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玖拾陸.必要は発明の母

 大いなる力(墨の魅力)の支配から解き放たれた俺は、墨を解放して式神と交代する方法について考えた。


 (直接俺が呼びに行くのはまずいけど、雪も会場に出ちゃってるし)


 こうやっている間にも犠牲者は次々と増えて祝宴は刻一刻とお通夜へと近づいている。急がなくては。


 俺は目の前で服を着たばかりの墨を見た。


 (いやいや。いくらなんでも猫耳付きの幼女を人目につくところに出す訳にはいかない)


 そこで俺は念話で三羽烏を呼び出すとさらさらと一筆したためて雪の元へとお使いに出した。カラスなら人に見られても不審には思われないし、こっそり手紙を渡すくらいなら気づかれずにできるはず。


 程無く、雪に連れられた式神が部屋へと戻ってきた。それまでに狩衣を先に脱いでいた俺は、小袖1枚で式神を出迎えた。


 俺「式神、お前は楽しい楽しい祝宴をお通夜にしたいのか?」

 式神「なんで?」

 俺「あの和歌はなんなんだ」

 式神「あー、だって俺のかぐやちゃんに色目とか使ってくるから」

 俺「誰が『俺のかぐやちゃん』だっ」

 式神「俺とかぐやちゃんは遺伝子レベルでつながってるんだYO」

 俺「そりゃクローンみたいなもんだからな」

 式神「そんな2人の運命を邪魔する無粋な連中には、このかぐや姫の正義の鉄槌を……ギャッ」

 俺「わかった。もう帰っていいから」


 さすがに一度説教してやろうと思っていた俺だったが、だんだん相手をしているのがめんどくさくなって、結局話の途中に木箱で式神の頭を殴って紙片に戻した。


 俺「雪、式神には任せておけないからやっぱり私が出るわ」

 雪「えっと、構いませんけれど、お化粧どうしましょうか?」

 俺「あ、……」


 そうだ、かぐや姫として祝宴に出席するならきちんとお化粧しないといけないんだった。肌が見えるところ全部に綺麗におしろいを塗り尽くすのは結構手間がかかるんだ。今から塗りなおしてると席に戻るのに時間がかかってしまう。


 俺「と、とりあえず、ここでやるからお化粧道具を用意してくれる?」

 雪「かしこまりました」


 雪はそう言うと、別の部屋に置いてある化粧道具一式を取りに部屋を出ていった。さて、どうしようか?


 (要は肌が白くてきれいに見えればいいんだよね)


 おしろいを塗るというのは突き詰めて言えばそういうことだ。白い肌。それは明るい肌ということだ。薄暗い室内でも、夜でも、少しの明かりで綺麗に映える肌。


 そう言えば、まだ現代にいた頃、テレビで顔中真っ白に化粧をして専用のスポットライトを当ててもらっている女の人がいた。反射する光が強いほど白くて綺麗に見えるんだ。


 光……、強い……、白い……


 (そうか、天照か!)


 そうだよ、わざわざ白い粉を顔に塗りたくって反射光で頑張らなくっても、自分から直接光ってればいいだけじゃないか。なんだ、簡単なことじゃん。

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