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スノーエナガ(裏話)

スノーエナガのメスはまんま冬場のシマエナガっぽい、ぽてっと丸い感じです。

オスはカワセミや南国の鳥の様な鮮やかさです。ただ、メスよりちょっと尾羽や冠羽がありひらひらしています。

冠羽はクジャクやオウムなどの頭に付いているちょっとモヒカンっぽいあれです。




 アルベルティーナは知らないが、一昨年に王宮の庭の一角で複数の番と若いオスの群れがやってきて巣を作ったのだ。

 スノーエナガは魔鳥とはいえメスはたいそう愛らしく、オスは非常に色鮮やかで美しい。はっきり言えば、鑑賞や愛玩に好まれやすい姿をしていたスノーエナガたち。

 別に王宮で飼育しているわけでもないのだから、と愚かな貴族がスノーエナガを捕らえようとした。

 しかも運がいいのか悪いのか、巣立ったばかりで飛ぶのが下手な幼く小さなメスだった。

 まだ番のいない若いメスはエナガ界で狂ったようにモテる。そんな売り出し中のアイドルエナガに手を付けようとしたものだから、オスの群れにつつき回されて顔の原型が無くなるくらい腫れあがった。死ななかっただけマシだが、毒の影響で頭髪は抜け落ちて戻らなくなったという、

 特に、番候補筆頭だった威勢のいいオスエナガは「うちのツレ(予定)になにすんじゃい、ワレェ」とばかりにドスの効いた声で威嚇しまくっていたし、毒爪や羽で容赦なく攻撃を仕掛けていた。

 ちなみに、メスエナガは逃げ回る人間と暴れるオスらの騒がしさを嫌って、静かな場所に逃げてしまった。

 誰もが必要なければ近づきたがらない、雑談する言葉も消え入る場所。

 そう、誰もが恐れる魔王公爵の執務室であった。

 陽気の麗しい日だった為、少し窓が開いていた。

 そして、たまたまその日に花瓶に飾っていた美しい花が、珊瑚百合という非常に美味な花蜜を蓄える種類のものだった。

 甘い花蜜の香りに誘われ、静かな執務室に無邪気なスノーエナガは入ってしまった。

 ラティッチェ公爵はスノーエナガの侵入には気づいたが、興味がないため無視をしていた。

 その小鳥が花蜜を食べようと花をつつき回して全ての花弁を散らしても、気にもしなかった。

 最初は魔王を警戒していたスノーエナガだが、来るたびに何らかの花が補充されているうえ、静かで捕まえようとする人間の来ない魔王の執務室は非常に安全だった。

そのうち、花だけでなく、愛らしいスノーエナガの為に果実の入った餌箱や水が設置された。

 スノーエナガは気づく――「ここはすごく、住みやすい環境なのでは?」と。

 黙々と執務をする魔王は、肩にとまろうが頭で寛ごうが気にしない。

 愛らしいスノーエナガの魅力をもってしても、魔王は興味がピクリとも動かなかった。

 スノーエナガのメスは、とても静かでご飯も近くにあるし過ごしやすいと居座った。たまに魔王以外の人間も出入りするが、魔王という境界を超えてやってくる人間はいない。

 だが、番になりたがったオスは、強い化け物に嫁が盗られたと遠くで騒いでいた、

 一度魔王を攻撃しようとしたところ、魔法を使うまでもなく指先で弾き落とされたのだ。殺さなかっただけ、慈悲があっただろう。

 結局、魔王に攻撃せずにメスに近づけた聡明なオスだけが、正式な番になることができた。

 今では、そのスノーエナガ夫婦用の巣箱がバルコニーに設置されている。

 非常に仲睦まじく、さっそくその翌年には、可愛い雛が三羽も巣立っていった。

 ここなら余計な人間が来ないと、他の群れも移動してきた。

 歩く恐怖の魔王公爵と、可憐な小鳥たちの話は一時期王宮内でももちきりになった。

 それを聞きつけたエルメディアがその鳥を寄越せと騒いだが、魔王の無慈悲な一瞥で泣いて逃げていったのは余談である。



 毒持ち。

 気に入ったメスへの求愛がしつこい。

 領域を侵されると、攻撃的で気性が激しい。

 その一方で、戦略的撤退と踏み込む度胸がある。

 魔法を使う程の知能を持つ賢さ。

 見かけだけなら美しい。


 スノーエナガのオスの特徴が、ちょいちょいとジュリアスを思わせるところがある。

 スノーエナガはぱっと見は小さく可憐。鸚哥や金糸雀とどっこいである。

 ちなみにその毒は、猛毒である。齢を重ねたオスの毒は特にそうだ。軽くかすっただけで、大型の魔物すら血泡を吹いて絶命する。スノーエナガが今まで食した毒によって、強度も変わる。余程偏った毒草などの群生地でなければ、一つとして同じ毒がない。

 アルベルティーナはどことなく色味がジュリアスっぽいとしか思っていないのだろう。

 にこにこと微笑みながら「こんなに小さいのに魔法も使えるなんてすごいのね」と、決まったモチーフに満足げである。


「燕とかも良かったかなって思ったけど、燕は渡り鳥だものね」


 渡り鳥は時が来れば遠くに行ってしまう。

 季節が廻れば戻ってくるかもしれないが、過酷な自然環境で生き残る可能性は必ずではないのだ。とどまる個体もいるが、それは大多数ではない。




読んでいただきありがとうございました!

スノーエナガは、ジュリアスにぴったりな動物モチーフが見つからず創作しました。

性質は冷淡に見えて粘着系な蛇ですが、外見は綺麗めな鳥系かなと。あと毒持ちは外せない……


明日8月6日はゼロサムオンラインでコミカライズ版更新予定です(*- -)(*_ _)ペコリ

https://online.ichijinsha.co.jp/zerosum

炬とうや先生が担当してくださっております。心が踊り狂ってぴょんぴょんします。

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