500『名もなき死②』
終幕の始まり。
始まりがいつだったのか。
もう、覚えてもいない。
悠久の時を生きた。
数えるのも億劫になるほどに。
無数の流星群が降り注いだ。
灼熱に星が紅く染め上がった。
ヒトという種が生まれ落ちた。
天変地異の大津波が星のすべてを飲み込んだ。
神と人との繋がりが途絶えた。
様々なことがあった。
そのすべてを覚えている。
それでも、ただ覚えているだけ。
だから何だという話だし。
それを覚えていたからと言って、何かが変わる訳でもない。
俺は、ずっと独りだった。
俺は死ななかった。
何があっても、何が起きても。
どんな事があっても死なずに、生き続けた。
生きるのが億劫になるほどに。
いつまでも、いつまでも。
精神なんてとうの昔に壊れてしまって。
初めての感情も感覚も体感も、何も無くなって。全ての未知が既知に埋め尽くされて。
俺は、生というものの全てを知った。
一切の誇張なく、理解した。
ならば、次はどうするべきかと悩む。
俺がすべきこと。
俺がしてみたいこと。
軽く、1000年くらいは悩み続けて。
俺は、ひとつの答えを出した。
「死なない俺の、殺し方を探してみよう」
それが、俺の今の目的。
俺は何があろうとも死ぬ事が出来ない。
そういう強さを持っているから。
だからこそ。
俺を殺せる人を、見つけ出す。
あるいは、殺せる手段を見つけ出す。
例えば……そうだな。
10冊集めれば願いが叶う、願望器なんてどうだろうか?
独白なので短めでした。