【番外編】ブンキョウ江戸ダンジョン
【お知らせ】
ダンジョンおじさん【Web版】について、2021年11月一杯をもって本編を削除し、外伝を掲載することとしました。
本編はカクヨムに掲載しています。ページ下部にリンクを貼っています。
2043年5月某日――
AIに世界が乗っ取られて早いもので四年余りの月日が経っていた。
ニホン各地の名所がダンジョンになり、架空の生物のようなモンスターが出現し、世界はファンタジーRPG【リアル・ファンタジー】に書き換えられてしまうという大事件も人々にとっては最早、日常となりつつあった。
◇
トウキョウ――
ブンキョウ江戸ダンジョンにて――
元は和の文化的な庭園であったこの場所も今ではモンスターがうろつくダンジョンと化している。
しかし、ダンジョンはどこか過去の姿をモデルとしている場所が多く、このダンジョンは和の庭園というテイストを色濃く残していた。
「マスター! グッジョブです!」
「あぁ……有難う、サラ」
そんなダンジョン内に、はつらつとした女の子の声が響き、近くにいたおじさんがぼそぼそとした声で反応する。
女の子は少し褐色がかった肌に、肩位までの長さの白銀の髪。そして頭には山羊のような二本の角が付いている。
名を"サラ"といった。
可愛らしい見た目をしているが、実はモンスターであり、ついでに現存するランクでは、上から数えて二つ目の階級の大魔王ランクを冠するボスでもある。
そんなモンスター少女は後述のおじさんの自称従者であるという異質な特徴を持っている。
一方の中年男性は"ジサン"という名であった。特筆するようなことがない見た目の中年男性であるが、意図せずにゲーム初期のスタートダッシュに成功してしまい、レベルだけは全プレイヤーの中でも最高クラスにあり、前述のような大魔王ランクのモンスター少女とパーティを組んでいるという異質な特徴を持っている。
「マスター、本当にここにいるんですかね? "スプリング"」
「一応、NVCさんによるとそうらしいが……」
「あのNVCとかいう奴……どうも信用できないのですが……」
「そうか……?」
彼らの今日の目的は、"スプリング"と呼ばれる精霊モンスターの入手であった。
スプリングは十体いるという精霊モンスターズの一角であり、"霊水魔法"を使用することができるモンスターであるという。
精霊モンスターズは全国各地のどこに出現するかの情報が提供されており、スプリングは、ここトウキョウはブンキョウにて入手できるということであった。
しかし、単にブンキョウといってもそれなりに広く、それだけの情報で、この世に一体しか存在しないという精霊モンスターを見つけ出すことは困難を極める。
そこで、ジサンはダメ元で、クエスト斡旋所の受付嬢"NVC"さんに情報提供を依頼したのである。
『"ブンキョウ江戸ダンジョン"トイウダンジョンデ特定ノ条件ヲ満タスト入手デキルヨウデス』
すると、このように少々、わざとらしいともいえる作られたような片言で、意外にもあっさりと特定のダンジョンまで教えてくれたのである。
予期せぬ幸運に、おじさんは早速、ウキウキ気分で該当のダンジョンに足を運び、今に至るというわけだ。
現在、一時間ほどの探索をしているが、特段の成果はない。そんな状況である。
(……おや?)
と、ふいにジサンが何かに目を止める。
(…………子供? こんなところに一人で……?)
庭園ダンジョンの一角。木造の屋根といくつかのベンチがある休憩場のようになっているスペース。
そこに10歳前後と思われる少年が一人で座っていた。
「……マスター、あれは迷子ってやつですかね?」
「うーむ……」
その割にあまり慌てた様子はなく、どちらかというと、どこか物憂げでフワフワとした様子であった。
普段であれば、他のプレイヤーがいても関与しないジサンであったが、子供一人は流石に危険なんじゃないかと思い、気になり、近づくことにする。
「何してる? 子供一人で来るのは危険だぞ」
人に話し掛けるのが苦手なジサンに代わり、サラが少年に声を掛ける。
「……そ、そうですよね。でもこの辺はあまり強いモンスターが現れないから……」
少年は声を掛けられるとジサンらの方を向き、一応は答えてくれる。
「お名前は……? ご家族は……?」
「リク……お兄ちゃんが一人……」
(お兄ちゃん一人……? あ、いや、えーと……家族構成を聞いたわけじゃないんだけど……)
「そうか、とにかく一人でいるのは危険だ。これをあげるから」
ジサンはダンジョン脱出アイテムである"ダンジョン・エスケープ"をリクという少年に渡す。
「……あ、有難う。でもここへは頻繁に来てるけど、本当にこの辺はあまりモンスターが現れないから……」
(……頻繁に? 通う程、うまみがあるダンジョンには思えないが……)
ついでに、今日、帰したところであまり意味はないかもしれないとジサンは思うのであった。
そもそも子供だからといって、弱いとも限らないのがこのゲームである。
「おじさんいい人そうだから教えてあげる」
「え……?」
そう言うと、少年は空間に自身のディスプレイを表示し、マップを見せてくれる。
「この辺に地下への入口がある。そこには強い固定シンボルモンスターがいるから近づかない方がいいよ」
「固定シンボルモンスター……!?」
「っ!? ど、どうしたのおじさん……」
「い、いや……」
固定シンボルモンスターという言葉にジサンは存外、強く反応を示し、少年の方が若干、たじろぐ。
「あ、有難う、リクくん……気を……気を付ける」
「う、うん……」
◇
少年と別れたジサンらはリクという少年の忠告に基づき、嬉々としてそのポイントへ向かう。
端的に言えば、モンスターコレクターであるジサンは、珍しいモンスターに目がないのである。
固定シンボルモンスターとあらば、特別なモンスターである可能性が高く、彼にとっては非常に魅力的な情報提供であった。
「この辺は一度、通った道だな……地下への入口なんてあっただろうか……」
「そうですね……うーん……」
二人は辺りをキョロキョロと見渡す。
「あ、マスター……こんなところに……!」
「おっ……!」
注意深く探すと木々の陰に、確かに地下へと続いている階段があった。
◇
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ハカモリ・ゴーレム ランクJ
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「ランクJでしたか……」
二人は階段を下ったところで待機していたハカモリ・ゴーレムというモンスターを倒し、テイムした。
特別な武器"テイム武器"を使用し、モンスターを倒すことでそのモンスターをテイムすることができる。
モンスターのランクは強さを表しており、Aから始まり、B、C……というように増していく。
ランクJでも、このダンジョンの地上でのモンスターのランクがB~Dくらいだったことを考えるとずば抜けて高いことになる。それこそ事故レベルの高さだ。
(ABCDEFGHI【J】KLMNOPQRSTUVWXYZ)
しかし、彼らが普段潜っている"カスカベ外郭地下ダンジョン"という特別なダンジョンでは、ランクO、P、Q辺りと戦うことも珍しくなく、二人にとっては、難敵というわけでもなかった。
なお、サラはランクSである。(ボスとしての階級"大魔王"とテイムモンスターとしてのランクは別の扱いとなっている)
ちなみにサラはテイムされているわけではなく、好んで、このおじさんとパーティを組んでいるだけということになる。
特定の階級のモンスターにはプレイアブル権限というプレイヤーのようになることができる特別な権限が付与されているのだ。
「だけど、固定シンボルというだけあって、初テイムのモンスターだ」
ランクJにしらけ気味のサラとは対照的に、おじさんはホクホク顔だ。
モンスターのランクと入手難度は必ずしもリンクしていない。
モンスター図鑑がまた一枠埋まった。この事実だけでおじさんは嬉しいのであった。
「すごいですね!」
「「っ!?」」
おじさんがホクホクしていると、突如、第三者がジサンらを賞賛する。
二人は声の方向に視線を向けると、そこには、めっちゃキラキラした目でジサンらを見つめている少年がいた。
「あ、さっきの……? 付いてきちゃダメだろ……」
「え? さっき?」
「マスター、よく見ると、さっきの子とは違うようです。いくらか幼く見えます」
(ん……?)
確かに、よく見ると、先程の少年とは違う少年であり、年齢は二、三歳下、概ね八歳程度に見えた。
「それにしても、おじさん達、強いですね! あのハカモリ・ゴーレムを倒しちゃうなんて!」
「え……? そ、そうかな……」
「しかも、もしかしてテイマーですか?」
「え、うん……」
(……)
性格もなんとなくさっきの少年より明るく、グイグイ来るなぁと思うジサンであった。
「へぇー、テイマーか~、すごい! じゃあ、ちょうどいいかもです! 僕、超レアなモンスターが出るかもしれない秘密の迷宮を知ってるんだよね! 案内してあげようか?」
「え、超レア……!?」
「マスター……!」
「あ、うん……」
超レアという言葉にうっかり反応してしまったが、サラに暗に窘められたように、冷静に考えると、確かにさっきの子と同じくらいかそれ以下の子供。流石に危険な場所に連れていくのは……とジサンは考える。
「しかし……」
「大丈夫ですよ、おじさん! 人を見た目で判断しちゃダメですよ。こう見えて、僕はダンジョン研究家なんです」
「え、ダンジョン研究家?」
「はい! それに強い貴方達が付いて来てくれるなら大丈夫でしょ?」
「うーん……」
(……確かにこのゲームは子供の方が強いなんてことがざらにあるしな……)
「さぁさぁ、行きましょう! 付いてきてください!」
「あ……」
少年は正式な回答を待つこともなく、半ば強引にスタスタと歩き出してしまう。
◇
「ほら、ここに隠し扉があるんです」
「おぉ……」
ハカモリ・ゴーレムがいた部屋から少し離れたところに、確かに普通であれば見逃してしまいそうな隠し扉があった。
「この先です」
(……流石に罠とかじゃないよな)
ジサンは子供がこんな場所を知っているという不可解な状況に流石に少し不安になる。
「小僧…………罠とかじゃないだろうな?」
「っ……!?」
同じことを考えていたのか、突如、サラが普段よりトーンを落とした声で確認する。
「そ、そんなわけ……」
少年は唐突な少女のドスの効いた声での問いに、少し焦りの表情を浮かべながら答える。
「まぁ、仮に罠であったとしても、マスターと我には取るに足らないことであろうが……子供の悪戯では済まされんぞ? 相応の覚悟はできているんだろうな?」
「し、信じてください。本当に罠なんかじゃありません……!」
少年は急に必死になり、答える。
「ほう……」
「サラ……」
「は、はい……!」
「まぁ、いいんじゃないか」
「しょ、承知しました……! マスターがそう仰るのなら……!」
「……」
少年はほっとしたように息をつき、再び歩き出す。
そうして、二人は少年の案内する隠し通路へと進んでいく。
◇
「ほら、あそこです……!」
(お……?)
少年が指差した先は地下であるにも関わらず、大きな空洞のようになっていた。
(むむ……?)
「こっちこっち……」
そして、そのままその空洞を覗き込める場所まで移動する。
「おぉ……」
上から空洞を覗き込むと、そこには屋根のない和風の木造の小屋が隙間なく、碁盤のように規則的に並んでいた。
「こんなものが地下に……」
「はい、部屋は縦14×横21部屋、並んでいます」
「う、うむ……」
(確かにそれくらいありそうだ……えーと……掛け算すると……)
「……」
(うん…………まぁ、どうでもいいや……)
294部屋だ。
「さぁさぁ、そこの階段から下に行きましょう」
「え……?」
「あそこが超レアなモンスターが出る場所ですよ」
「っ!?」
◇
「……なんかちょっと不気味な場所ですね」
少年に連れられてやってきた碁盤のように並んだ部屋の一室で、サラが少々、不安そうに呟く。
(確かに……)
ダンジョン内の薄暗さに和風の雰囲気が相俟って、少々、スピリチュアルな空間となっていた。
「ははは、大丈夫だとは思いますよ」
「何笑ってるのだ!」
サラはプンスカとする。
「すみません……でも……昔……このダンジョンで子供がゲームオーバーになって……」
「え……」
「その幽霊が出るとかなんとか……」
「っっっ――――!」
サラは意外にも言葉を失う。
「なんでもその子供は最期に同行していたパーティに未練があるとか何とかで……地縛霊的なやつですかね」
「マスター、もしやあのリクという少年……」
(ん……? あぁ……確かに何だかふわふわとしていて、地に足がついていないような雰囲気ではあったが……)
「ふふ、心当たりあるんですか?」
「マスター、なんだか私ちょっと……」
サラはジサンの陰に隠れるようにひっつき、服を摘まむ。
(……大魔王さまも幽霊は怖いのか?)
ボ……
「うわっ、なんじゃ!?」
「あ、ごめんなさい」
それは少年が部屋の中央にあった提灯に火を灯した音であった。
「全く……急に何をするのじゃ」
「怖いかと思って、明かりを……」
「わ、我は怖がってなど……」
「と言うのは冗談で……ほら、あれ……」
少年が何かを指差す。
「ぎゃぁあああああ!!」
ぼんやりとした何かが現れ、サラが露骨に狼狽える。
「サラ、落ち着け……モンスターだ……」
「えっ?」
「その通りです、これがレアモンスターをおびき寄せる方法なので……」
「…………き、貴様……」
サラは少々、恥ずかしそうに唇を噛み締める。
「スピリッツ系のモンスター…………確かに珍しいぞ……」
火の玉のようにふわふわと漂う……なんとなく緩い顔のあるモンスターにジサンのテンションが上がる。
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イニシエ・スピリッツ ランクI
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◇
隣りの部屋に移動し、提灯に火を灯すと、再び、モンスターが現れる。
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イニシエ・スピリッツ ランクI
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「また、同じモンスターでしたね。今度はちょっと場所を変えてみましょうか」
「そうだな……」
そうして、少年は何部屋かを素通りして、別の部屋へと移動し、再び提灯に火を灯す。
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ハラキリ・ゴブリン ランクJ
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「おぉ……」
(また新しいモンスターだ……なかなか豊作だ……)
「どうです?」
少年はジサンに尋ねる。
「確かにレアなモンスターが多い気がする」
「それはよかったです。では、まだまだ行きましょう」
「うむ……!」
◇
その後、三人は提灯に火を灯し、モンスターと戦うという営みを何度も行う。
いくつかの隣り合った提灯に火を灯して、少年は時折、立ち止まって何かを考えると、少し離れた部屋へ移動し、再び、火を灯すということを繰り返す。
「それにしても、君はどうして私達を案内してくれるのだろうか?」
「えっ……」
途中、十部屋近く離れた部屋へ移動することがあったため、その間にジサンは気になり、少年に尋ねる。
「えーと……そうですねぇ」
(ん……?)
少年は俯き、何かを考え込むようにしばし黙る。
「じ、実は裏があるんです」
「えっ!?」
「貴様……やはり……」
「あっ、でも安心してください」
「何を安心しろと言うのだ?」
「え、えーと、確かに裏はあるのですが、お二人に迷惑が掛かる様な内容ではありませんので……」
「はっ!? ……はっ!?」
サラは驚けばいいのか、怒ればいいのかどうにも分からず、困惑するような表情を見せる。
「ま、まぁ……サラ……よくはわからないが、お互いにメリットがあるということで……」
「は、はい……」
◇
その後も提灯に火を灯すという風変わりな探索を続け、気付けばテイムしたモンスターは五十体を超えていた。
「今日はこれくらいにしておきますか……」
「えっ!? そ、そうだな……」
少年の撤退の提案にジサンはちょっと残念そうに応える。
「え、五十体もテイムして、まだ物足りないんですか、おじさん……」
「え……まぁ……」
(肝心の精霊モンスター"スプリング"はこことは関係ないのだろうか……)
全ての部屋の灯りを付ければとか、そういう条件だったりはしないだろうか、などとジサンはぼんやりと考えていた。
五十体をテイムしたとはいえ、全部屋からすると、まだまだ1/6程度であり、少年を連れ回すのはこれくらいが限度かと流石のジサンもそう思うのであった。もっとも少年を連れ回すというよりは連れ回されていたわけだが……
「では、次で最後にしましょうか」
「あ……うん」
「ふふ……」
本日、最後と銘打った部屋の提灯の前に立ち少年は振り返る。
「最期に…………君達が…………従順にただ付いて来てくれてよかった……おかげで僕の目的は果たせたよ……」
そう言って、少年はいたずらに微笑む。
「っ!?」
(…………まさか……やはり何か……)
少年はその瞬間、提灯に火を灯す。
「おじさん………………ありがとうね……」
「え…………?」
「僕は……このダンジョンの地下から出られないから……」
「っ……!?」
そう言うと、少年はその場から、ふっと消えてしまった。
立ち去ったのではない。本当に消滅するように消えてしまったのだ。
(え……? え……? え……?)
「ま、マスター…………もしかして……こいつが…………」
「「じぇあじょgじq3jふぁあ」」
二人は絶句し、青ざめる。
◇
「ま、マスター……大丈夫ですか?」
「あ、あぁ……大丈夫だ……」
肝を冷やされたジサンであったが、何とか階段を登り、空洞の上部の場所まで辿り着く。
リクという少年にダンジョン脱出アイテム"ダンジョン・エスケープ"をあげたことで、ちょうど切らしてしまっており、足でダンジョン入口まで戻らなくてはならなくなったのだ。
「ふぅ……」
ジサンはやれやれと一息つく。
(…………しかし、結局、彼の目的は何だったのだろうか……)
ふとそんなことを思う。その時……
「ねぇ、マスター……あれ……」
「え……? !?」
サラが見下ろす先には、先程まで彼らが探索していた碁盤のように並んだ小屋がある。
そして、提灯に火を灯した部屋がぼんやりと光っていた。
「サラ…………確か、あの少年は最期に同行していたパーティに未練があるって言ってたよな……」
「……はい」
「…………じゃあ、探し出さなきゃな……あの少年を……」
「……はい!」
『リク キニスルナ』
◇
「…………ハル兄……」
リクという少年は提灯が映し出すメッセージを見て、ぽろぽろと泣き出す……
(……兄……さん?)
ジサンらは地上に戻り、二日、待ち伏せし、ダンジョンにふらっと現れたリクを見つけた。
最初は信じていなかった少年であったが、外見的な特徴などを伝えると、疑いながらも付いて来てくれたのだ。
「三年前……僕は六歳、ハル兄は八歳だった……」
(……)
「あの日……僕がこの地下へと続く階段を見つけさえしなければ……兄さんは……兄さんは…………うわぁあああああん」
「っ!?」
感情が爆発したのか少年は近くにいたジサンにしがみつく。
普段あまりされない事態にジサンは少したじろぐ。
(…………)
だが、ぎこちなくも少年の頭を撫でてやる。
その時、二日間消えずにいてくれていた提灯の明かりが揺らめき、そして尽きるように消える。
きっとハルはその一言をどうしても伝えたくて……
本当に幽霊だったのか。
ひょっとしたらAIがきまぐれで生み出した幻想なのかもしれない。
それならば彼をゲームオーバーたらしめておいて……ひどい自作自演だという気もする。
それでも――
ハルの未練はいくらか晴れたのではないだろうか。
そんな風に思うジサンであった。
[精霊モンスター:"スプリング"を入手しました]
その時、ディスプレイにポップアップが発生していたことに彼が気付くのはしばらく経ってからであった。