再会の予感
懺悔! 予約投稿でやらかしました! 定期的にやりますね……すみません。なので手動で。
例のあの人、生きています。
久々に初恋拗らせトリオが集結します。
ヨワッヨワのでうっかりぽっくりしそうなポンコツを生かそうと必死なジュリアスは、魔王パパンとは違う方向性でストレスが酷い。
ストレスであり安定剤であるナチュラル矛盾なアルベルティーナ。
家紋――日本で有名なのは徳川の葵の紋ですわね。戦国武将によっては、模様や貨幣や、動物、様々なものがありました。植物系のモチーフが多いイメージがあります。
ローズブランドで服飾や宝飾系のデザインは色々作りましたが、紋章は初めてですわね。
ジュリアスの顔ともなり得るものですから、きちんと考えませんと。
「何年の付き合いだと思っているんですか。これくらい余裕ですよ。来週にはミカエリス様とキシュタリア様がお戻りになります。それまでしっかり休んで体調を整えてください」
「まあ、嬉しい! やっと戻ってくるのね?」
思わず大きな声が出てしまった。でも、ジュリアスは咎めずに苦笑するにとどめた。
その代わり、お返しとばかりにわたくしの頭を撫でる。
うーむ、お父様程までとは言わずともやはりジュリアスもなかなか良いナデナデの腕前を持っている。
「病床で出迎えたら、あの二人が気を揉んで疲れてしまいますよ」
「ウッ……分かりましたわ。体調には気を付けます」
色々やりたいことはあったけれど、今日はアンナも心配そうにしているのでしっかり休眠を取ることにします。
ベッドで寝ているふりをしてデッサンとか考えたら、アンナに命じられたレイヴンによりクロッキー帳ごと没収されました。
翌朝に、アンナの手からクロッキー帳は戻ってきました。
ぐぬぬ……最近二人がわたくしを確実に休ませようとタッグを組んできます。
そこに横たわるのは、傷だらけの兵士だった。
虫型のモンスターにバッサリと胴体を切り裂かれ、包帯で押さえた傍から鮮血で真っ赤に染まっている。
脂汗の滲む顔色は悪く、その意識は朦朧としていた。呼吸も浅く早かった。
目の前で、じりじりと命の灯火が消えかけていくのが良く分かる。あと数分もしないうちに、彼の命が費えるだろうと誰しもが思った。
そんな彼に、誰かが近寄る。
細く小柄な体躯を包むのは、純白という点を除けば修道女の着るトゥニカによく似ていた。真っ白なヴェールは、彼女が歩くたびに揺れる。
装飾品らしいものは、細いチェーンのペンダントくらいだ。
露出は顔と手だけだ。だが、その白く瑞々しい肌が、妙齢な女性だと唯一伝えてくる。
彼女は静かに重傷の兵の前に座ると、そっと手を取った。
可憐な顔に微笑を浮かべ、聖母のように優しい声で労わる。
「よく戻ってくださいました。すぐに治しますから」
言うが早いか、その場に輝きが満ちる。次の瞬間、先ほどまで虫の息だった兵は安らかに眠っていた。光の残滓がこぼれる様に消えていき、そこにいたのは傷の癒えた兵だった。
規則的にゆっくり上下する胸に、深い睡眠を伝えるような呼吸。
それを見た周囲からは歓声が沸く。
「聖女様! ありがとうございます!」
「流石聖女様です!」
「我らにも貴女様の光を!」
「我らを御救い下さい、レナリア様!」
聖女様、聖女様と皆が口々に彼女を尊敬と称賛を込めて呼ぶ。熱狂は熱狂を呼び、誰もが彼女に縋り、奇跡を希う。
神の所業ともいえる、一部の高位聖職者にしかできないような高速治癒。こういった藻は、それこそごく限られた一握りの人間にしか施されることはない。
莫大な寄付金という見返りがあってこそ、齎される奇跡なのだ。
しかし、彼女は一兵卒でしかない少年にも、傭兵にも、浮浪児にも、場末の娼婦にも癒しを施した。
なんと慈悲深い、と誰もが口を揃えて褒めそやす。彼女こそ、本当の聖女だと。
振り返った彼女は、にっこりと人一人救ったとは思えない程軽やかに笑う。
「任せてください。私は聖女ですので、みなを救って見せますわ」
恵みの雨、生命の水に見放された乾いた大地。そこの咲いた、慈悲の花。
悪女、毒婦、色狂い――そうかつて罵られた重犯罪者レナリア・ダチェス。
それは、サンディス王国で悪魔と呼ばれた少女だった。
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