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おい、こんなのが元剣聖か

「ぬうりゃぁぁぁあああ!!」


 絶叫とともに突進してくるリオン。

 さすがは腐っても元剣聖、そのスピードは他の構成員とは比較にならない。


「ふぅ……」 


 戦う前に、僕は周囲を確認する。


 大物領主――ユーフェアス・アルドの私室。

 やはりというべきか、その広さは段違いだ。

 しかも部屋全体に防御魔法がかけられているようだから、そう簡単に壊れることもないだろう。


 つまり、思う存分に戦うことのできる空間だということだ。


 ここまでで0、1秒。

 状況把握には充分だ。


「マクバ流、極・紅葉一閃!!」


 闇色のオーラを放ちながら、リオンが剣撃を放ってくる。かつての僕も同様の技を扱えたが、その重さ、スピード、すべてが段違いだ。


 だが。

 いまの僕には、それ以上の剣技がある。


「淵源流。三の型――」


 僕はすうと息を吸い込み、そしてかっと目を見開いた。


 光神之剣こうじんのけん

 かつて初代剣聖ファルアス・マクバが戦場で振るったとされる、光輝く剣技だ。


 もてる力をすべて剣に集中させることで、剣が聖なる輝きを帯び、通常より抜きんでた威力を放つ――


「ぬっ……!?」


 リオンがぎょっと目を見開くが、もう遅い。

 僕はありったけの剣技を剣聖にぶつけた。


 ガキン!! と。


 僕とリオンの剣が激しく衝突した。


「ぬぐっ……!」

 優勢なのは僕のほうらしい。リオンが苦しそうに呻き声をあげる。

「淵源流……。や……やはりおまえ、ご先祖様の技を……!」


「ああ。マクバ家を追放されてから、僕は多くの人に恵まれた。……あんたにはわからないだろう。自分の物差しでしか測れない、あんたには!!」


「ふん……世迷い言を!」


 そう叫ぶリオン・マクバに。

 闇色のオーラを迸らせ、血走った目で叫びじゃくるリオンに。


 僕は、かつて抱いていたはずの尊敬の念をまったく感じなくなっていた。


 あるのは、ただ侮蔑の感のみ――


「リオン。あんたには《チートコード操作》も《原理破壊》も使わない。使いたくもない。それでも……あんたには負けない。絶対に!」


「はっ。小僧めが、生意気を言いおってからに……!」


 そう憎まれ口を叩かれながらも、苦しそうに呻いているリオンだった。

 

 ★


 その一方で。

 アルド家の奴隷……エムは、アルセウス救済党の構成員たちと向かい合っていた。


 ……そしてその奥では、相変わらず椅子で縮こまっているユーフェアス・アルド。


「ひいいっ! おまえたち、早く、早くなんとかしろぉぉぉおお!」


 ……惨めなものだ。


 かつてあれだけ虐げてきた男が、この程度の器だったとは。

 いまのユーフェアスは、でっぷり太った身体をぶるぶる震わせるだけの、威厳もへったくれもない男でしかない。


「はっ……!!」


 エムは気合いの声を発し、体内の魔力を顕現けんげんさせる。それだけで自身が激しく発光し、眩い輝きを放つ。

 次いで、エムは握り拳をゆっくりと目前に掲げた。

 そのまま「剣」と念じるだけで、数秒後、エムの手には白銀の剣が握られていた。


「…………」


 なんとも不思議な力だ。


 いまはまだすべての力を出し切れていないが――想うだけで物体を顕現させる異能。

 魔力とか、魔導具とか、そういった類のものではない。

 小難しい理屈はなしに、念じたものを出現させる異能力だ。


 黒い声が聞こえていた頃は、こんなにうまく力を扱えなかったけれど。


 だけど――改めて思う。


 いったい自分は何者なのか。

 なにゆえ人造人間として生み出されたのか。

 なんでこんな力を扱えるのか……

 なんで、こんな私なんかを生み出してしまったのか……


 色々思うところはあるけれど、まずエムは、かつて自分を虐げていた者に言いたいことがあった。


「ユーフェアス。いまから拘束されるあなたに言っても意味はないかもしれませんが……お願いがあります」


「お、お願い、だと……?」


「私を……あなたから追放してください。もうあなたに仕えるのは御免です」


「な、なん……だと……貴様……」


 ぎょっと目を見開くユーフェアス。


「……駄目ですか?」


 言いながら、エムは再び左手に剣を出現させる。


 右手の剣とは対をなす、闇色の波動を放つ剣だ。

 こんなものを瞬時に出現できるなんて、改めて自分が恐ろしくなるけれど。


「ひいっ……!!」

 エムの剣を見て、ユーフェアスはいっそう身体を小さくした。

「わ、わわわわ、わかった! もうどこへなり行ってもいいから、た、頼む、命だけは……!!」


「……そうですか」


 まあ、あいつの今後はエムの一存では決められない。


 初めて自分に優しくしてくれた男性――アリオスに判断を委ねるべきいだろう。

 いまは、目前に立ちふさがるアルセウス救済党との戦いに集中すべきだと思われる。


 そう判断したエムは、左右の剣を目前で交差させ、戦闘の構えを取る。


「……なるほど。双剣を扱うときたか」

 構成員のひとりがぽつりと呟く。

「だが、甘く見てもらっては困るな。おまえは所詮、奴隷。戦闘経験のないおまえに、私たちを倒せると思っているのかな」


「ええ。思っています」

 エムは決然と言い放った。

「短い間ですが……私だって、アリオス様に鍛えられてきました。せめて、活路を見いだすことはできるはずです……!」


「ほう。大きく出たな。――では、我らもいくとしようか!!」


 言うなり、アルセウス救済党の二人がすさまじいスピードで突進してくるのだった。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] リオンの変貌ぶりが見てて面白いですね。 敢えてリオンの極・紅葉一閃にチートコード操作を使わずにけじめをつけるのは漢ですね。 リオンの最期、エムの過去の柵を拭う期、続きが楽しみだ。
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