表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/331

祖父の心、孫知らず

ガンダルフは親馬鹿ならぬジジ馬鹿タイプ。

アルベルティーナをそっと見守っています。

傍から見れば、リスか兎を狙う熊の様な図ですが。



 ジュリアスがヴァユの離宮に戻ると、むすっとした様子を隠さないガンダルフがいた。

 無言で腕を組んで佇んでいるだけで、威圧感抜群だ。薄暗い中、隻眼の鈍色が炯炯と輝いている。気の弱い人間は、目にしただけで失神しそうである。

 そういえば、アルベルティーナの部屋に忍び込んでいた状態で、慌ててヴァニアに会い行ってしまったのだ。

 離宮の警護を担当しているガンダルフは、アルベルティーナの様子をこそこそ気にしながらも、日夜常駐している。

 ヴァユの離宮の一室には、こっそりとガンダルフ用の臨時の執務室が誂られている。有り余る客間の一つだったものを、改装したのだ。特別な訓練や会議でもない限り、警護で見回っているかそこで執務をしているか、休憩というなの駐在をしていることが多い。王都のタウンハウスにも滅多に帰ってこない。

 そう、この男は相当な爺馬鹿だ。

 だが、当の孫娘からはとても嫌われている。

 アルベルティーナの味方でありながら、非常に嫌われている。

 最初の印象が最悪過ぎたのもある。それでも、名誉挽回しようと日々奮闘しているが今のところ実っていない。

 それが分かっているからこそ、普段はアルベルティーナの視界に入らない様に息をひそめているのだ。


「これは、お義父様。夜分遅くまで警護、お疲れ様です」


「……アルベルティーナが目覚めた。会いに行ってやれ」


 凄いぞ、孫効果。

 思わず、ジュリアスの鉄壁の慇懃スマイルが外れかけた。

 ガンダルフは物凄く苦々しい顔をしながらも、内心の苛立ちや疑問を全て飲み込んで、夜分に若い女性である孫にジュリアスを取り繋いだ。

 常識的にはあり得ないが、それでもなおガンダルフは、アルベルティーナを慮ることを優先した。

 だが、今はそれよりアルベルティーナだ。思ったより早く目覚めたことに、安堵する。


「教えてくださり、ありがとうございます」


 ジュリアスは恭しく頭を下げる。その声音に、僅かに混じる喜色に気付いたガンダルフは、不遜な溜息をついた。



 こんにちは、いえこんばんは。アルベルティーナです。

 大嫌いなヴァンに、オーエンにより囚われているお父様の動向を探らせようとしました。

 その時の、ヴァンのあまりに失礼な態度に卒倒してしまったようです。

 怒りで気を失うことなんてあるのですね、初めて知りました。

 どうやらあの後部屋に運び込まれ、往診を受けたようです。

 とりあえず安静にすることと言われました

 アンナはかなり心配していたようで、使用人を呼ぶベルを振る前に駆け込んできました。なんと、ベルを持ち上げた時点で僅かに鳴った音に気付いたそうです。

 こんな深夜に起こして申し訳なかったですが、アンナのスペシャルブレンドティーを用意してくれて、状況を説明してくれました。

うーん、最近倒れることが多いような? 体力はあると言い難いのは分かっていましたが、何か持病でもあるのでしょうか?

 ただ、心労の時点で思い当たる節が多すぎる。一概に言い切れません。

 なんかこうして自分で改めて振り返ると、わたくしって本当に深窓令嬢っぽいですわね。

 

「ありがとう、アンナ。そして、ごめんなさい。心配を掛けましたね」


「いいえ、姫様がお目覚めになられて何よりです」


 アンナの目元は仄かに赤い。もしかして、泣かせてしまったのでしょうか……。

 最近この手の展開が多くありません? パターン、マンネリ化してません? わたくし、やりたいことも、やらねばならぬこともいっぱいありますのに!

 このポンコツの専属になっているアンナは、メイドの鑑なのできっと非常に心配をかけている。

 その時、誰かがこの部屋に近づいてくる気配がした。

 むむ? この足音はジュリアス? あれ? なんかすごい騒がしいような? あのいつも冷静沈着で万能選手のようなジュリアスが?

 草木も眠る時間帯。静かな夜だからこそ響いてくる。

 何故でしょうか。

 思わずベッドの上に上がってきてコロコロ転がっていたハニーを引き寄せ、もっちりほっぺをもぎゅもぎゅと挟んで揉んでしまいます。

 首をかしげていると、ノック無しでいきなり扉が開いた。

 

「アルベル様!」


「ノックをなさい! ジュリアス!」


 アンナがどこから取りだしたか分からない、棒状のものを力いっぱい振り下ろします

 咄嗟にジュリアスが体を捌いて避けますが、すぐにアンナが鋭い舌打ちをしました。


「アアア、アンナ!? そんなことをしては危なくてよ!?」


「曲者かと思いまして、つい」


 名前、思いっきり呼んでましたわよね!?

 ジュリアスは僅かに乱れた髪を直している。走ってきたから乱れてしまったのかしらと思っていたけれど、実はアンナの渾身の一撃は側頭部をかすっていた。

 ちなみに、棒状のものはハーブティー用の金属マドラーでした。カップをかき混ぜる大きなマドラーはなく、ポット用の大きいサイズです。アンナブレンド特製のハーブティーはわたくし好みにあらかじめ蜂蜜やお砂糖を入れることが有ります。そのマドラーはミスリルと金の合金で、非常に硬いものだそうです。

わたくしの小指より細いのに、鋼の剣くらいならぽっきりだそうですわ、

 それって、頭に直撃したら危なくないかしら?




読んでいただきありがとうございました!


少し遅れましたが告知です! ゼロサムオンラインより、本作品がコミカライズ連載スタートです! 活動報告にも載せております! 

いきなり閲覧数がブチ上がって驚きました! ありがとうございます!


ブクマ、コメント、レビュー、評価ありがとうございます!

楽しく見させていただいております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ