自転車
自転車
乗用車に乗っていると交通ルールが発生する。自転車もルールはあるけれど、車社会ほどないのでよく乗っている。
一方通行や速度オーバー、駐車禁止などはないが無灯火や二人乗り、信号無視はお巡りさんも注意する。最近は特に酒飲み自転車にうるさい。
自転車はぼくにとって必需品だ。よい点は近所に出掛けるとき、車の駐車場がない図書館に行くとき、急に方向変換できることや小声でいうが酒を飲むときなど。
そしてなんといっても燃料代が掛からないことだ。
平成十三年には酒気帯び運転で免許証の点数がマイナス七点なっていた。それで一年間はあまり車に乗らず、自転車にしようとなった。理由は車で行動するとなにかしら違反をするし、いつどこにお巡りさんがいるかわからない。
交通ルールは守っても、ふと一時停止違反や速度オーバーをしてしまうし、ときにはビクビクしながら運転するのもある。
ぼくの自転車デビューは小一で最初ワッパをつけて乗った。
二カ月位ワッパをつけていたが、ある日友だちのワッバなし自転車に乗ったらなぜか乗れた。そのときは大喜びした。
早速、自分の自転車もワッパを外し自由に乗り回れば自転車に乗ることが楽しくなった。
それから年月がたち、小四のとき自転車に乗る人は学校で免許をとらなくてはいけないとなった。
「自転車に免許ってなんだ、それ?」
なぜ自転車に免許が発生するのか、疑問に思い免許をとった。免許は自転車のカゴなどの所につける。同級生や上級生につけてないのが見つかると、
「無免許、無免許」
と連呼される。そうなると無免許の人はケンケンで自転車をこいで、その場を逃げるのだ。たまに下級生にいわれているヤツもいた。
この下らない免許制度は一年でなくなった。企画者はダレだ。
中二の時、十段変速のスポーツサイクル『スプリンター』を誕生日に買ってもらった。このとき『ロードマン』というスポーツサイクルの方が流行っていた。ぼくはスプリンターの方が好きだ。
青いスプリンターのハンドルをグリップつき一文字ハンドルにして毎週磨き、大事に乗っていた。
中三の夏休み、買い物先の母から電話があった。デパートのマルイで妹の面倒を見てくれといわれ、駅近くのマルイまで自転車で行った。
二時間位、屋上のゲームコーナーに行き妹の面倒を見ていた。さて街まで来たしゲームセンターにでも行こうと、自転車を置いた場所へ戻るとスプリンターがない。
「あれっ、どこだっけ?」
結構探すがない。まさかとあせり出す。そしてとうとう、
「パクられた」
となる。
ぼくはカギを面倒くさく掛けなかった。たしか買ってから一度もカギを掛けなかった感じだ。それが裏目に出た。
そして母のところに行き事情を話した。自分は母に呼ばれたので自転車を盗まれたと正当化する。交番へ行き、盗難届けを出した。
理由を聞かれ、カギをしなかったといったら当たり前だと逆に説教をされた。完全に自分がわるかった。
一応友人に自転車を盗まれたことを話して捜索範囲を広めた。
そして三週間後、友人の二人が変わり果てたスプリンターを家に持って来た。
「このスプリンターパクられたやつだろ」
といってきた。よく見るとカゴはなく、ハンドルのグリップもない。名前ははがされ荷台もなく、とてもぶざまなスプリンターになっていた。自分のスプリンターはフレームにキズがある。見るとフレームにキズがあり一致した。
「オレのだ」
話しによると、よくぼくらが行くバッテングセンターにあったらしい。二人はどうもババの盗まれた自転車に似ていると判断し、カギも掛かっていなかったので急いでパクり返してくれた。それにしても友人たちはよくぼくの自転車とわかってくれた。『ありがとう』と感謝した。
ところが五日後、ゲームセンターに行き一人でゲームに夢中でプレイする。そして帰るとき、駐輪場に行くとスプリンターがない。
「またやられた」
と嘆いた。多分、自分のわるいくせでカギを掛けなかったのだ。
友人の顔が浮かぶ。せっかく探してくれた自転車をまた盗まれるとは。
「なんて自分はバカなんだ……」
翌日、ゲーセンにいた二人の友人に事情を話した。
「エー、またパクられた?」
声を大にしていた。
「ごめん、ごめん」
と謝り、ゲームを一ゲームずつ奢ってその場を静めた。
ゲームセンターとバッティングセンターは近所で、毎日辺りを探したがなかった。
その後、スプリンターは二度と出てこなかった。
そして高校入学のとき、指定自転車を買ってもらった。厳しい高校で自転車まで決まっている。
条件は荷台とセンタースタンド、ハンドルはセミドロップハンドルをわざわざ逆につけること。婦人車はダメだ。
いかにカッコわるくするのが狙いの高校である。絶対に女子高生はこの自転車に興味がわかないと思った。
静岡では昔、自転車のハンドルを斜めにかたむけるアップハンドルが流行った。このカッコわるい自転車を少しカッコつけようとアップハンドルにすると、校則違反でセンター五リンにされる(もともと坊主頭なのにセンターに五リンバリカンを入れること)。
そして、後輪の泥よけには堂々とT高校のステッカーをはらないといけない。休日に乗ると、かなりの恥ずかしさだ。
ぼくはつねにペダルを速くこいでいた。女子高生にジロジロと見られたくないため、早くその場を立ち去るのだ。女とのデートは夢のまた夢であった。
高校を辞め上京したとき、このカッコわるい自転車を持って行く。
同仕様の自転車に乗っている人はさすがにいなかった。
東京でT高校の自転車とはだれもが思わないので、堂々と気分よく乗った。
しかし、この自転車を盗まれてしまった。四谷駅に置いてどこかに出掛けて帰ると自転車がない。一瞬『あれっ』と思った。まさかあのカッコわるい自転車を盗むとは思えない。辺りをよく探すがなかった。
「またパクられた」
とつぶやいた。カギは当然掛けなかった。なぜなら東京でT高校仕様のカッコわるい自転車を盗む者はいないと思ったので、いつもカギを掛けなかった。
「だれだ、あのチャリを盗んだのは」
と怒るより、顔を見たかった。たぶん自転車と同じでカッコわるいのだろうか。
それから年月がたち二十五歳のとき、失業保険で五万円のマウンテンバイクを買った。
当時、はやっていたのも理由だ。
買ったころは走り回る。三保の松原、清水港、日本平(途中まで)、久能海岸、日本平スタジアムなど行った。いろんな発見もあり楽しかった。
マウンテンバイクは見た目もよく、ギアは二十一段変則で快適だ。
これなら女に見られても恥ずかしくない。ただ雨の日に乗ると泥よけがないのでビショビショになるのが痛い。
ある日、東京に行くためJR清水駅近くの西友ストアー(当時)の駐輪場ではないところへカギを掛けてマウンテンバイクを置いた。
翌日、昼前に清水に帰り、西友に行くとぼくのマウンテンバイクがない。
「あれっ」
と思い辺りを探したがなく、やられたなと思い渋々徒歩で家に帰る。カギを掛けたのになぜだと、ブツブツいいながら帰った。
そして、警察に盗難届けの電話をする。
「どこで盗難にあったのですか?」
とお巡りさんが聞くので、
「西友のところです」
そしたら、
「もしかしたら市に回収されたかもよ」
というではないか。
「なぜ市に回収されるのですか?」
と聞くと、市の条例で駅周辺は自転車を回収するという。そういえばこのごろ駅のまわりには自転車が見当たらない。
お巡りさんに市役所で聞いてみればといわれ、警察には盗難届けを一応だして電話を切った。そして市役所に電話したら、土、日を問わず三時間置きに駅周辺の自転車を回収するというではないか。
長い時間ならわかるが、三時間置きといわれ、少し頭にきた。
たしかに迷惑駐車だが、短時間で持っていくのは納得出来ない。
それなら西友に買い物をすると自転車がなくなっているお母様方は大勢いるのではないか。
どこに回収したのか聞けば、駅の市営自転車専用駐輪場といわれ、行くとマウンテンバイクがあった。『こやつらのしわざか』と思い、返してくれといった。気弱なおじさんは引きとり料千十円という。
「えー、千十円も払うの?」
「決まりですから」
と気弱なおじさんはいう。渋々千十円で自分の自転車を引きとった。まるで中古自転車を買った感じだ。
このマウンテンバイクはぼくの相方であり、いままでいろんなところへ足がわりになってくれたので見つかってよかった。
その後、友人と飲みに行ったとき、マウンテンバイクをどこかの飲み屋に置いてきてしまった。
朝、いつものところにとめてある自転車がない。盗まれたと一瞬思ったが、なぜかどこかに置き去りにしたのが頭のなかに残っている。しかしどこかは思い出せない。昨日の最初の行動は覚えているが、後半の記憶がない。友人もわからないといった。仕方なく独りでローラー作戦を行うことにした。自動車で過去行った飲み屋を一軒ずつ回ったら、二軒目にしてあった。
「よかった」
と何度も心に叫んだ。まるで迷子の犬を捜して見つけた感じだった。マウンテンバイクに小声で謝った。
その二軒目で見つけた居酒屋に飲みに行ったことすら覚えてなく、かなりの泥酔状態であったのだろう。
数カ月後、また自転車を盗まれる。近所のスーパーに買い物に行き、マウンテンバイクをとめ五分で帰ってきたらない。五分以内で来るので、またカギを掛けなかった。
「またやられた」
もう、アイツとはお別れだと堪忍した。
まあ長いつき合いで感謝するしかなかった。
六日後、電話があった。
「あなたの自転車を駅の市営駐輪場であずかってます」
なぜそこにあるのか聞けば、駅周辺に置いてあったので回収したというではないか。
マウンテンバイクを盗んだヤツはスーパーで盗み、駅まで行って乗り捨てた。それを市が回収し、とりに来ないので電話したのだ。
という事は千十円払うことになる。事情を話しても気弱なおじさんが、
「決まりですので」
というので千十円払い自分の自転車を買った。前回と合わせて二千二十円だ。
なんとも不思議な感じがする。このマウンテンバイクはなくなってもなぜか出てくる。
遠くに捨てにいった犬が戻ってくるのに似ている。どうしてもぼくとのコンビがいいらしい。今後も大事に乗って行きたい。だけど、すごく老いているため、あと何カ月持つかわからない状態だった。
そして二十五歳で買ったマウンテンバイクにとうとう引退がやってきた。ブレーキは効かなく、タイヤが擦り減り穴が空き、ギヤの変則ができなくなった。直すと高くなるらしく新しいのを買ったほうがいいことになった。
ということで、二〇〇二年八月に引退させた。酔って何度も転んだりしたが、十一年間ありがとう。
その後は中古で六千円のマウンテンバイク二号に乗り、年令とともに実用性がよくなって一万五千円ほどの婦人車になった。ぼくの場合、サーフィンか必要意外は車に乗らず自転車である。今後も自転車には必需品となるので手放せなかった。
去年の暮れは飲みにいった帰り、道ばたで寝ていたらしくお巡りさんに起こされた。
そのときは引いて帰ったけど、途中からふらつかず自転車に乗れた。やっぱり必要だ。
あとカギは絶対に掛けるようにしたので近年は盗難もなかった。
ただ数年前にお巡りさんから、自転車が置いてあるからとりに来てくれといわれた。それはニモネニと飲んで、とりに行くのを忘れていた場所だった。二日酔いの翌日は、置いた場所を思い出せなく、飲み屋の周囲を探したがなかった。それから二週後に出てきたわけだ。でも新たな自転車を買っているのでとりに行っても本当はいらない。だけど仕方なくとりにいった。ぼくは自転車が必需品だ。
申し訳ございません。本日気が付きました。途中で話しがなくなっていました。よろしければ読んでください。タイトルが「盗難」→「自転車」にしました。
ちょうど今週、ヤフオクで電動自転車を落札しました。高かったですけど、また乗り心地を伝えたいと思います。いまのところ軽いの一言です。