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ダナティア家の因縁7

空気なレナリアさん。内心は苛々。




「しかしその純白の装い……まるで聖母や聖女の装いですね」


「そうですか? レナリア嬢は優秀な治癒魔法の使い手なのです。国境沿いで数多の人々を助けていたのです。ゴユランでは『砂漠の聖女』と呼ばれるほど、慕われていました。しかし、各地の病院や診療所で傷を癒して旅をしている途中、その能力目当てで賊に追い回されていたのです。それを保護したのですよ」


 聖女や聖人というのは、神殿に認められた奇跡の御業を持つ治癒師や、特別な存在――神・精霊・妖精などからの寵愛や加護を得て、特殊な能力を秘めた者に与えられる称号だ。

 そういった存在は極めて稀であり、どの国や組織でも強い権力の元で保護され、管理される。

 それを騙るのは犯罪行為だが、善行や能力を認められて周囲からそう呼ばれるのは取り締まりの対象にならない。

 簡単にいえば自称聖女はアウトだが、他人から聖女呼びならば許される。

 アルベルティーナも街道整備や、清掃活動に力を入れて雇用や経済を積極的に動かしている姿からラティッチェ領では聖女扱いである。

 どの時代も、聖女詐欺というのはある。勿論、本物の聖女が発見されることだってあるが、偽物の方が多いのだ。


「『砂漠の聖女』が何故サンディスに?」


「保護をしたからですよ」


 先ほど、ゴユランで活動をしていたと言っていた。魔力持ちの中でも、治癒魔法は限られている。それを悪用しようとする人間が出るのも分かる。医術でも魔法でも、治療行為ができる人材は多くないのだ。

 だが、賊に追われていたからと言って、国境を超えてきた人間をサンディスで保護する必要があるだろうか。


「それに、聞いた話では王太女殿下は随分とお加減がすぐれぬご様子。余り男性を好まれないと聞きますし、年も近いと彼女であれば、気安くあると思いまして」


 虚弱である噂は、グレイルが亡くなって長く伏していたので事実である。

 アルベルティーナが男性嫌いなのはヴァユの離宮では暗黙の了解であるが、外には余り広がっていないはずだ。

 気遣うようなそぶりだが、コンラッドは抜け目がなく情報を押さえていると分かる。


「噂は噂だ。変な勘繰りはしない方が得策だぞ、ダナティア伯」


「おや、失礼。我が国の若き太陽に陰りがでることを恐れるがあまり、行き過ぎてしまいました。……ヴァユの離宮では、随分と女騎士の登用が多いと聞いていたので」


「王太女殿下は未婚の女性だ。慣れぬ場所であるし、男に警備に立たれたくないところも多いだろう」


 ガンダルフ言葉に、不思議そうにコンラッドは首を傾げた。


「メザーリン妃殿下や、オフィール妃殿下、エルメディア王女殿下の三人は女騎士を態々手配していませんよ?」


「一緒にするな。あの宮殿の騎士は顔採用ばかりだ。男日照りとは無縁の淑女には関係ないことだな」


 ガンダルフのあけすけなぶっちゃけに、流石のコンラッドも固まった。

 同時に、ミカエリスとジュリアスは三人の殿下たちを護衛する騎士たちの顔を思い出す。確かに、やたらと顔が良いのがいた気がした。

 はっきり言って自身がかなり美形であり、周囲にも美の暴力が身近にいる二人にとっては「まあそこそこでは?」というレベルだったが。

 だが、一般的に見れば羨みうっとりしても仕方ない美形ぞろいだ。こういったことでも、二人の妃殿下は争っていたのだろう。


(愛人……もしくは候補だったのか)


(年齢の割には派手好きというか、若作りではあったが、あれは見栄だけではなくそういうこともあったのか……)


 ミカエリスとジュリアスがそっと冷や汗をかいた。

 貴婦人がそういった火遊びをするのは珍しいことではない。

 ましてや、二人は王子や王女を産んでいるので、既にある程度の立場は保証されている。

 未亡人や、世継ぎを作り終えた貴族の夫婦がそれぞれに愛人を持つのはそう珍しいことではなかった。政略結婚だと割り切って、公私のパートナーを分けて考えている夫婦の形だってあるのだ。

 しかし、それが原因で継嗣争いや離婚に発展することもあるのだ。

 立場の強い貴婦人が愛人を持つことが公然の秘密となっていたとしても、妃ともあろうものが国王以外との子供でも出来てしまえば大問題だ。容赦なく処罰され、身分を剥奪されることもある。

 

読んでいただきありがとうお材ました。

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