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第02話 ~未踏破領域と緊急召喚~

 『Another Earth』の位階ランクは、大きく分けて5つの階級に分かれている。


 下級レッサーは、プレイヤーキャラで言えば、駆け出し程度。

 一般人から比較的弱い部類のモンスターや鹿等の草食の野生動物、最下級の兵士や冒険者の初心者が該当する。


 中級ノーマルは、プレイヤーキャラでは初心者から抜け出した部類。

 人間型モンスターの多くや熊などの肉食の野生動物、訓練を積んだ兵士、並みの冒険者がこれにあたる。


 また、プレイヤーキャラにはここで一度位階上限キャップがかかり、それぞれイベントを経なければ各位階に到達できない仕様になっている。


 準上級グレーターは、試練を潜り抜けた英雄の領域に踏み込んだ者達だ。

 データ上では、人間ヒューマンならば英雄ヒーロー等の上位種への変更が可能になる。

 これに属するのは、並みの冒険者では1対1で立ち向かえないようなモンスターや、軍の武将、冒険者でも名が知られるようになった者達だ。


 上級アークでは、名の知られた英雄になり、それぞれの種族の限界に踏み込んでいく。

 プレイヤーキャラは更なる上位種族、例えば人間ならば超人エルダーに変更が可能だ。

 有名な魔獣や巨人、ドラゴン等の強力なモンスター、一代で国を興すような希代の英雄など強力なNPCがここに位置する。


 そして、伝説級レジェンドは神話や伝説の中の存在へ踏み込んでいく。

 プレイヤーキャラは半神デミゴッドとなり、神々にさえ近づけるのだ。

 ここに位置するのは魔王デモンロード竜王ドラゴンロード等の神とさえされるような存在ばかりだ。


 下級から上級までは各1~100、伝説級のみ1~1000の位階値があり、プレイヤーキャラが到達できるのは伝説級:100まで。

 つまり、実質的にプレイヤーキャラの位階値は1~500まで存在している事になる。


 僕こと『夜光』の位階は下級:17。

 コンバート前は限界まで達していた力は、今は見る影もない。

 中級:10に達している目の前の『小隊長』どころか、僕を捕える周囲の下級:70の兵士達にさえ歯が立たないだろう。

 そう認識して、僕は恐怖が逆に遠のいていくのを感じていた。

 周囲の兵士たちには敵わない。なら、いっそ開き直った方がマシだろう。


 そういう心情になって、ようやく周囲の兵士たちの様子が目に入ってくる。

 僕を取り押さえている左右の兵士。

 目の前に小隊長だという男と、その横で僕の荷物(と言っても、魔術系初期武器の杖や幾つかの回復アイテムの入った袋だけ)を確認している男。

 他の兵士は、何か祠や周囲の様子をうかがっているらしい。

 全部で10人。

 その表情は兜などで良く判らないけれど、何故かひどく困惑していたり緊張しているように見えた。



「……隊長、この子供が持っていた荷物ですが、身元がわかる物は入っておりません。精々、回復薬らしき瓶のみです」


 やけに念入りに僕の荷物を調べていた男が、『小隊長』へと告げる。

 その言葉に兜から垣間見える視線を険しくすると、『小隊長』は手にした槍を僕に突き付けた。


「小僧、まずは答えろ。お前は何者だ? この未踏破領域アンノウンエリアで何をしている」

「ア、アンノ……? えっ……?」


 聞き慣れない言葉に戸惑うと、ガッ! という音と同時、衝撃に頭を揺さぶられる。

 槍の石突で殴られたみたいだ。口の中が切れたのか、鉄の味がした。


「無駄口を利くな。質問に答えろ」


 更に追及してくる『小隊長』に、僕はとっさに答える。


「ぼ、僕は……アンノウン、エリア? それが何かわからない、です。でも……この場所の事は、知っています」

「ほう……? そうか。だが、お前が何者かはまだ答えていないな」

「あぐっ!」


 石突が、今度は背中に突き刺さった。

 衝撃で息が詰まり、ゴホゴホと咳が零れる。


「……死にたくなければ、答えろ。お前は何者だ? この地の住人か? それとも、皇国の国民か?」


 再度突きつけられる槍。切っ先には、有無を言わせない殺気が込められているみたいだ。

 だけど僕は言葉に詰まる。

 そもそも、僕自身今の状況についていけていない。

 ここは僕が作ったマイフィールドに、とてもよく似た世界に見える。

 だけどその住人かと言われると、断言できる材料にまだ足りないように思えた。

 聞いた事すらない皇国の国民というのも論外だ。

 下手に嘘をついたら、何をされるかわかったものじゃない。

 だから、僕は思わず、こう答えた。


「ぼ、冒険者! 僕は、冒険者の夜光です!」

「ほう、小僧、お前は冒険者か。そうか、そうか」


 兜で目元しか見えないけど、『小隊長』がニヤリと笑ったように見えた。そして


「ガフッ! あ……ぐうぅぅっ」


 頭を蹴り飛ばされた。

 あまりの痛みにのた打ち回ろうともがくが、押さえつけられているためそれも出来ない。

 今の中学生程度の体格と体力しかないこの身体では、大人の体格の、それも戦士の称号持ちの兵士を振りほどける訳がない。

 無様に地面に押し付けられ、うめき声をあげる事しかできない。


「小僧、未踏破領域ってのは本来全て皇国の管理下にある。そこに有るモノは、全て皇国の財産だ。

 そこに冒険者ゴロツキ風情が未許可で入り込んでるってのは……わかるか? 薄汚い盗人だって事だ」


 さも嬉しそうに『小隊長』が笑う。

 痛みと混乱でうめく僕を見下し、声に混ざる嗜虐の色を隠そうともしない。


「上からの命令でな、未許可で未踏破領域に入り込んでいる冒険者は全員捕えることになっている。

 まだまだ吐いてもらうぞ。お前みたいな餓鬼の冒険者が、一人で未踏破領域に居る訳が無い。

 ……仲間が居るな? どこに居る?」


 再び突きつけられる槍の穂先。

 その先は僕の肩口だ。


「お前の仲間は何人だ? どんな武器を使う、どんな戦い方をする? 連絡方法は?」


 一言問うごとに、槍の穂先がゆっくりと肩へ食い込み、激痛が走る。

 長衣ローブに血が滲み、ジワジワと広がっていく。

 だけど、僕は答えられない。

 今の僕は一人だ。パーティーメンバーはいないし、召喚モンスターも呼び出していない。

 それに、あまりの激痛にそもそもまともな言葉すら出せない。


「~~~~~っ!!」


 上げることができたのは声にならない叫び。

 僕は幼な子の様に助けを求め…意識の中のウィンドウに、情報が浮かぶ。



>>パーティーメンバーが規定人数以下にて、一定のHPダメージを確認しました。

>>常駐パッシブスキル<緊急エマージェンシー召喚サモン>の発動条件を満たしました。

>>パーティーモンスターに設定された以下のモンスターを、召喚コストを無視し召喚します。


>>召喚

【名称】ゲーゼルグ

【種族】蜥蜴人リザードマン/貴種蜥蜴人ノーブルリザードマン/竜人ドラゴニュート/上級竜人アークドラゴニュート/竜王ドラゴンロード

【位階】伝説級(レジェンド):100

【称号】<竜王ドラゴンロード><剣聖ソードセイント><槍の達人マスター・オブ・スピア><元帥アドミラル><化身チェンジ大型種ヒュージモンスター:L>


【名称】マリアベル・デアルグ・ブラッディア

【種族】屍喰鬼グール/下級吸血鬼レッサーヴァンパイア/吸血鬼ヴァンパイア/貴種吸血鬼ノーブルヴァンパイア/真祖アンセスター

【位階】伝説級:100

【称号】<真祖アンセスター><爪牙の使い手ワイルドファイター><死霊術師ネクロマンサー><闇司祭ダークビショップ><呪術師ウィッチ


【名称】リムスティア

【種族】小悪魔インプ/下級夢魔アルプ/淫魔サキュバス/淫魔女王サキュバスクィーン/愛欲デモンロード・の魔王オブ・パッション

【位階】伝説級:100

【称号】<愛欲デモンロード・の魔王オブ・パッション><闇騎士ダークナイト><上級魔術師アークメイジ><精神術師サイオニスト><将軍ジェネラル


【名称】九乃葉ここのは

【種族】小狐リトルフォックス/野狐フォックス・シー/妖狐ハイ・フォックス/気狐エルダー・フォックス/九尾ナインティルの狐(フォックス)

【位階】伝説級:100

【称号】<九尾ナインティルの狐(フォックス)><仙術師タオ><魔獣使いビーストテイマー><将軍ジェネラル><化身チェンジ大型種ヒュージモンスター:L>




 次の瞬間、痛みに朦朧とする意識の中で、周囲に光が溢れるのを感じる。

 まぶしさに反応する暇も無く、


「お館様、御下知に従い我ら此処に……!? お館様に何をしているか!! ……許さん!!」

「その下賤な手でご主人様マスターに触れるんじゃないわよ!!」

「なんてことを……ミロードを害した罪は重いわよ? 楽には死ねないと思いなさい!!」

「……主様、こんなに衰弱された上、この様な傷を……お労しや……」


 どこかで聞いた事があるような声と同時に、肩口に食い込むの槍が穂先を残して切り飛ばされ、拘束から解放される。

 続いて周囲からは剣戟と悲鳴。

 呆然と顔をあげると、そこには僕の大切な仲間たちが、かつてモニターの中そのままに、僕を守ってくれていた。

 僕は『AE』で何度も見た光景を思い出す。

 竜王の位階まで到達した竜武人ゲーゼルグと、真祖に至って陽光すら克服した吸血姫マリアベルが前衛で『敵』を駆逐し、後衛からは精神系魔法に補正がかかる愛欲の魔王リムスティアと、強大な仙力と九尾の狐の九乃葉が後衛から敵へ能力阻害の魔法などで援護する。

 そこに僕自身が強力な攻撃魔法で止めを刺す…それがかつての僕たちのスタイルだ。

 僕に背を向け、もしくは僕の隣で頼もしく戦う彼等の姿が、記憶の中のそれと重なる。

 だけど同時に、今まで見たことが無いほどに生気に満ち溢れているように見えた。

 もっとも今回、周囲の戦いは、戦いと呼べるレベルでは無かった。

 偵察兵たちはゲーゼルグの剣閃で悉く手に持つ武器を半分に断ち切られ、更には、マリアベルの瞳に見つめられ、瞬く間にただ操られるばかりの人形と化している。

 偵察兵たちの最高レベルは『小隊長』の中級:10。それを考えれば、僕が小隊長へ攻撃をしかけるのよりも絶望的な戦いに彼らは遭遇したことになる。

 蹂躙されるのも仕方ないだろう。


それはともかく、これからどうしようか……


 僕は、先に『小隊長』が溢した言葉のいくつかにに心揺らされながら、目の前の4体のモンスターを呆然と見つめていた。









>>パーティーモンスターに設定されたモンスターの内、以下のキャラは召喚条件に合致しない為、召喚をキャンセルしました。


【名称】ギガイアス

【種族】超合金ハイブリッドメタル魔像ゴーレム

【位階】伝説級(レジェンド):100

【称号】<調整カスタマイズ魔像ゴーレム><大型種ヒュージモンスター:LL><拳王キング・オブ・フィスト><可変機構モードチェンジ飛行形態スカイモード><可変機構モードチェンジ魔術祭壇マジックブースター形態モード

※付近に重要構造物があります。大型種:LLを持つモンスターの召喚は出来ません。大型種の召喚には重要構造物より一定の距離が必要です。


>>召喚を終了します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 蹂躙と言いつつ殺さないんですね。敬愛する主人が組み伏せられ殴られているのに
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