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おい、それだけは言うな

「ふぅ……」


 僕は気分を落ち着け、室内の様子を探る。


 ユーフェアス・アルドの私室。

 その窓からは、やはり邪悪な気配が3つほど点在している。


 うち2つはかなり精錬された気配だ。おそらくこれがアルセウス救済党の構成員だろう。

 で、残り1つの気配がユーフェアスかな。


「…………」


 気配を察するに、構成員たちは部屋の扉に警戒をあてている。


 当然のことながら、窓にはいっさいの注意を払っていないようだ。この屋敷は呆れるくらい巨大だから、まさか窓からの侵入など考えてもいないんだろうな。


 だからこそ、付け入る隙がある。


「……いくぞエム。このまま窓を割って侵入する」


「はい……。わかりました」


 ごくりと息を呑み込むエム。


 この窓にも、例によって防御魔法が張られているようだ。徹底した警戒っぷりだが、正直どうということはない。


 スキル発動。チートコード操作。

 使用する能力は《攻撃力アップ(小)》。


 さっきみたいに壊しすぎたら事だからな。ここでは《対象の攻撃力の書き換え》を使わない。


 ふっ、と。

 僕は大きく息を吐きながら、窓に向けて剣を叩きつける。


 パリンという乾いた音とともに、窓は呆気なく内部の状況を晒しだした。


「なっ……! 窓からだと……!?」

「いったいどうやって……!?」


 驚愕の声をあげるアルセウス救済党。


 だが、その後の手際はさすがと言わざるをえなかった。

 すぐさま疾駆し、椅子に腰掛けているユーフェアス・アルドの前に立ちふさがる。剣を構え、油断のない視線を僕に向ける。


 ――やはり、精錬されているな。

 地上にいた構成員よりも強さは上だろう。


「…………」


 僕はスキル《原理破壊》を解除し、無言で室内に降り立つ。

 エムもやっと僕から腕を離した。


「……ふむ。アリオス・マクバにエムか。さすがに肝を抜かれたが……おまえたち、わざわざなにしに来た」


 あくまで落ち着き払った様子で訊ねる構成員に、僕も静かに言い放つ。


「各地でテロ行為を続けるアルセウス救済党。……そして、そんなテロ組織との結託、および女性連続誘拐事件の容疑者として……」

 僕は剣を抜くや、その切っ先を大物領主に向ける。

「ユーフェアス・アルド! おまえたちを拘束する!!」


「ひいっ……!!」

 椅子の上で、でっぷり太った身体を縮こませるユーフェアス。

「お、おまえたち、なんとかしろ!! このためのアルセウス救済党だろうが!!」


 そして奴はエムにも目を向け、大きな声で騒ぎ立てた。


「エム! おまえもなにをしておる! あいつはワシを陥れようとしているのだぞ! ――命令だ、あいつを殺せッ!!」


「…………」


 しかしエムはそれに応じない。

 目を閉じ、黙りこくったままだ。


「な、なぜだっ……! なぜ言うことを聞かぬ!」


 その様子に、ユーフェアスがぎょっと目を見開く。


「ほう、これは驚いた」

 アルセウス救済党の構成員も同様、これには仰天している様子だ。

「エムよ……自力で《黒影》から脱したか」


 黒影。

 というと、エムの身体に眠っていた黒いリング状の物体を思い出すな。

 女神との結託によって、あいつはもう潰してしまったけれど。


「ええ。そういうことだと思います」

 エムも自身の胸に手をあて、静かに言った。

「もう、私の心からは化け物の声が聞こえません。ですから――ユーフェアス・アルド。あなたの命令は、私にはもういっさい効きません」


「な、なんじゃと……!!」

 くわっと目を見開くユーフェアス。

「この馬鹿者めが! ワシが育ててやったその恩義を忘れる気か! この人のなり損ない――クソったれな人造人間めがっ!」


「っ…………!」


「おいっ!」


 思わず僕は叫んでいた。

 それだけは――それだけは言ってはならない言葉だった。

 なのに、あいつは……!


「いいんです。アリオス様」


 エムは歯噛みしながら、僕の手をぎゅっと握りしめてきた。


「私だって、ずっと……ずっと感じてきました……。身体にくすぶる変な声、他の人とは違う思考、違った身体能力……。私は《普通》とは違うんだって……。だから奴隷なのも当然だって……」


 でも、とエムは言った。


「そんな私でも、アリオス様は温かく迎え入れてくれました。アリオス様だけじゃない。レイ様にメアリー様、カヤ様……多くの人たちが、私を受け入れてくれた」


 そしてエムは自身に眠る魔力を解放する。彼女の周囲をほのかな輝きが包み込み、薄暗い室内をかすかに照らし出す――


「だから今度は、私が皆様の恩返しをしたい。人のなり損ないで、人造人間と呼ばれる私でも――きっと、それくらいはできるはずです!!」


「な、なんじゃと……!!」

「フ……あの人造人間が、成長したものだ」


 これでもかと目を剥くユーフェアスに、不敵に笑うアルセウス救済党。


「アリオス様。力をお貸しください。あの連中は――私が倒します」


「ああ……わかった」


 かくして、僕とエムの共闘が始まったのだった。


 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >うち2つはかなり精錬された気配だ たぶん精錬じゃなくて「洗練」だと思います。 これまでも誤字誤用がかなり散見されましたのでつど誤字報告にて報告済みです。 恐れ入りますが、今一度ご確…
[一言] 「肝を抜かれる」という表現は適切でしょうか? 肝を冷やす、肝をつぶす、度肝を抜かれる、等の言葉はありますが、肝を抜かれるというのは聞いたことがありません。 造語ですか? 新語ですか?
[良い点] おお、コミカライズおめでとうございます!!
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