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理不尽から始まるB級ライフ

あれが何年前の出来事なのかはわからない。だが一つ言えること、それはあの時俺は、トラックにはねられて、一度この世おさらばしたということだ。


 死後どこに行くのか、そう問われたら俺はいつも迷わず、天国でも地獄でもなく、転生して次の人生を始めるんだと言っていた。だって、その方が現実的にありそうじゃないか。


 だから俺は死を悟った時、来世に想いを馳せた。


 別に、それまでの人生に特別不満があった訳じゃない。ただ、平凡過ぎただけだ。だから生まれ変われるのなら、もっと刺激があって、それでかつ自分の存在を決して無駄にしない、そういう人生が欲しかった。


 まあ、一番わかりやすく言えば、剣と魔法のファンタスティック世界なんかに転生するのが理想だ。そこで剣や魔法の修練を積んで、ゴブリンの野盗に襲われている姫騎士を助けるとかして人脈を築き、世界を救うパーティの一員になるのだ。


 前世で怠けた分、来世ではきっと努力する。だからそういう世界に自分を送ってくれ神様。死ぬ間際、走馬燈に混じってそんなことを俺は思った。


 ――だが、神様だか世界の摂理だかは、俺をそう甘やかしてはくれなかったらしい。

 俺が今の生を受けた場所、そこは月が二つあるような世界でもなく、地球だった。そしてアメリカだった。


 まあ、前世の記憶をある程度保持しているだけでも恵まれているのかもしれないが、とにかく俺は、前世同様平凡な家庭に平凡な能力を持った男児として生まれ、平凡な人生を再び歩み始めた。前世と違うのは、日本人かアメリカ人か、あと妹がいるかいないかくらいだ。


 仕方ない、さらに次の来世に期待して頑張ろう、てっきり前世と同じ世界に生まれ落ちたと思っていた俺は、そう思いつつ、前世の自分をそのままアメリカ社会にスライドさせたような生活をしていた。

 ……が、何かがおかしい、俺がそう気づいたのは、中学生の時だった。


 前世と同じ平凡な世界に平凡な人として生まれたなんてとんでもなかった。


 そして真実に気づいてしまった俺はハイスクールに入ってすぐ、「怪物に襲われている人を助ける」という、前世で夢に描いたシチュエーションを初めて実体験することとなった。

 ただし助けた相手は姫騎士ではない。魔法少女でもエルフでもない。


 やかましいジョックだった。


 斃した怪物は、ゴブリンでもオークでも触手モンスターでもない。

 サメだった。


 そして一度その修羅場に足を踏み入れた者は、どうやらもう戻れないらしい。


 俺はそれ以来、神様が色々と手を抜いたようなモンスターパニック事件に、友達と冗長な会話をしながら、幾度となく巻き込まれていくことになってしまった。


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