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地獄への道、破滅への道2

お父様が気になるアルベルティーナ

 

 そんなにわたくし、分かり易いかしら。

 今後なるべく手の内を読まれないためにも、できるだけポーカーフェイスができるようになりたいところです。

 マクシミリアン侯爵家と交わした契約魔法もありますし、お父様の為にも迂闊にバレてはいけないのです。

 あの契約は本当にその特定の内容にのみ効力を満たすもの。余りごちゃごちゃすると、契約に齟齬が発生し、弱くなったり不成立になりやすい。その分、シンプルなものは契約違反のペナルティを逃れることが難しい。

 逆に、契約に無い抜け道を探すのは可能です。

 現に、マクシミリアン侯爵家のヴァンを配偶者に据えるよう手助けをしろとありましたが、他の人間を推してはならないとはありませんでした。

 一見反しているように見えても、契約には『ヴァンだけ』とは一切明文されていない。ヴァンの手助けをすれば、他者を並行して推したりもっと贔屓しても問題がないのです。

 勿論、お父様の為にも契約不履行にならぬよう、陛下に打診しました。手紙や贈り物はしています。

 余りに不作法なので『貴族の教養』や『領地運営の基礎』『淑女への接し方』を毎月送っておりますわ。

 ネタが尽きそうだと思っていたら、ベラやアンナが「これも送るべきです」と『誰が公爵家を滅ぼしたか』や『やんごとなきスキャンダル』といった、過去にあったノンフィクション零落・没落・投獄コースの貴族たちの成れの果てを綴った本をチョイスしてくださったので有難く頂戴しました。

 ちゃんと読んでいるかしら?

 でも、マクシミリアン家には本当に読んだ方がいいと思いますわ。

 王太女に親しいと吹聴して大きく振舞っていたのだもの。王宮に引き籠りのわたくしにまで届く横暴ぶりだと聞きました。

 わたくしの名でゴミ言動は慎めと散々絞められても改めず、何もかも大コケ。

 うん、袋叩きになっても仕方がないですわね。

 なかなかうまくいかない結界魔法に四苦八苦して集めた情報ですわ。

 魔法のスランプが周りにバレる前に治ってほしい。最近忙しいからか、クロイツ伯爵は御無沙汰ですがヴァニア卿は時々意味深な視線でわたくしを見ています。

 魔法禁止破っているの、バレていませんわよね?


(それにしても、マクシミリアン侯爵の下手な話のそらし方。まさか、お父様に何かあったの……?)


 オーエンにとって、お父様の存在は虎の子のはず。

 ヴァンがわたくしとの出会いは運命だと頭のネジが緩んで落ちまくったとしか言いようのない酔っぱらい発言が多いことからして、多分自分の父親が仕出かしていることを知らないよう。

 愚かしい程、ヴァンは欲望や感情を制御できない人間。わたくしが少しでも自分の思い通りのことをしなければことあるごとにお父様で脅そうとするでしょう。

 嫡男であろうと、内密にしているなんて二人は案外信頼関係が薄いのかしら。

 マクシミリアンの奥方も、事業の叱責から逃れるために実家にお戻りになったようですし。婚姻関係は残ったままですし、一緒に散財した証拠もそろっております。言い逃れはできないのが理解できていないのでしょう。

 お父様に、何かあったら……そう思うと、足元から崩れ落ちてしまうような不安が押し寄せる。

 罠を、仕掛けてみるとしましょう。






 ジュリアスたちには内緒で、ヴァンと会うことにしました。勿論、警備は念入りに付けてもらいます。話はあまり聞かれたくないので、距離は必要というアンビバレンス……

 恐らくヴァンのことだから、ジュリアスを目の敵にしていそう。

 もとは平民出身でありながら、四大公爵家の末席についたジュリアス。その頭脳をいかんなく発揮してメキメキと頭角を現している。

 侯爵家という出自だけの取り柄であり、それ以外は取り柄のないヴァン。

 わたくしが非常に重用しているのも、彼を目立たせている理由の一つでしょう。

 その日は、ちょうど一流の貴族令息たちが集まる会合があります。

 二つ返事がすぐにきたことからして、ヴァンは呼ばれていないでしょう。つまりはその程度の人間なのですわね。

 ですが、こういう催し事がない限りジュリアスはわたくしの宮殿に日参してくるのですわ。

 嫌じゃないし、寧ろ安心する――でも、ずっと頼り続けるわけにはいかないの

 前にジュリアスに自分がいないとダメな人間にしてやると言われましたが、現実味を帯びてきましたわ……

 あれ? 満足できない体でしたっけ?

 いずれにせよポンコツを極めてしまうということです。

 とりあえず、今はヴァンです。あの男は貴族ということを鼻にかける割には、礼儀がなっていないので注意をしなくては。

 流石に直属の侍女であるアンナには黙っていることはできません。

 アンナにはいえる範囲で伝えましょう。


「本気ですか、姫様」


「ええ、マクシミリアン家に謝罪をさせてあげる機会を一度くらい作ってあげても良いでしょう」


「あのヴァンにそんな脳味噌ついていないと思いますけど。危険です。やはりお止めになった方がいいかと……」


 アンナが辛辣ですわ……いえ、わたくしもかなり嫌って心の言葉は辛辣ですが。

 そんでもって微塵の信頼も信用もないこのマクシミリアン家。いっそ清々しいくらいですわ。








色々周囲を気にし過ぎて、自分に関しては結構ずぼらなアルベルです。


読んでいただきありがとうございました!


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