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おい、縋りつくな

「アリオス・マクバよ! おまえの実力は見せてもらった! さあ、自信を持って家に帰ってくるがいい!」


 いつの間に気絶から立ち直ったのか。

 剣聖リオンは両手を叩きながら、僕に歩み寄ってくる。


 どれだけ面の皮が厚いのだろう。とんだ手の平返しだ。


「あ、あなたは……」


 カヤが呆れ気味に呟く。


 彼女だけじゃない。

 レイも、ユウヤも、ラッセンも……誰もが、リオンに対して侮蔑的な表情を浮かべていた。


 にも関わらず、リオンは意に介さない。再びパチンと両手を鳴らすや、引きつった笑顔で言った。


「どうしたアリオス! マクバ家にはおまえの力が必要だ! 早く戻ってくるがいい、この父の元へな!」


「…………」


 ――まったく、この剣聖ときたら。


 僕もさすがに呆れ返ってしまうが、怒る気力も体力もない。

 僕はゆっくり瞳を閉じると、極めて静かな気持ちで言った。


「剣聖リオン。まずは誘ってもらったこと――光栄に思う」


「うむ、そうだろう!」


「だが、僕は戻らない。二度とね」


「なにっ……!?」

 リオンの目がぎょっと見開かれる。

「なにを言うんだ! 剣聖だぞ!? マクバ家だぞ!? おまえがずっと求めていたものじゃないか! それを放棄するというのか!!」


「…………」


 僕は瞳を閉じたまま、仲間たちの顔を思い出す。


 レイ、カヤ、ユウヤ、メアリー、アルトロ……そしてファルアスに女神ディアス。

 多くの人に僕は恵まれてきた。


「……実家を追放されてから、僕は常に言われてきた。真の剣聖たれ――と。単なる強さだけじゃない、優しさと誠実さを兼ね備えた、本物の剣士になれと」


「真の、剣聖……」


「そういう意味では、マクバ家の跡継ぎとして修行してきたのは有意義だったと思ってる。剣の腕も磨けたし……追放されたことで、内面も磨かれたのだと」  


「…………」


「今後も僕は、真の剣聖としての道を歩んでいきたい。ご先祖様――初代剣聖のように」


 僕はそこでゆっくり目を見開くと、情けない顔をしているリオンを改めて見やる。 


「いまのマクバ家では、それが学べない。だから僕はあなたと完全に縁を切る。もう二度と――僕の前に姿を現さないでくれ」 


「…………ッ!!」

 そこでリオンはなにを思ったのだろう。

 眉を八の字に垂らすと、あろうことか瞳に涙を浮かべてきた。

「いやいやいや! 待て待て待て! このままでは、マクバ家は完全に失墜しっついする! おまえがいないと――」 


「……言っただろう。もう二度と戻らない」


「頼む! 戻ってくれ! 戻ってきてくれぇぇぇぇええ!」


 滂沱ぼうだの涙を流しながら泣き縋ってくるが、さすがに言う通りにはなれない。リオンは色々やりすぎた。


「往生際が悪いですわね。リオンさん?」

 なおも僕に縋りつくリオンを、レイが戒めた。

「それに息子なら、あなたには立派な跡継ぎがいるでしょう? そこでポカンと倒れている――ダドリー・クレイスが」


「レ、レイミラ皇女殿下……」


「ふふ。アリオスは、これから私たちと楽しい毎日を過ごすのです♪」


 言いながら、レイは腕を絡ませてくる。

 ――毎度のことながら、当たってるんですけども。


「今回は良い機会でしょう。自分の愚かさを自省しなさいな」


「うぅぅぅぅぅぅううう……!」


 相手が王族となっては、リオンもさすがに反論できないようだ。


 仕方ない。

 リオンはマクバ家の体面を気にしすぎた。


 王族との繋がりを重視するあまり、僕を捨て、ダドリーを迎え入れ……その結果がこれだ。


 皮肉なことに、それがマクバ家の失墜に繋がってしまったわけだが。


「……やれやれ。これでチェックメイトかな」


 ふいに新たな人物がやってきた。

 レイファー・フォ・アルセウス。

 アルセウス王国における第一王子だ。念のためか、両隣に騎士を連れていた。


「剣聖リオン・マクバ殿。後日二人でお話するとしようか。今後の付き合い方についてね」


「ぁぁぁぁあああああああ……! 夢だ、これは夢だぁぁぁぁああ!」 


 リオンは両手で頭を抱えるや、泣き声をあげ続ける。名高き剣聖といえど、その末路は惨めなものだった。


「兄様……」


 レイファーの姿を見たレイが、小さな声で呟く。

 心なしか、僕を掴む力がやや強まっている気がした。


「やあ、久しいねレイミラ。元気にしてたかな?」


「……ええ。お兄様も、その様子ですと相変わらずのようですね」


「ふふ、なんのことかな」

 レイファーは気さくに肩を竦めると、腰に右手をあてがい、あくまで柔らかな口調で言った。

「レイミラ・リィ・アルセウス。陛下には私から掛け合っておこう。思う存分、羽を伸ばしてくるがいい」


「ええ、そうさせていただきますわ」

 レイもどこか口元だけで笑いながら言った。

「兄様も……どうかお身体にはお気をつけて。いつか足をすくわれぬよう」


「ふふ、気をつけるとするよ」


 なんだ。

 いったいなんの会話だ。


 二人の会話はよくわからなかったが、ともあれ、これで僕とダドリーの決闘は終着したのであった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 一枚岩といかない腹黒王子様でした!
[気になる点] 今さらだけど、放逐されて、実家に戻るつもりの無い主人公がマクバを名乗り、養子に入ったダドリーが元の姓を名乗ってるのはおかしい気がします(´・ω・`; )
[気になる点] 親父さん、一応冒険者ランクS相当で、 スキル獲得前の主人公じゃ手も足も出ないほど強かったんだよね? この情けない性格でよくそこまで努力して強くなれたな 家柄のことしか頭にないクソ貴族み…
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