初戦闘
「幸あれ……って送られたのにいきなりぼっちかい……」
森の中で独り、ポツンと立つハチ
βの時はアルテアの地に降り立つ時はこのベイタの森から始まっていたのだが、他のβテスター達がβの時にファステリアス王国まで到達したお陰で、製品版から始める場合はファステリアス王国からスタートする事になったのだが……それは製品版からスタートした人であってβテスターのハチが初めてアルテアの地に降り立った場合。このベイタの森からスタートする事になったのだ
「とりあえず歩いて見よう!でもその前に……」
周りを見ると木の枝が落ちていたのでそれを拾う
『木の枝を入手』
アイテムを入手した事を示す表示が出るのだが……これいちいち表示されるのはちょっと邪魔だなぁ……
「ステータス、設定」
様々な設定があるのでとりあえず自分好みに設定を済ませておこう。冒険に出る前にこういうのはやっておくべきだろう
「プライバシー設定……とりあえず最大にしておくか。困ったら解除すれば良いし、んで感覚設定……これも最大で良いか。警告は出てるけど何と言うか体に微妙な違和感を感じるし……おぉ!感覚がはっきりした!これで良いや」
プライバシー設定は主に名前の非表示や顔が見えにくくなったり、声が加工されて元の声が分からなくなったりと元の人物が特定出来ないレベルの保護がされる。但し、他のプレイヤーに対しての迷惑行為等を行ったことが無い善良プレイヤーに限るという但し書きがあるが……
感覚設定は通常50%で止められているのだが、100%にするのは超が付くドMか狂人とβテスター内で判断されていた。だが、そんな事を知らないハチは躊躇無く100%にした
「後は適当に……よし!出来た」
設定を済ませ、手にした木の棒を地面に立てた
「よーし、どこに向かうか運試しー」
手を垂直に上げて木の棒が自然に倒れた方向に向かうという道に迷った時にやって余計に迷う奴を行う
「おぉ、どう見ても森の奥地行きだなぁ……よーし、行ってみよう!」
何処に向かうかも決めていないので木の棒で決めたんだ。森の奥だからやっぱやめようとかは考えていない
周りを見ながら歩いて行く。中々リラックス出来る森だ
「というかリアリティ本当に凄いなぁ。森の匂いまで感じるよ」
感覚100%の効果なのかそれともアルターがそもそも匂いまで分かるゲームなのかハチには分からないけど現実とほとんど変わらない事に驚きながら森を進んでいく
すると歩いていく先に動く物を目で捕らえた
「あれは……うさぎ?」
兎……なんだろうけど頭に角が生えている。でも中々可愛い
「おいでー」
ゆっくりと近寄って兎を近くで見ようとする。どうせなら抱っこでもしてみたい
「ギュッ!」
僕の姿を確認した兎は身構えてその角を使って急に突進を仕掛けてきた!
「えっ!?」
ただその突進はとても遅く見えた。兎のスピードが遅い訳では無い。だがこの感覚には覚えがある……これは車がぶつかってきた来た時と同じだ……
これだけゆっくりであれば避けるのも容易い……体の動きもゆっくりになってるけど動きを考える時間があればなんとかなる
正面から突進して心臓に頭の角を突き刺そうとしてくる兎に対し、左足を少し引き半身になる事で目の前を通過……する所を両手でガシッと捕獲する
「ギギュ!?」
突進する所を捕獲され、驚きを隠せない様子の兎。毛並は中々良いな?モフモフしてる
「落ち着け落ち着け、暴れるなって」
「ギュ!ギュッギュ!」
「痛て、痛てて……」
腕の中で暴れるので少々ダメージを受ける。仕方が無いので兎は手放す事にする
「ギューギュッ!」
もう一度兎が突進を仕掛けてくる。するとまた世界が遅くなる
突進を仕掛けてきた兎に対してしゃがみ込み、無防備に晒された胴体にアッパーを叩きこむ
「ギュイー!」
アッパーを喰らった事で兎が吹っ飛ぶ。一撃では倒せないか……STR少ないしなぁ
「じゃあもう一回だ!」
兎の攻撃は直線的で対処はしやすい。+僕自身の体に何かあったのか、攻撃的な行動でこっちに迫ってくる兎はスローモーションで動きを捉える事が出来るので首に手刀を落としたり、木に角が刺さった兎に膝蹴りを喰らわせると動かなくなった。討伐成功、かな?
「えーっと、ナイフは刺せば良いんだっけ……おぉ、こうなるのか」
『兎の毛皮、兎の肉が手に入りました』
兎にナイフを軽く刺すとポリゴンと化し、兎の素材が手に入った。これは便利だ
『スキル 【格闘術】を入手』
「おっ?」
1回戦闘をやっただけなのにどうやらスキルを入手出来たみたいだ。戦い方が良かったのかな?
「初スキルゲット!どんな効果かな?」
早速確認する
『【格闘術】 パッシブスキル 武器を持たない攻撃に対してダメージボーナスを得る』
「情報それだけなんだ……」
どのくらい上がるとか数値とか書いてなかった
「というか補助術士って魔法は最初使えないんだ……」
まさかの術士と言っておきながら最初に覚えるのは格闘術という劇的なスタートを切ったハチだった