呟くが、それを聞いてくれる生命体はここにはいない。
絶妙な虚無感が気力を奪うさなか、三回目のソナースキャンが私を通過する。
「……んあ?」
手癖でつい確認していたマップに表示される光点は、二つ。
近い、というかこれ外周重なって──
轟音。
「うわっと」
衝撃で吹き飛ぶ壁。
咄嗟にスケルトンの群れを掴んで盾にすれば、割れる硝子のようにバラバラに吹き飛ばされていく。南無。
パラパラと破片が舞い、土煙の奥から現れたのは……当然ながらプレイヤー。
ローブに鞭と杖を持つ彼は、私を見て陽気に話しかけてくる。
「エクスキューズミー? 地上への行き方知らない?」
「知らんけど地獄への道案内なら出来るよ」
「はい殺す」
気さくな雰囲気から一転、殺意剥き出しで襲ってくるプレイヤー。
これだからランカーは血気盛んで困るなーとおもいながら、私は憂さ晴らし気味に対処を開始した。
サイコちゃんの知り合いは軒並み爆笑してる程度には人望無いよコイツ