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深夜のお出かけ2

チャッピー初めて役に立つ。愛玩以外で


「姫様?」


「あ、ごめんなさい。しまう場所ですわよね……」


 わたくしが取り出せるような場所……私室や書斎もありますが、そこには他の本が入っております。公共事業やローズ商会の事業、様々な資料も入っています。

 この量を入れると考えると聊か心許無い……

 考えていると足元に何かがすり寄ってきた。


「ぴぃ……?」


 眠気眼のチャッピーです。普段はぱっちりとした目が殆ど下りた状態で、首がゆらゆらしています。それに合わせて、おなかのチャックの金具もプラプラしています。

 そこで思いついた。


「チャッピー、おなかのポッケをちょっと借りていいかしら?」


「ぴー……?」


「ごめんね。眠いわよね」


 寒いだろうと抱き上げると、ぐいぐいと顔をわたくしに押し付けて甘えるようなしぐさを見せるのが可愛い。ハニーのちょっとツンなところも可愛いけど、チャッピーの全面に甘えたところも凄く可愛い。思わず表情が緩んで、額にキスをする。

 眠気にとろとろになったチャッピーの目は、それでも睡魔に抗おうとしています。

 それを見ていたレイヴンが複雑そうな顔をしていたとは露知らず。


(そんな風に可愛がるからジュリアス様達が嫉妬するんです)


 などと思っていたことなど知りませんでした。

 もちもちほっぺたを堪能していると、ようやく徐々に覚醒してきたらしいチャッピー。ぴきゃぴきゃと笑うような鳴き声と共に頬ずりを返してきた。


「姫様……入るんですか? 確かによく物を入れていますが」


「どれくらいかは試してみないと何とも言い難いところですが……」


 レイヴンが疑わし気にチャッピーを見ています。

 チャッピーはもしかして吊るされるのではないかと怯えているのか、わたくしにぴたりとくっついて離れません。

 そういえば、よくアンナに怒られた後にレイヴンがお仕置きとして高い場所に縛っていましたものね……でも懲りないチャッピーはすぐに似たようなことをしてまたキツイお仕置きを受けてしまうのです。

 お陰で、最近のチャッピーはアンナの怒りの重低音で名を呼ばれると、すぐさま謝罪体勢になるよう……これが躾? 怒りの点呼に馳せ参じようとして転ぶ姿が五体投地に見える今日この頃ですわ。

 チャッピーはクラッシャー属性持ちのドジっ子なのでハニーよりも怒られる姿をよく見ます……

 でも、全く学ばないというわけではないのです! ちゃんと、ちょっとずつ! 牛歩というより蝸牛の歩みですが覚えているのですわ!

 半信半疑のままレイヴンは持ってきた本を一冊手に取ります。


「チャッピー、これを預けたいの。わたくしが出してっていったら、出してくださいな。

 他の人には絶対にダメよ?」


「ぴぁ?」


「ちゃんとできたら、そうね……明日は一緒にお庭でお茶をしましょう。

 クッキーもキャンディもケーキもチョコレートもいーっぱい用意するわ。スコーンとジャムやクリーム、蜂蜜も素敵でしょう?」


 お茶会といっても紅茶よりもミルクやホットチョコレートや蜂蜜多めのレモネードが好きなチャッピー。甘党なのよね。

 魔法の言葉のようにチャッピーの大好きなおやつを伝えると分かりやすく目を輝かせています。


「ぴゃっ!」


 一生懸命、全身でやるとアピールしてくるチャッピー。

 短い手足をうごうごと振って、大きな目を輝かせている。

 良かったですわ。

 ……別に理由を付けてチャッピーを可愛がりたかったとかいうわけではないですわ。

 チャッピーはレイヴンから本を受け取ると一冊、また一冊とお腹のチャックの中に仕舞っていきます。

 重量法則も物理法則も無視した代物だということは知ってはいますが、どれくらい入るのでしょうか? マジックバッグなどで似たような機能はありますが、相当高価なものと聞きます。

 じっと様子を見ている間にもするするとはいっていきます。ほんとに異次元ポケットみたいですわね。

 数分後には、すっかり綺麗に持ってきた荷物がなくなりました。


「ぴぁ!」


 エッヘンといわんばかりに胸を張るチャッピーをいっぱい褒めて抱きしめます。


「すごいわ、チャッピー!」


 掲げてくるくる回っているとレイヴンが足がもつれる前に止めてくれました……目がぐるぐるですわ。チャッピーもぐるぐるですわ。

 レイヴンは最初の疑惑の眼差しから警戒気味の目になっているような? レイヴンまでチャッピーを虐めませんわよね? 視線がちょっと鋭いような……?

 思わず庇うようにチャッピーをぎゅっと抱きしめる。


「姫様」


「はい」


「……最初からそれを連れて行けばよかったのでは?」


 その通りですわ。運ぶ手間も省けますし、なんなら地下遺跡の本棚の中身ごっそり持って行けたかもしれませんわ。

 そのあと、部屋でじっくり選別した方が楽ですわ。

 遺跡の中は暗いしちょっと埃っぽくて寒くてほんのりじめっとしています。

 夜中だと不気味な雰囲気がマシマシですわ。一人で行くのは躊躇われるくらいです。通路の奥からアンデッドや魑魅魍魎が現れてもおかしくない冥界オーラ。

 一仕事終え、ぷぅぷぅとわたくしの腕の中で寝息を立てるチャッピー。

 基本、夜中はすぐにおねむになる子です。日中は護衛も使用人も周囲に多いので、行動するなら深夜が一番適しているでしょう。最悪、寝ているチャッピーのポッケに捻じ込むのでしょうか。

 チャッピーは事後承諾でもおやつで許してくれそうですわね。



読んでいただきありがとうございました。

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