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ありふれた職業で世界最強  作者: 厨二好き/白米良
ありふれたアフターストーリーⅢ
304/532

深淵卿編第二章 遁走は十八番です



『ニンゲン如キガ。身ノ程ヲ弁エロ』


 己が上位者であることを疑わない、傲然とした〝影〟の声が迸った。


 同時に、片手一本で振るっていながら、枝分かれしたことで十数本に増えた業火の鞭が、全方位から卿に殺到した。いずれも常人には視認してからの回避は不可能な速度。


 ズバンッと、卿の身を容赦なく切り裂き微塵にする音が響いた。


 クラウディアが思わず声を上げかける。ただの悲鳴か、あるいは嘆きか。だが、いずれにしろ必要性は皆無だった。


 気の抜けるボフンッという音と共に、細切れに溶断されたはずの卿はいつの間にか姿を消して、代わりに黒い短剣――苦無(くない)が空中に現れたからだ。


 では、卿はどこに?


『愚カ』

「そうでもないだろう?」


 一瞬にして、〝影〟の背後に現れた卿。変わり身の術により、初手で弾かれた苦無の一つと位置を入れ替えたのである。


 だが、〝影〟は瞬時に卿の居場所を特定したらしく、刹那の内に攻撃に出た。鋭い尾が伸び、背後を振り返りもせず貫く。


 腹を貫かれた卿は、しかし、ニィッと嗤う。


 次の瞬間、その卿を更に背後から貫く形で苦無が飛来。


 まさか襲撃者自身を貫いて攻撃されるとは流石に思わなかったようで、苦無は撃墜の余裕を与えることもなく〝影〟に突き刺さった。


『グッ!? 馬鹿ナ!?』


 〝影〟の動揺が伝わる。それは攻撃を食らったということより、存外大きかったダメージが原因のようだ。


 深々と突き立った苦無を中心に、〝影〟の一部が雲散霧消する。苦無は当然、赤熱化状態だ。


 尾を食らった分身体がダメージで消えると同時に、〝影〟は背後一帯をまとめて薙ぎ払う攻撃を繰り出した。


 一体、何本まで出せるのか。百本を優に超える業火の鞭が、瓦礫の道路を根こそぎ抉り飛ばし、周囲の建物を粉砕する。下部の支柱を砕かれた建物がまとめて倒壊した。轟音が世界を揺るがし、粉塵が舞い上がる。


 そして、どこからともなく聞こえる声。


――深淵流土遁術 奈落(来たれ)之回廊(我が深淵の世界へ)


 直後、


「きゃ!?」


 地獄の戦場に似つかわしくない、可愛らしい悲鳴が響いた。


『キサマッ』


 〝影〟がクラウディアを抱える左腕を見て怒声を上げるが、時すでに遅し。


 地中からずるりっと現れた卿は、下方から抱きつくようにしてクラウディアを抱える。そして、ニッと嗤いながら深淵流空遁術〝万影之陽炎(深淵は常に偏在す)〟を発動。


 クラウディアごと、少し離れた場所へ空間ごと座標位置の強制交換を果たす。当然、空間転移に巻き込まれた〝影〟の腕は半ばから切断され、咄嗟に放たれた卿への攻撃も虚しく空を切る。


 卿は、くっついてきた〝影〟の腕を振り払って、クラウディアをお姫様抱っこした。


『我ガ母体ヲッ。ニンゲン如キガ!』

「お前は、〝影如き〟だろう?」


 轟音。


 奪い返されたクラウディアに注意が向いた瞬間、自由落下の速度で水平に落ちてきた卿の蹴りが〝影〟の側面に直撃した。


――深淵流体術脚撃之型 重墜焔撃脚(深き闇に堕ちるがいい)


 重力魔法〝黒渦〟による水平方向への自由落下に加え、直撃の瞬間、体重を数倍に引き上げ破壊力を引き上げつつ、更に足には付与系統の魔法によって炎属性の魔法を纏わせている技。


 今、考えた技だ! もちろんネーミングも!


「ふむ。初めて使ったが悪くない技だ。だが……技名は要検討だな」


 吹き飛び真横の建物に突っ込んでいった〝影〟。


 一瞬前まで〝影〟がいた場所にスタッと降り立った卿は、そんなことを呟いた。どうやらネーミングがしっくりこなかったらしい。また、ハウリアの一族会議が必要なようだ。


 バルドフェルド開祖! 出番でございます!


「あ、あら? あれ? ふ、二人? 別人? で、でも同じ……というか、先程の力はっ」


 大混乱中! のクラウディア様。翡翠の瞳がグルグルしていらっしゃる。


 それも無理はないだろう。覆面をしていても、格好から雰囲気まで瓜二つなのだ。


 おまけに宿敵であり、誰よりも〝影〟の強大さを知っている彼女からしてみれば、その〝影〟からあっさり自分を奪還し、挙句、物理攻撃が全て無効なはずの〝影〟を、蹴り一つで吹き飛ばしたのである。しかも、建物を突き破るほどの勢いで。


 結局、混乱しつつも出た結論は、


「やはり、あぁ、御使い様が――」

「どうも、魔王の右腕です」

「え!?」


 神の御使いが、悪の手先を名乗る異常事態。クラウディア様のお目々が再びグルグル。


 と、その時、〝影〟が突き抜けていった建物の向こう側から、正気を揺るがすような咆哮が轟いた。同時に、建物に無数の閃光が奔った。まるで無数のレーザーで撫で切りにされたような光景。


 ズズズッと、建物が自重によってずれ始める(・・・・・)


「混乱しているだろうが時間がない。説明は後だ。今は黙って、俺に助けられてもらうぞ!」

「え? あ、は、はい!」


 コクコクコクッと素直かつ高速で頷いたクラウディアを抱え直した卿は、来た道を一気に引き返し始めた。


「足止めを!」

「「承知!」」


 卿の前に分身体の一体が躍り出て先陣を切り、ポンッと音を立てて現れた残り二体の分身体が、倒壊した建物の向こう側に見えた〝影と業火の塊〟に突進していく。


 クラウディアが「ぶ、分身!? 東洋の神秘なのです!?」と目を剥いている。意外にサブカルチャーに詳しいのか。あるいは、立場的に神秘サイドについて詳しいのか。


 第二の駄ネッサは勘弁して欲しいところ。強く後者を望む卿の中の人。


 と、そこで、プレッシャーとおぞましさを増大させた〝影〟を見て、クラウディアがハッとした様子で声を上げた。


「お待ち下さい! あれをっ、〝聖十字の鍵〟を! 取り戻さなければ!」


 どうやら、よほど大事なものらしい。


 だが、取りに戻るのは無理な話だ。その証拠には、クラウディアは激しく咳き込み、同時に少量ではあるが吐血した。


 原因は一つ。この異界の血風だ。その有害物質がクラウディアを蝕んでいるのである。どういう要因があってかは分からないが、あの〝影〟が拘束している間は影響下になかったようだが、奪還直後からは確実にダメージが蓄積している。


 一刻も早く、この異界から脱出する必要があるのは明白だ。


 そして、それは何もクラウディアだけではない。むしろ、ある種の保護下にあったクラウディアと異なり、卿は既に相当な時間、血風の影響下にあったのだ。


 クラウディアは、抱えられながらも懇願するように卿の顔を見上げて、そのことに気が付いた。黒くて分かり辛いが、覆面の口元が変色している。おまけに、今、サングラスの隙間からツーと一筋の血が流れ落ちた。


 吐血、鼻血、血涙。救世主の如く現れた彼もまた、この人間を侵す環境に蝕まれているのだと。


 だが、それでも、あれだけは決して奪われるわけにはいかないのだ。むしろ、クラウディア自身の命を投げ捨ててでも、あれだけは……


「心配は無用だ」

「え?」


 先程までの余裕ある態度と異なる、僅かに疲労の感じられる声音での言葉。だが、不思議と安堵を覚える声音がクラウディアに向けられる。


 卿は、クラウディアの肩に回している腕を少し引き寄せて落とさないよう固定すると掌を上に向けた。


 グイッと引き寄せられ、首筋に押しつけられるような形になったクラウディア。その特殊な立場もあって、年齢の近い男性に抱き寄せられた経験などない彼女は、そんな場合でないと分かっていながら思わずドキリとして息を呑む。


 が、その直後に起きた出来事で、更に息を呑むことになった。


「俺は少々手癖が悪くてね。あんな手抜き描写野郎に、こんな綺麗なアクセサリーは似合わないと思わず手が出てしまった」

「そ、それはっ」


 指輪が淡い光を放つ。掌の上にパァッと光を放ちながら出現したのは、まさにクラウディアが奪還を求めた、古くとも美術的な美しさを備えた十字のネックレス――〝聖十字の鍵〟そのものだった。


 どうやら、アビィさん。蹴りをかました時に、どうやってか〝聖十字の鍵〟も掠め取っていたらしい。クラウディアを掠め取られて激怒し、隙があったとはいえ何ともはや。確かに、自己申告通り手癖が悪い。


「それが〝何か〟は、分からないが……そんなに大事なら、今度は奪われないようにな?」

「は、はいっ。ありがとう、ございます」


 そっと手を伸ばし〝聖十字の鍵〟を手に取ったクラウディアは、それを自分の首に改めて付けると胸元に掻き抱くようにして握り締め、礼の言葉を述べた。


 そして、改めて「この人は一体、何者なのでしょう」と、そっと窺うように卿を見上げる。


 だが、そんなやり取りも、切迫する事態により終わりを余儀なくされた。


「チッ。一体やられたか。もう一度、頼むぞ、俺!」

「想定以上に厄介だが、任せておけ。俺」


 悪態と同時に、卿は分身体を召喚。そう、〝影〟の足止めに残した二体の分身体の内、一体が消滅させられたのだ。


 既に、相当な魔力を消費していることから節約のため分身体に流している魔力量は少なく、かつ、魔力消費大の技は封印している状態とはいえ、こうも短時間で消滅させられるのは、中々どうして戦慄を禁じ得ない。


 そこへ、再び血風の嵐に突入した卿に、「獲物が戻って来た!」と歓喜する餓鬼モドキ達が殺到する。


 濁流のように迫る餓鬼モドキに、先陣を切る分身体がダメージ覚悟で突貫。両手の輝く小太刀で斬っては捨て、炎属性魔法で薙ぎ払う。


「質問だが、あの鏡の出入り口を封鎖する手段を持っているか?」


 本体である卿も、両手は塞がっているものの、魔法と感応石操作の苦無を全て飛ばして周囲に寄せ付けないようにしながら、クラウディアに尋ねた。


 唐突な質問だったが、クラウディアははっきりと頷く。


「その為の、〝聖十字の鍵〟なのです」

「なるほど。手癖の悪さも、たまには役に立つ」


 空からも有翼の餓鬼モドキが襲いかかってきた。苦無を飛ばし撃墜するが、分身体のフル活用、重力魔法の多用、連続使用している魔法の数々に、何より、この環境で長時間、十全に活動し続けるための身体強化と活性。


 魔力が、残り二割を切っている。


 生憎と、両手は塞がっているし、餓鬼モドキの絶え間ない襲撃と、〝影〟を抑える分身体の制御により、回復薬を飲むことに意識を割いていられなさそうだ。


 だが、元の世界に戻りさえすれば、クラウディアがゲートを封印してくれる。回復はそれからでもいい。今は速度こそ重要。辿り着けさえすれば卿の勝ちだ!


「ハハッ、久しぶりの修羅場だ。悪くない!」


 先陣の分身体が物量に潰された。


 飛びかかってくる餓鬼モドキを、技能〝影舞〟を使って踏み台代わりにする。


 飛び越えたと同時に、分身体を召喚。着地地点の敵を火遁で焼き払い逃走ルートを確保しつつ、ついでに周囲を土遁で流砂に変えて足を取る。


 自らは技能〝木葉舞〟で、舞い上がった砂粒を足場に駆け抜け、伸ばされる無数の腕を幻影と重力魔法の混合技〝傾死の影〟により紙一重で全て回避し突破する。


 なんとしても食らいつきたいのだろう。


 勢いを止められない卿を、前方にて密集し肉壁を形成することで物理的に止めようとする餓鬼モドキ共。


 宙に浮く苦無が、卿の眼前で切っ先を前に円陣を組む。ガトリングの砲身の如く円陣形を組んだ苦無が時計回りに高速回転し始めた。赤熱化までする。さながら、サーカスの炎の輪だ。


 だが、当然、それは猛獣を潜らせるためのものではない。


 掘削するためだ。


――深淵流火遁風遁混合陣 鳳凰(深き闇)大翔破(止めること能わず)


 砲弾の如く飛び出した回転する炎の輪は、竜巻状に渦巻く炎と風の刃、そして苦無自体の高速回転を以て餓鬼モドキの肉壁を容赦なく抉り取っていく。


 餓鬼モドキのトンネルともいうべきものが出来上がり、それが崩壊する前に一瞬で駆け抜ける卿。


「……すごい。なんという力……」


 思わず、我を忘れるほどに見入るクラウディア。感嘆の言葉は、無意識に漏れ出たもの。


 が、直後に、クラウディアは気が付いた。ゴフッと、小さな咳き込む音が、自分を抱えて走ってくれている青年の口元から聞こえたことに。


 見れば、先程よりも覆面の染みが大きくなっている。彼が、再び吐血したことは明らかだ。


 クラウディアは恥じた。


 自分は、〝守る側の人間〟だったはずだ。なのに、お姫様よろしく、ただ抱えられて、助けてくれた人が傷ついて行くのを黙って見ているだけなどと!


「――主は救いたる者を聖別される。悪しき者よ、心得よ。私を守るのは神の愛。汝を砕くは神の怒り」

「! これは……」


 卿を、否、クラウディアを中心に翡翠の輝きが放たれた。まるで球状の障壁のように輝く翡翠の光は、触れた端から餓鬼モドキ達を弾き、あるいは消滅させていく。


「……そうか、ずっと感じていた違和感はそれか。やっぱり、貴女はトータスを知っているんだな?」

「トー、タス?」


 確信と共に問うた卿だったが、返って来たのはキョトンとした顔。


 だが、この力は……と、更に問おうとした卿だったが、刹那、〝影〟の足止めを任せていた分身体が消えたことによって言葉を止めた。


 魔力残量が残り一割を切っているため、ほとんど魔力を流さず、攻撃手段も小太刀に纏わせた魔力のみという状態だったので仕方ないと言えば仕方ない。


 が、凄まじい速度で追走してくる〝影〟の気配に、流石に余裕もなくなる。


 今は、疑問を解消している場合ではない。元の世界へ、確実に戻ることを最優先に!


 疑問を呑み込んだ卿は、代わりにいつもの「ふっ」をやった。


「ふっ、いい根性だ。助かる」

「貴方様は、私がお守り致します。下級の悪魔如き、一匹足りとて寄せ付けはしないのですよ」


 全身至るところを焼かれ、血風の影響で明らかに衰弱していても、クラウディアの瞳に宿る輝きは、むしろ強くなっていた。


 決然とした面持ちに、卿はいつもより多目の「ふっ」をする。


 そして、分身体二体を周囲に召喚。今度は〝影〟の足止めに送らず、デルタフォーメーションで一気に餓鬼モドキの濁流突破にかかった。


 背後から迫る強烈で醜悪なプレッシャー。いくら塵に返そうと際限なく押し寄せる餓鬼モドキ共。


 命を賭けて繰り広げられるリアル鬼ごっこは、しかし、遂に終わりを見せる。


「見えたぞ!」

「あれは……」


 群がる餓鬼モドキの狭間に、〝鏡門〟の姿を捉えた。餓鬼モドキ達が死に物狂いで突進を繰り返すが、次から次へと塵となり辛うじて押し止められている。


 見えるのは、枯草色のオーロラのように揺らぐ光。一見すると頼りなく揺れる光のカーテンだが、鏡全体を覆うように展開されているそれは一切の餓鬼モドキを寄せ付けていない。


 更に、その枯草色のオーロラを内側から突き抜けるようにして矢、銃弾、投擲用短剣などが飛来し、次々に餓鬼モドキを撃ち抜き滅ぼしている。


「どうやら、貴女の仲間が帰りを待っているようだな?」

「はい、そのようです」


 涙ぐむクラウディアをチラリと見つつ、卿は内心で苦笑い。


 一応、卿も苦無を極小範囲に突き刺し、鏡面のみ守る結界(内側からは透過し、外側からは遮断するタイプ)を展開しているのだが、この分だと無意味だったかもしれない、と。


「一応聞くが、あのオーロラのような光、俺達が触れても大丈夫なタイプだろうか?」

「ええ、もちろんなのですよ。あれは長官が行使する〝聖滅の光〟。悪しき者だけを滅ぼす守護の光なのです。人間には効果がないのですよ」

「素晴らしい。なら、このまま一気に突っ切るぞ!」

「はい!」


 背後から凄まじい咆哮が轟いた。それはまるで、逃げ切られることを確信して悔しさに震えているような声だった。


 クラウディアは、卿の肩越しに背後を見やった。悔しいのは、彼女も同じだった。なんの為に今まで修練を積んできた。この日のためだったのではないのか。


 それが、裏切りにより初手からほとんど封殺状態だったとはいえ、手も足も出ず撤退しなければならないとは……。


 膨れ上がりそうな負の感情を抑え込み、頭を振る。今は生き残ること。そして、何より、この世界の住人を人間界へ渡らせぬよう最善を尽くすこと。


 けれど、いつか、必ず……


「っ、避けて!」

「承知している!」


 間にいる餓鬼モドキの全てを貫通して、業火の鞭がレーザーのように殺到した。〝影〟の悪あがき。にしては、強烈で脅威だ。


 咄嗟に、左右の分身体が後方へ躍り出た。本体と射線を重ねるようにして一直線に並ぶ。


――深淵流土遁風遁混合陣 天衝(来たれ)之峰龍(暗き深淵の龍)


 一体が地面に小太刀を突き刺せば、一瞬にして大地が隆起。天を衝くかのように周囲の餓鬼モドキを打ち上げ、同時に分厚い大地の壁を形成。


――〝鏡門〟まで残り五十メートル


 大地の壁が、時間にして僅か数秒ではあるが業火の鞭を食い止める。


 壁が粉砕され、槍のように伸びた業火の鞭が分身体を貫き消滅させた。


――深淵流重遁術 奈落之(我が魔手により沈め)魔手(深き闇へ)


 二体目の分身体を中心に、超重力場が形成される。殺到した業火の鞭が、まるで奈落から這い出た魔手に掴まれ、引きずり込まれたかのように地へ落ちる。


 魔力残量から、二秒程度の発動しかできなかった重力魔法だが、ギリギリまで温存した甲斐はあった。


 二体目の分身体が圧倒的物量の鞭に細切れにされたが、


――〝鏡門〟まで残り三十メートル


 〝鏡門〟の向こう側に、修道服やキャソックを纏った者達が驚愕に目を見開いてるのが見えた。


「っ、来ます! 神器のない私の結界では、あの攻撃には耐えられないのです!」

「有象無象を弾いてくれるだけで十分さ」


 前方は最後の分身体が切り開いてくれている。


 殺到する業火の鞭。浩介はくるりと反転し、バックステップで走りながら苦無を展開。空間遮断系の結界を発動した。


――〝鏡門〟まで残り二十メートル


 十分だ。距離は稼いだ!


「これは受け売りだが、魔王曰く――」


 反転。後は全力疾走。同時に、先陣を切っていた分身体も反転。すれ違い様、本体と分身体は揃ってニィッと嗤う。


――〝鏡門〟まで残り十メートル


 〝影〟が急迫。その前に躍り出た最後の分身体は、本体たる卿の口元をトレースして言った。


「自爆は、ロマンだ」


 カッと光が爆ぜた。凄まじい爆風が周囲一帯を根こそぎ薙ぎ払う。突進していた〝影〟も例外ではない。


 なにせ、最後の爆発は分身体に注ぎ込んだ残存魔力全ての解放に炎属性の魔法を加えたものだったのだ。


 周囲の餓鬼モドキのように消し飛ばされたりはしなかったが、追走などできるはずもなく後退を余儀なくされる。


 再び咆哮。人の精神を汚染するような絶叫と共に、最後の攻撃が繰り出される。クラウディアを求めるように、業火の鞭が伸びるが……


「悪いな、ストーカー。俺の勝ちだ」


――〝鏡門〟までの距離……ゼロ


 卿は、クラウディアを抱えたまま〝鏡門〟へと飛び込んだ。彼女を守るように抱え込み、元の地下部屋にゴロゴロと転がる。そして、膝立ちとなって腕の中のクラウディアを見た。


 クラウディアは強く輝く瞳を返し、しっかり頷くと、


「主の名の下に、虐げられる者の砦よ。堅き門にて悪しき者を退けよ」


 そう祈りながら〝聖十字の鍵〟を掲げた。〝聖十字の鍵〟が強烈な輝きを放ち、共鳴するように〝鏡門〟も輝く。


 そして、水銀のような流体物がレリーフから溢れ出て、瞬く間に鏡面を覆っていき――


『終ワリノ日ハ近イ! 道ハ既ニ繋ガッタ! 待ッテイロ! 我ガ母体――』


 おぞましい絶叫を遮って、地下空間と人々を映すだけの鏡に戻った。


 静寂が地下部屋を満たす。地下部屋には幾人もの修道服を纏った者や、キャソックを纏った者がいたが、彼等はみな、息を潜めるようにして未だ〝鏡門〟を凝視している。


 目の前にあった筆舌に尽くしがたい危機的状況。それが去ったという実感を、直ぐには持てないらしい。


「カフッ、グッ」


 そんな、恐ろしい体験故の静寂を破ったのは、苦悶の声だった。


 ハッとして彼等が視線を転じれば、そこには全身からシューッと赤煙を上げ、四つん這い状態になっている見知らぬ青年――浩介がいる。


 どうやら人間界に戻ったのと、〝鏡門〟が閉じたおかげで、浩介を侵食していた赤い霧が霧散しているようだ。


 そして、浩介自身は魔力枯渇一歩手前状態と、侵食によるダメージで苦しんでいる――


「み、御使い様、だいじょうぶ――」

「うぅ、『理不尽を実行する』ってなんだよぉ。イタイよぉ、技名もイタイよぉ。新しいイタイをいっぱい生み出しちゃったよぉ」


 外傷より、心の傷に悶え苦しむ青年の姿が、そこにはあった。


 自爆は、ロマンらしい。しかし、自爆の種類によっては、ただイタイだけということもあるらしい。


 四つん這いになる前に、そっと横たえられたクラウディアも、浩介と同じように赤煙を上げて身悶えつつも心配の声をかけるが何やら思っていたのと違う苦しみ方を見て、「……なのです?」と、その癖のある口調を疑問形に変えた。


 意識を保つので精一杯といった有様でありながら、自分を気遣うクラウディアに、浩介は少し心の傷が癒やされたような気がした。


 彼女はきっと癒やし系お姉さんだ……。そんな阿呆なことを思いつつ、彼女の善良な人となりを感じて、助けられて良かったと安堵の吐息を漏らした。


 そして、疲れ心の痛みを抱えつつ、覆面を降ろした浩介はニッと笑って口を開いた。


「もう大丈夫だ。弟さんもな」

「――ぁ」


 その言葉で、クラウディアは浩介が何故助けにきたのかを察した。同時に、気絶する前に倒れた弟分の絶望的な状態を思い出し血の気が引く。


 だが、直ぐに心は安らいだ。


 浩介が四つん這い状態で、かつクラウディアが横たわっている状態であるが故に、今の浩介の顔はクラウディアにしか見えない。


 その浩介の柔らかい表情と、至近距離であるが故にサングラス越しでもうっすらと分かった瞳の雰囲気で、クラウディアは根拠もなく安堵したのだ。


 浩介の言葉は、真実であると。


 その大きな安堵故に、張り詰めていた緊張の糸は切れ、極限の疲労と大きなダメージが彼女の意識を急速に奪っていった。


 それに抗うことは、今のクラウディアにはできなかった。目の前の、名前も知らない救済者が、あまりに優しい雰囲気を漂わせていたがために。


 包み込むような圧倒的な安心感。


 果たして、これほどの安らぎを感じたのはいつぶりだろうか。


 全身が痛くて苦しいのに、寝ているわけにはいかないのに……


 分かっていながら、クラウディアはこれ以上ないほど安らいだ表情で意識を手放した。


 浩介は、くて~と力を抜いたクラウディアに少し笑いつつ、宝物庫から回復薬を取り出し口にした。


 と、そのとき、


「礼を、言うべきなのだろう。本来なら」


 威厳に満ちた重い声。「あ~、そういえばバチカンのザ・怪しい人達に囲まれてるんだっけ」と、若干、冷や汗を流しながら声の方へ視線を向ける。一応、顔を上げる前に覆面も戻す。


 そこにいたのは、司祭のキャソックを纏った七十代半ばくらいの老人だった。


 とはいえ、幾重にも刻まれた顔の皺がそう判断させるだけで、シャンと伸びた背筋や鋭い灰色の瞳、白一色だがたっぷり生えているオールバックの髪は、彼をもっと若く見せている。聖職者の衣装を纏っていながら、感じるそれは歴戦の軍人のようだ。


 彼は、書物を開いた状態で片手に持っていた。珍しいことに、その書物は金属板でできているらしかった。装丁が、という意味ではなく、中身も金属の薄い板が五枚ほど重なってできているようなのだ。


 相当な重量がありそうだが、彼は苦もなく片手で維持している。


 ザリッと微かな足音が響いた。


 浩介の気配感知が、この場にいる幾人もの人達が自分を包囲するように移動しているのを伝えてくる。既に、外へ通じる唯一の通路も立ち塞がれた。


「だが、君が何者であるか、何故、ここにいるのか。その理由次第では礼ではなく断罪を以て対応すべきだと思うのだ。……さて、君。大人しく武装を解除した上で、拘束を受けるつもりはあるかね?」


 さてさて、どうすべきか。


 正直なところ、知りたいことがあるのは、むしろ浩介の方であり、本来の任務もその調査だ。話し合いで、向こうが情報を洗いざらい提供してくれるなら乗ってもいいかなぁという気はある。


 クラウディアやアジズを見る限り、彼等はそれほど悪い人間には見えなかったからだ。


 とはいえ、今のこの状況。


 おそらく、クラウディアが長官と呼んでいた目の前の老人はともかく、周囲の者達は今にも襲いかからんばかりに殺気を放っている。


 いくら浩介がクラウディアを異界から連れ戻したのだとしても、侵入者であることに変わりはなく、そして、彼等は大量の侵入者達に仲間を大勢殺されたばかりなのだ。


 加えて、アジズ少年が治療のためか運ばれたようで、ここにはいないのだが、だとすれば既にオマールとやらの裏切りは周知の事実のはずで、彼等の中には疑心暗鬼の念すら渦巻いているはずだ。


 その上で、連れ戻したとはいえ、クラウディアはボロボロ状態……


 果たして、自分の話をどこまで聞くか。


 聞いたとして、彼等がどこまで答えてくれるか。


 〝拘束〟という言葉から、なされるのは〝話し合い〟ではなく〝取り調べ〟で望みは薄く、仮に上手くいくとしても相応の時間を取られる。


 そして、一番の問題は武装解除……


 正体不明、目的不明、そして脅威度莫大。


 まず武装を解除させたいという彼等の要求は至極真っ当であり、浩介も納得できるものの、アーティファクトを調べられるのは、なんとも上手くない。


〝鏡門〟〝聖十字の鍵〟。そしてクラウディアの力と、撤退中に口にした〝神器〟という言葉。


 彼等は……おそらくアーティファクトをある程度調べる知識と技術を持っている。


(な、南雲に無許可で、バチカン側にアーティファクトを差し出す……ありえん! どんなお仕置きをされると思ってんだ!)


 話し合いに応じるデメリットが大きすぎる。


 答えず考える浩介に不穏なものを感じたのか。あるいは、さっさと力ずくで取り押さえようと無言の主張をしているのか、周囲の者達の殺気が一段と強くなった。誰も彼も武器を抜いて臨戦態勢だ。


 頭に血が上っている……というのもあるのだろうが、緊張の糸がプッツンする寸前の危うさも感じる。


 浩介は、へらりと笑いながら(覆面してるので分からない)尋ねた。


「武装解除なし、拘束もなし。お茶でも飲みながら平穏に話し合い。っていうのはどうっすかね?」


 答えは殺気の倍増しで返された! 「ふざけてんじゃねぇぞゴラァ!」という心の声が殺到する! 


 浩介は「おたくらの状況を考えたら気持ちは分かるんだけどね! 俺、一応、お仲間を命がけで助けたんだよ!?」と、主張してみる。


 彼等の緊張感は揺らがない。何人かは戸惑いを目に浮かべる者もいたが。


 浩介が従わないと、〝長官〟も理解したのだろう。至極冷静に見えるが、彼の瞳には憤怒の炎が見え隠れしている。


 大した自制心だが、彼からしたら、問答無用に、かつ大量に部下を殺害され、聖域たるこのバチカンで好き勝手暴れられたのだ。見知らぬ侵入者を、そのまま歓迎~は無理な話らしい。


「残念だ。君の力は脅威だが、どうやら今は随分と疲弊している様子。この機会、活かすことにしよう。我々の状況を察して、大人しく従ってくれることを祈る」


 〝長官〟がスッと片手を振った。


 直後、金髪の青年――彼等の中でも一際殺気を放っていた、浩介の記憶だとウィンと呼ばれていた青年が細剣を片手に急迫した。


(あぁ、もうっ。こっちは疲れてるってのに! とはいえ、大人しく武装解除してやるわけにはいかないもんでね! 俺がお仕置きされないために!)


 浩介は、何も伊達や酔狂で殺気立つ彼等を前に長考していたわけではない。回復薬がある程度効果を発揮する時間を稼いでいたのだ。


 ダメージが深く、まだ三割程度の回復率だが……


「ま、十分だ」

「なに!?」


 剣の腹を向けて振られた細剣。それを足場に跳躍した浩介を、ウィンは信じられないと言いたげな様子で驚愕の声を漏らす。


「逃がしません!」


 栗毛を三つ編みにした少女――アンナが、両手トンファーで飛びかかってくる。


 空中にいる浩介なら死に体だと思ったのだろう。もちろん、浩介はひょいっと避ける。空中の埃を足場に前方宙返りだ。


「へぇ!?」


 間抜けな声で、誰もいない空中を通り過ぎるアンナちゃん。「それ反則ですよ!?」と言いたげな表情で浩介を見る。


「悪いね。話し合うなら、お互い、もうちっと頭冷やしてからにしようぜ?」


 そんなことを言って、着地寸前を狙って襲いかかってきた二人の男を、およそ人外としか思えない身のこなしから繰り出した空中回し蹴りでぶっ飛ばし、浩介は一目散に通路へと駆け出した。


「止まれ!」

「大人しくしろ!」


 通路の前を塞ぐ二人組の男。両方ともスキンヘッドで眉毛がない。顔も似ているので、スキンヘッド兄弟だろうか?


 なにはともあれ、隠形全開。


「あ?」

「れ?」


 見事に疑問符を分担して言ったスキンヘッド兄弟の足下を、スライディングの要領であっさり抜ける。


 一般人なら目の前にいても気が付かない浩介の隠形。戦闘訓練を受けた者でも、場合によっては〝見えていても咄嗟に動けない〟状態になることはある。


 目の前で雑草が揺れていることに気が付いていても意識に上らないのと一緒で、対応すべき事象が発生していると脳が認識しないのだ。


「何をしている! バッカス、ブルース!」

「ッ、すまんっ」

「今のなんだ!?」


 ウィンの怒声で我に返るも、奇妙な現象に動揺するスキンヘッド兄弟。長官の「逃がすな!」という更なる怒声で慌てて踵を返し、浩介の後を追っていく。


「なんだか……あの人、変です!」

「分かっている!」


 アンナの悲鳴じみた声に、ウィンも激しく同意した。


 視線の先で背を向けて走っている浩介だが、背後から飛び道具で狙おうにも、何故か狙いが付けられない。それどころか、強く意識しないと、今追っているにもかかわらず誰を追っていたのか忘れそうになるのだ。


 やがて、あっさりと元の広い空間に出た。浩介の姿が一瞬、柱の向こう側に消えるが、直ぐに階段を駆け上がっている姿を捉える。


「私が拘束します! ――流れて捉えよ。高き宮の炉で練り、七度清めた銀の如く」


 直後、アンナの持つトンファーの一つが淡い光を纏い、その先端から光の鎖が飛び出した。


 背後から迫る不穏な気配に、チラリと視線を投げた浩介は、


「どう見ても白崎の十八番の〝縛煌鎖〟です、ありがとうございます、ちくしょうめ!」


 〝鏡門〟や〝聖十字の鍵〟以外に、やはりあったらしい特殊兵装。


 階段を駆け上がっていた途中の浩介は、絡みつくように迫った光の鎖に纏わり付かれる。


「捉えましたよ! 変人さん!」

「誰が変人だ! 三つ編みトンファーちゃん!」


 ぼふんっと消える浩介さん。ツッコミの余韻だけが残る階段には、変わり身用の使い捨てアーティファクトである小石が転がる。使い捨てなので、使用後はただのどこにでもある石だ。


「なっ!? 消えましたよ!? どうなってるんですか!?」

「っ、やはり、あいつも神器に選ばれた者なのか……」


 戸惑い足を止めたウィン達。仲間の一人、古めかしい連射式ボーガンを担いだ東洋系の顔立ちにツンツン髪が特徴の青年が、あっと指を差した声を上げた。


「階段じゃない! エレベーターの方だ!」


 ハッとして見てみれば、三角飛びの要領で上へと駆け上がる浩介の姿が。


「リー! やれ! 殺すなよ!」

「了解! けど、多少の怪我は許せよ!」


 そう言ってボーガン使いのリーと呼ばれた青年は、浩介目がけて金属の矢を放った。


「おっと!」

「なんだとぉ!?」


 風を切り裂いて飛翔した矢を、浩介は片方の小太刀を壁に突き刺して体を固定し、もう一本の小太刀で叩き落とした。


 凄まじい芸当にリーは悲鳴じみた驚愕の声を上げるが、逃がしてなるものかと直ぐさま連射する。全て、急所を外す軌道で放つリーの腕は、なるほど、一流のそれだ。


 だが、飛んできた六本の矢、全てを片手の小太刀一本で尽く叩き落とし、あるいは切り裂いた浩介は、当然ながらその上をいくわけで。


「流石に、銃弾は無理だろう?」


 先程のスキンヘッド兄弟の片割れ、ブルースの方が古めかしいライフルを構えた。


 ちなみに、その銃声からライフルは町中ではあまり使えないと、ボーガンとライフル――彼等の仕事上、どちらが優れているかでリーとよく衝突している。


 とはいえ、今は気兼ねする必要はない。五連発可能なライフルを、ブルースは出し惜しみなく連発した。


 もちろん、全て叩き斬った。


「「「「「「「……」」」」」」」


 後から追いついたらしい〝長官〟を含め、全員が瞠目し、絶句している。


 一応、重力魔法で弾丸の方が刃に向かってくるよう小細工した〝エセ弾丸斬り〟なのだが、そんなこと知る由もない彼等からすれば、確かに目を疑う光景だろう。


「遁走には一家言持ちなんだ。それじゃあ、縁があればまた会おう」


 チンッと、小太刀を背中の鞘に収めた浩介は、それだけ言うと一気に壁を駆け上がり、そのまま地上へと消えていった。


 後には、未だに呆然としたままの彼等だけが残った。






 地上に出た浩介は、一先ず、サン・ピエトロ大聖堂のクーポラに上がり全景を見渡した。


 そして、未だにもくもくと黒煙が上がっているバチカン市国内の惨状に顔をしかめた。


 どうやら、バチカン図書館だけでなく、美術館や聖堂、政府庁舎の方でも爆発があったらしい。


 襲いかかってきた観光客モドキは既に撤退したようで、見える範囲にはオロオロと怯えた様子で避難する観光客達と、怒声を上げながら避難誘導、消火活動している職員達しか見えない。


 もちろん、その怯えた観光客の中に、例の襲撃者達がいないとは限らないのだが……


「ひでぇことしやがる……」


 思わず呟く浩介。と、不意に勘が囁いた。


 サングラスの望遠機能を使い、観光客が流れ出すバチカン市国の外に視線を向ける。


 そして、見つけた。


「あいつは……」


 バチカン市国の外、ちょうど図書館が見える位置の建物の屋上に、見覚えのある男の姿があった。男は、時折双眼鏡も使って市国内の様子を観察しているようだった。


「なんで来ない? あんなところで何をしてるんだ?」


 浩介が疑問を口にしていると、男は不意に――がっかりしたように肩を落とした。そして、時計を確認した後、もう一度、混乱深まるバチカン市国に視線を向け、うっすらと嗤い踵を返した。


「……追ってみるか」


 浩介は、サングラスと覆面を外すと、ボロボロの上着を脱ぎ、宝物庫から新しい上着を取り出して羽織った。


 そして、クーポラから飛び降りると、例の男を追って走り出した。


 アジズ少年が、バチカン外の拠点で〝レダさん〟と呼んだ仲間のはずの男を。


いつもお読み頂ありがとうございます。

感想・意見・誤字脱字報告ありがとうございます。


ガルドにて、「ありふれた日常で世界最強」最新話が更新されております。

表紙のABYSS。あれは果たして、奈落を意味しているのか、それとも矢印の先の人を意味しているのか……

森みさき先生のセンスが光ってますね!

あと、日常の香織さん、ヤバさがマシマシな感じで好きですw

オーバーラップ様のHPより無料で見られますので、よろしければ是非、チェックしてみてください。


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― 新着の感想 ―
かっけぇ、、のと、やっぱりオーパーツとかある世界の地球なら、、、そりゃ、、ね、同じような魔力系統の神秘使う古いところがあってもおかしくないよね
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