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257 クラウド

スランプと体調不良が重なり、毎日投稿出来ずに申し訳ありません。

いずれ挽回させていただきます。

 聖域円環から逃れるように、そしてそれを放った俺を殺そうと魔族達が聖域結界へと迫り触れた瞬間、バチィーーンと高圧電流に触れたかのような音が聞こえた。

 聖域結界の性質は聖域円環と同じだ。

 だから魔族がそれに触れることによりダメージを与えることになるだろう。

 そうなれば、こちらが有利な展開で戦うことが叶うだろう。

 時間稼ぎと有利な状況で戦うのが今回の目的だった。

 それぐらいの軽い感じだった。


 しかし魔族は聖域結界に触れただけで、触れた部位を燃やす。

 まるで瘴気が引火燃料みたいに燃え上がっていく。

「邪神と戦った時は侵入を許さない程度のものだったが、だいぶ強くなっているな」

「……ルシエル様、全てを浄化してしまうおつもりですか?」

「……このままでも勝手に勝てそうだよな」

「全滅させるのですか?」

「……絶対に勝てるなら浄化波を発動して突っ込む。ライオネルはクラウド、皆は各自の魔族と戦ってもらう。それでいいか?」

「武人として魔族に魂を売った者は叩き切ります。それが私の名前を騙った者であれば、尚のことです」

「皆は?」

「私も戦いたいニャ」

「私はルシエル様の決定に従います」

「奴隷商のことも、祖霊のことも知っているかも知れないから、私も戦いたいです」

「ルシエル守る」

 どうやら全員が魔族と戦える、そう判断したんだろう。

 だったら止める事はない。


「ケフィンは罠を重点的探ってくれ」

「はっ」

「ケティとエスティアはケフィンを守りながらの遊撃」

「「はい」」

「ポーラは巨大ゴーレムの準備」

「分かった」

「ライオネル、禍根を断ち切れ」

「はっ」

 ライオネルの言葉を聞いてから、浄化波を発動させると、皆が一斉に駆け出す。

 その時だった。浄化波が青白い炎で焼いていた魔族を一気に燃やし、その青白い炎が拡散していく。

 ライオネル達は結界に入る寸前で立ち止まった。

 そしてこちらを振り返った。

「ルシエル様……」

 そう呟いたのはライオネルだったが、同じように皆がこちらをなんともいえない顔で見てくる。

「? どうした」

 俺は皆がいる結界の近くまで歩くと、事態を理解した。

 エビルフラワーが五体、勢い良く燃えており、魔族に関しては全てがその存在を消滅していた。

「…………やり過ぎた?」

「……そうですね」

 困ったように頷くライオネルに対して申し訳ない気持ちになりながら、結界の中へと入る。

 するとケフィンから待ったが掛かった。

「ルシエル様、中央に大きな落とし穴になっています。解除するまでお待ちください」

 ケフィンはそう言いながら辺りを調べ始めた。

「この中にクラウドがいたと思うか?」

「いえ、いなかったでしょう。そしてあの扉の向こうが魔族の研究所になると思います」

「だろうな。魔族かは分からないけど、三つの気配を感じるからな」

「はい。ルシエル様、声を拡張する魔道具をお貸し下さいませんか?」

「いいけど、何をするんだ?」

 魔道具を渡しながら聞くと、ライオネルは笑いながら研究所? の扉に向かって叫び始めた。

「グラディス、いるのは分かっている。無駄な抵抗は止めて出て来い。そしてクラウドと言ったか、私の偽者を演じる貴様を屠りに来た。さっさと出て来い。出てこぬなら直ぐにでも研究所ごと破壊してくれるぞ」

 グラディスと呼ばれたのが誰なのかは分からない。

 それでもライオネルは何かを確信しているようだった。


「人の兵をことごとく潰すし、死を覚悟しながらもやっとの思いで毒を盛って奴隷にしてやったのに、まだ生きているなんて、本当に化け物だな、親父殿」

「そこにいるのが我が国の天敵であるS級治癒士か。そして転生者の一人との噂も上がっている。どうだ、同郷なら仲良くしようではないか」

「…………」

 ライオネルが呼びかけてから、一分もしないうちに三人の人族が姿を現した。

 驚きなのはライオネルに声を掛けたグラディスという男が、ライオネルを親父殿と呼んだことだ。

 そしてクラウドだと思われる男は俺を転生者だと当たりをつけて引き込もうとしている。

 最後の三人目が一番驚いた。

 何故なら、その人物は先程まで一緒にいたバザック氏だったからだ。


 ライオネルには悪いが、俺は自分が聞きたいことを優先させることにした。

「クラウド殿、まず転生者なる者がいることは知っています。既に戦った経験もありますので。そこで貴方は何を成すために転生されたのでしょうか?」

「……戦った、ね。……何のために転生したからと聞かれたことはなかったが、そうだな……この世界で名を残すってことだな。既に帝国は俺の手の中にある。金も地位も名誉も女でさえ、全てが手に入れられる。それだけの力を俺は神からもらった」

「……神ですか。努力もされたんでしょうね。色々な国を渡り歩き、人の姿を真似ることの出来る魔法を会得したのですから。しかし、人の姿を借りて悪行を重ねたのは何故でしょうか? それでは貴方が何者でもない証明になるのではないですか?」

「力で成りあがるだけではなく、頭も使っている。魔族だって生み出せるし、この大陸の支配だって出来るぜ」

「公国から盗んだ技術で、ですか? 結局貴方は何もなしていないのでは? だから貴方は魔族化していないのでしょ? 人の皮を被った偽者さん」

「……貴様、俺を怒らせたな。魔族化なんて俺には必要ないんだよ。俺には操る力があるんだから」

 クラウドはそう言って、魔石? のような物を地面に叩きつけると、魔法陣が出来上がり、そこから魔族が現れる。


「……最後に一ついいですか?」

「何だ? 部下になりたいのか?」

「……公国から送り込まれて、ライオネルを退かせたまではいい。どうして魔人化に手を染めた? それは非人道的なことだ」

「この世界は俺が暮らしていた所よりも遥かに文明が下だ。そして魔獣がいて魔人がいて命の価値が全く違う。だから手を汚してでも大陸を支配する必要があった」

「もういいです。ライオネル、息子? と何か話すことがあるんじゃないか?」

「……どうして帝国を裏切った。私に毒を盛ったのは許す。しかし何故戦争中に毒を盛る必要があったのだ?」

「……知っていたのか」

「私は戦鬼将軍だぞ。帝都にずっといる立場だったのだから、部下の行動ぐらいは把握している。父親らしいことは全くしてこなかったがな……」

「……」

 ライオネルの零すような言葉は、グラディスに衝撃を与えたことになる。

 当然その衝撃は俺も受けていた。

 ライオネルの息子がライオネルを暗殺した実行犯だったことだ。

 当然共犯者としてクラウドがいたのは間違いないのだろうが、思っていたよりも人間関係が複雑だった。

 まぁライオネルを罰した皇帝が最悪だったのは間違いないが、それでもライオネルは俺にそれを伝えていなかった。

 それが俺にとっては一番の衝撃だった。


 聖域結界を準備しながら、ライオネル達の言葉に耳を傾けるのだった。


お読みいただきありがとう御座います。

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